文献情報
文献番号
201429008A
報告書区分
総括
研究課題名
水道における水質リスク評価および管理に関する総合研究
課題番号
H25-健危-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所寄生動物部)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
- 越後 信哉(京都大学大学院工学研究科)
- 大野 浩一(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)
- 門上 希和夫(北九州市立大学国際環境工学部)
- 川元 達彦(兵庫県立健康生活科学研究所健康科学部)
- 小坂 浩司(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部)
- 鈴木 俊也(東京都健康安全研究センター薬事環境科学部)
- 西村 哲治(帝京平成大学薬学部)
- 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室)
- 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
35,239,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行う.
研究方法
原水や水道水質の状況,浄水技術について調査研究を行うため,研究分担者11名の他に43もの水道事業体や研究機関などから82名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.水質項目は多岐にわたるため,上述の研究目的に沿って5課題群に分けて,研究分科会(微生物分科会,化学物質・農薬分科会,消毒副生成物分科会,リスク評価管理分科会,水質分析分科会)を構成し,全体会議などを通じて相互に連携をとりながら並行的に研究を実施した.
結果と考察
微生物:従属栄養細菌数の飲料水兼用耐震性貯水槽管理への応用例として,塩素が残留しているにもかかわらず滞留によって従属栄養細菌数が増加する事例等を検討した.トウガラシ微斑ウイルスを指標として,国内実浄水場における凝集沈殿・急速ろ過によるウイルス除去率の実態を初めて示した.凝集沈澱室内実験におけるアデノウイルス及びポリオウイルスのPFU法で評価した除去率は0.1~1.4 Log,0.5~2.4 Logであった.クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物の検査法として,低濃度の遺伝子定量を可能とするデジタルPCRを実試料に適用した.クリプトスポリジウム等の流行状況について,感染症発生動向調査の届出を集計した.
化学物質・農薬:農薬の出荷量は過去25年間で減少傾向にあるものの,平成25年度は微増であった.ADIが低い農薬,水に溶解しやすい農薬の割合が増えている傾向がみられた.農薬調査ではテフリルトリオンの検出が顕著であった.都道府県毎の検出のおそれの高い農薬は48~94種であり,対象農薬リスト掲載農薬類全ての農薬を測定する必要性がないことが示された.水源汚染の原因となった化学物質を整理し,浄水処理困難化学物質及びそれに準じて扱う物質として指定される元となった.
消毒副生成物:ジクロロベンゾキノンの浄水処理過程における生成能の挙動を把握した.揮発性含窒素化合物の分析手法を開発し,臭気強度と揮発性窒素との高い相関を見いだした.
リスク評価管理:諸外国の水質事故事例や標準対応方法,WHOガイドラインの調査により,公衆衛生維持及び消火用水確保などの観点から,給水停止措置を行うことは少なく摂取制限や煮沸勧告対応が多いことが示された.摂水量調査の再解析により,水道水質の健康リスク評価に直接利用できる「潜在的な水道水摂取量」を提案した.水質基準項目のうち18項目について亜急性評価値の算出を行った.有機リン系農薬22種について複合暴露評価を行った.
水質分析法:ホルムアルデヒドの新規分析法としてDNPH誘導体化-LC/MS/MSは別表第19の代替法となり得ることが示唆された.水試料中の非イオン界面活性剤の同定手法として質量分析計を用いたフローインジェクション分析法を検討した.ICP-MSによる22金属の多成分一斉分析法を開発した.LC-高分解能MSを用いたターゲットスクリーニング手法を検討し,下水処理場の流入水及び放流水に適用した結果,21種の医薬品と5種の農薬が検出された.
化学物質・農薬:農薬の出荷量は過去25年間で減少傾向にあるものの,平成25年度は微増であった.ADIが低い農薬,水に溶解しやすい農薬の割合が増えている傾向がみられた.農薬調査ではテフリルトリオンの検出が顕著であった.都道府県毎の検出のおそれの高い農薬は48~94種であり,対象農薬リスト掲載農薬類全ての農薬を測定する必要性がないことが示された.水源汚染の原因となった化学物質を整理し,浄水処理困難化学物質及びそれに準じて扱う物質として指定される元となった.
消毒副生成物:ジクロロベンゾキノンの浄水処理過程における生成能の挙動を把握した.揮発性含窒素化合物の分析手法を開発し,臭気強度と揮発性窒素との高い相関を見いだした.
リスク評価管理:諸外国の水質事故事例や標準対応方法,WHOガイドラインの調査により,公衆衛生維持及び消火用水確保などの観点から,給水停止措置を行うことは少なく摂取制限や煮沸勧告対応が多いことが示された.摂水量調査の再解析により,水道水質の健康リスク評価に直接利用できる「潜在的な水道水摂取量」を提案した.水質基準項目のうち18項目について亜急性評価値の算出を行った.有機リン系農薬22種について複合暴露評価を行った.
水質分析法:ホルムアルデヒドの新規分析法としてDNPH誘導体化-LC/MS/MSは別表第19の代替法となり得ることが示唆された.水試料中の非イオン界面活性剤の同定手法として質量分析計を用いたフローインジェクション分析法を検討した.ICP-MSによる22金属の多成分一斉分析法を開発した.LC-高分解能MSを用いたターゲットスクリーニング手法を検討し,下水処理場の流入水及び放流水に適用した結果,21種の医薬品と5種の農薬が検出された.
結論
水道原水の状況,水道水に含まれる物質の検出方法,浄水過程における低減化法,毒性情報,暴露量への寄与など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた。主要な知見は「結果と考察」のとおりである.これらの成果は論文により公表されるとともに厚生労働省令や告示等や水質基準逐次改正検討会資料に資された.
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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