水道における連続監視の最適化および浄水プロセスでの処理性能評価に関する研究

文献情報

文献番号
201429018A
報告書区分
総括
研究課題名
水道における連続監視の最適化および浄水プロセスでの処理性能評価に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 )
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 大野 浩一(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 水野 忠雄(京都大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全な水道水を供給する観点から、水道システム、特に水道水源での危害を同定し、浄水プロセスで水質変動・異常を検知し、迅速に対応することが重要な課題の一つである。本研究では、水道水源での監視体制の最適化、浄水プロセスでの処理状況の連続監視データを利用し、水質変動・異常への対方法や処理性能の評価手法を構築することを目的としている。
研究方法
全国23水道事業体33浄水場の浄水場別水安全計画を用いて、危害原因事象の発生箇所を水源、浄水プロセス、給配水の3要素に分類し、リスクレベルが高い危害の解析を行った。水質検査計画を収集し、検査状況および検査体制について解析した。淀川流域における水源水質事故情報を整理し、危害発生地点を図示化し、水質汚染事故が発生する潜在的なリスクを評価した。浄水場の過去の自動水質計器のデータを入手し、予備的に相関関係、主成分分析等の解析を行った。イベント検知システムの文献調査を行った。実際にオゾン処理を導入している浄水場の凝集沈殿とオゾン接触槽の間から、試料を採取し、回分式実験を行い、オゾンの分解速度について検討した。水質事故対応に関する指針の項目に関する検討を行った。国内外の水質事故事例を踏まえ、緊急時の広報、クライシスコミュニケーション、初動対応の重要点、住民への周知を目標とした公報のあり方について検討した。
結果と考察
水安全計画を解析した結果、危害関連項目数が多かった危害原因事象は、水源(表流水)では降雨、工場、クリーニング排水、テロ、処理施設からの放流水であった。このうち、降雨において、多く挙げられていた危害関連項目は濁度と耐塩素性病原生物、テロではシアンその他毒性物質であった。浄水プロセス(表流水を原水とした急速ろ過)、給配水での主な危害原因事象は、それぞれ機器異常・故障、および管劣化・腐食、クロスコネクション、清掃不足、テロであった。リスクレベルの大きさが同じ危害原因事象でも、低頻度・高影響の場合と、高頻度・低影響の場合といったように特徴が異なることが明らかとなった。水質管理目標設定項目および要検討項目の検査項目数は、給水人口が多い大規模事業体ほど検査項目数が多い傾向にあり、要検討項目において特にその傾向が強かった。淀川流域における、対象期間中の水源水質事故の原因の約70%が油であった。水源水質事故発生地点を事故の種別ごとに図示化したところ、発生件数の多い地点が明確化され、取水口位置と関連付けることで、連続監視装置の効率的な配備計画を検討することが可能となった。淀川流域で事業所に由来した油以外の水質汚染事故が発生する潜在的なリスクとしては、VOCの流出が推定された。ある浄水場における原水水質および処理水水質の相関行列を見たところ、濁度の変動が急激に起こる場合があることから、1時間毎以上の頻度で計測されたデータを用いることが望ましいと考えられた。イベント検知の解析において、オペレーションや通信異常によるものか、実際の水質異常によるものかを自動的に検知すること、また、予測と実際の間での判断の違い、特にFalse negativeに注意が必要であると考えられた。連続監視による性能評価を行う処理としてオゾン接触槽/反応槽を選定し、予備的検討結果から、これまであまり議論されてこなかった有機物の質変換に関する検討とそれを通じた反応機構の理解がより一層重要であることが示唆された。「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」を参考に、水質事故時の対応について項目立てした場合の例をまとめ、特に、緊急時におけるクライシスコミュニケーションの重要点として10点を整理した。平成26年1月の米国での大規模な水質汚染事故では、保健衛生部局との連携が非常に重要であること、寒冷地では凍結して管路が破損する恐れがあり、システムの水を止められない場合があること、住民への周知など応急対応には他地区からの応援が必要なこと等が示された。
結論
水安全計画を解析し、優先度を高く設定している危害原因事象と危害関連項目を示した。水質検査計画を解析することで水道事業体での水質検査の実態がわかった。事故の発生地点を図示化した結果、連続監視装置の効率的な配備計画を検討することが可能となった。過去の自動水質計器のデータから、連続的な変動解析手法に関する検討や制御用の指標値との比較、多項目の相関関係を評価する必要があると考えられた。イベント検知の現段階の性能は異常の判断を完全に委ねるレベルには到達しておらず、運転管理者の補助的な利用に留まると推察された。連続監視による性能評価を行う処理として、オゾン反応の予備的な評価を行うとともに、流動モデルと反応モデルを組み合わせた数値解析モデルの構築に着手した。摂取制限等をともなう給水継続実施にあたっての留意点について検討した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201429018Z