墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201429024A
報告書区分
総括
研究課題名
墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浦川 道太郎(公益社団法人全日本墓園協会 調査・研究・事業部 )
研究分担者(所属機関)
  • 奥村 龍一(東京都健康安全研究センター 広域監視部)
  • 小松 初男(虎の門法律事務所 弁護士)
  • 柴田 總三郎(公益財団法人東京都公園協会 公園事業部 )
  • 渡邊 裕一(大阪市 環境局事業部)
  • 横田 睦(公益社団法人全日本墓園協会 調査・研究・事業部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「墓地、埋葬等に関する法律」施行後65年が経過し、社会環境の変化のなか、墓地埋葬行政をめぐる各地方公共団体が直面する課題と対応策について検討する必要性が出てきた。
本研究では、平成25年時の特別研究「地方公共団体の墓地の許可条例の整理(許可条件の整理と類型化)」の成果に基づき、各地方自治体の行政施策を分析し、下記3点を軸に、環境変化及び地域の実情に応じた各地方公共団体の墓地埋葬行政の運用に資するために、各地方公共団体が直面する課題と対応策の整理・分析を行う。
1.民営墓地の許可に高い制約を求める行政施策の実施:墓地需要数を満足させ得るだけの公営墓地の供給しているのか。
2.公営墓地の管理・運用を行う行政施策の課題:現存の公営墓地の管理・運用に際し、具体的にどの様な条件を設けているのか。
3.公営墓地と民営墓地の役割分担の必要性に関して、地方自治体の基準、考え方の違いを明らかにし、どの様な条件下において、新たな方策(無縁改葬等の再整備、合葬墓、樹木葬等・その他)の採用が可能となるのか。
研究方法
1.地方公共団体を対象としたアンケート調査と情報収集を行い、整理・分析を行う。
・墓地埋葬行政における課題と対応に関する情報収集
・各地方公共団体における許可条例と供給されている公営墓地の調査
2.アンケート結果をふまえ、参考となる対応事例を有する地方公共団体の担当者に対し、地方公共団体に対するヒアリング調査(制度的な対応の内容、これらの検討の経過、調整や住民等への説明の過程、課題や苦慮した点および課題克服のためのポイント、他行政との関係、対応後の反応等)の実施。
結果と考察
1.墓地埋葬行政における課題と対応に関する情報収集として、全国47都道府県別に「今後、必要とされる墳墓等施設に関する値」の将来推計を行った。本報告書では、既往の算定方法のなかから、数多くの報告書等で用いられ、一定の検証・評価がなされている2つの方法を用いた。
 人口減少が顕著な道府県における状況では、死亡者が発生しても、火葬、納骨を行う同居人が存在していない状態が既に顕在化している。現在、人口が集中している都府県においても、20年後の将来、2050年には同様の状況に至ると想定されることが明らかとなった。
2.各地方公共団体の許可条例と供給されている公営墓地の実態を明らかにするために、公営墓地の現状とその使用規則(使用条例)についての調査を行った。特に公営墓地においては、昭和23年以降からこれまで、「墓地経営一管理の指針等について」(平成12年12月6日生衛発第1764号)(以下「指針等」と略)をはじめとする、厚生労働省(旧「厚生省」時を含む)の方針「墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則」が貰かれてきた。しかし、調査によって、3分の一近くの「市」では公営墓地が整備されていないことが明らかとなった。昨年度の研究においても、公営と民営(墓地)との役割分担の必要性を指摘したが、その課題の重要性がさらに確認された。
3.公営墓地において定められている使用規則(使用条例)は、[指針等]で示されている「墓地使用権型標準契約約款」と必ずしも整合性が認められなかった。碓かに公営墓地における使用権の発生は契約に拠るものではないが、その経営一管理の実態は民営墓地と大きく変わるものではない。よって、個々の地域における墓地ニーズをふまえながら、今後も人口減少状態が続くことを考慮し、常に見直すべき課題(例:管理料を一括して徴収することの妥当性・合理性について、など)に取り組むべきである。
4.地方公共団体でのヒアリングの結果、次のことが導かれた。
・個人幕や共同墓地については、一貫して抑制的な対応が墓地行政の施策とされてきた(「個人墓地の疑義について」(昭和27年10月25日衛発第1025号等に拠る)。
・都市部以外の地方での公営墓地の経営・管理において、並行して考慮されるべきなのは、宗教法人や公益法人による民営墓地ではなく、むしろ個人墓や集落・共同墓地としての民営墓地である。
 よって、公営墓地の経営・管理においては、個人墓や集落・共同墓地の存在を前提とした合理的な行政施策の確立が求められる。
結論
墓地埋葬等をめぐる状況は地域によって異なるとはいえ、少なからぬ地方公共団体において、公営墓地の整備が行われていない実情が明らかとなった。墓地設置に対する周辺地域の住民の意識を考慮すると、個人墓や集落・共同墓地の存在を前提とした合理的な行政施策の確立が求められる。
以上をふまえ、地域の墓地ニーズを把握した上で、既存のコミュニテイを基盤とした墓地をいかに行政施策に取り入れるか、今後の対応を考えていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201429024C

収支報告書

文献番号
201429024Z