大規模地震に対する地域保健基盤整備実践研究

文献情報

文献番号
201429005A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模地震に対する地域保健基盤整備実践研究
課題番号
H25-健危-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
犬塚 君雄(豊橋市保健所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
政府が想定している東南海・南海地震等の大規模地震に備えるために、発生する被害想定等をふまえ、被災者の規模・設置が想定される避難所数・保健医療ニーズなどを定量的に推定する。更に、被災状況と利用可能な人的・物的地域保健資源の効果的な調整のあり方及びこの機能を担う機構を時間及び地理的側面から検討する。また、事前準備として、自治体間連携・人材育成などにおいて必要な事項を明らかにする。
研究方法
浜松市、高知県、飯田/東三河では各々関連する保健所、県、市、医師会、災害拠点病院等関係者による検討会を行い、各地域で広域合同を含む各種の訓練における検証を行った。被害推定等では、県、市から情報提供を受けた。東日本大震災被災地への保健医療福祉支援実態調査報告書のデータベースの解析、東京都派遣医療救護班等への質問紙調査、都及び都内区市町村の防災計画における受援体制の調査を行った。DMATと保健行政の連携については、情報共有の方法につき連携モデルを作成し、広域医療搬送訓練において検証をおこなった。人材育成に関しては、到達目標を盛り込んだ教育訓練プログラム案を作成し、関係分野の専門家を交えた図上演習を試行的に実施し、プログラム案の妥当性を検証した。災害時の被災市町村の保健活動支援に際し有用な地域診断項目(案)を保健師向け研修等を通じて評価し、活用用途の具体化について検討した。
結果と考察
(1)想定南海トラフ巨大地震を例に、超急性期の医療マネジメントに必要不可欠な建物破壊状況及び人的被害情報を算定する手法を提案することを目的とし、高知地域をモデルとして、小地域単位の重症度別被災者数および医療資源との差を事前に推定することで、地域における準備を具体的かつ効率的に行うための情報を自治体保健医療部門に提供できた。
(2)平常時のデータによる被災後の医療・保健ニーズ推計値についてのポアソン分布を仮定した誤差率の検討等を行った。また、迅速評価に資するため、必要となるサンプル調査数を推定した。
(3)地域や救援分野間の差を減らすため効果的で効率的な支援を目的とした、災害医療コーディネーターと連携できる全国共通の公衆衛生支援システムの構築が急がれる。災害時に必要となる新たな公衆衛生活動調整のための「災害健康危機管理支援チーム(DHEAT:Disaster Health Assistance Team)」の具体的な検討を行った。
(4)地域住民を災害から保護する役割を担う基礎自治体がその機能を失うことは、結果として、支援を必要とする地域に適切な支援が入らず、情報が集中する地域に支援が集中するという支援のミスマッチが生じることになった。このような大規模災害に対応していく上で、災害発生直後より効率的に公衆衛生情報を収集し、集められた情報を的確かつ迅速に評価することにより、適切に人的、物的資源を配分することが、緊急時の公衆衛生対策に求められている。関係者が共通の認識に立った支援ができるようにするためにもそれぞれの役割の明確化と研修の標準化が求められる。
(5)災害急性期におけるDMATと保健行政の連携のあり方に関する研究では、DMATと保健行政の連携のあり方を検討し、災害急性期の病院の被災状況把握において不可欠であると考えられ具体的情報共有方法として、EMIS、衛星電話、リエゾン(連携担当者)の設置が有用と考えられた。
(6)公衆衛生チーム派遣による災害時における公衆衛生機能支援のあり方に関する研究では、医療救護班は急性期・亜急性期を中心に多くの災害時公衆衛生活動に従事しており、専門的総括的に従事する公衆衛生チームへの期待は非常に高かった。急性期からニーズがあることから公衆衛生チームは発災後早期から派遣されることが必要であるとともに、効果的に活動するためには災害医療コーデュネーターや医療救護班等との緊密な連携が不可欠であることが明らかとなった。
結論
従来の支援の仕組みでは南海トラフ巨大地震や首都直下型巨大地震には対応できず、医療の調整を主任務とする都道府県災害医療コーディネーターの整備と並行して公衆衛生支援においても同様な効率的で組織的な仕組みが必要である。
 小地域単位の重症度別被災者数および医療資源との差を事前に推定することで、地域における準備を具体的かつ効率的に行うための情報を自治体保健医療部門に提供できた。また、震災時の資源配分を効率的に行うため、地域内および広域の階層別支援調整の全国で基本を共有出来る仕組みを検討し合同訓練を実施し有用性を確認した。これを担う人材は地域ごとに必要でありその育成は迅速かつ広域に展開する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201429005B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模地震に対する地域保健基盤整備実践研究
課題番号
H25-健危-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
犬塚 君雄(豊橋市保健所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
政府が想定している東南海・南海地震等の大規模地震に備えるために、発生する被害想定等をふまえ、被災者の規模・設置が想定される避難所数・保健医療ニーズなどを定量的に推定する。更に、被災状況と利用可能な人的・物的地域保健資源の効果的な調整のあり方及びこの機能を担う機構を時間及び地理的側面から検討する。また、事前準備として、自治体間連携・人材育成などにおいて必要な事項を明らかにする。
研究方法
浜松市、高知県、飯田/東三河では各々関連する保健所、県、市、医師会、災害拠点病院等関係者による検討会を行い、広域合同訓練における検証を行った。被害推定等では、県、市から情報提供を受けた。平成23年度地域保健総合事業「全国の自治体等による東日本大震災被災地への保健医療福祉支援実態調査報告書」のデータベースの解析、東京都派遣医療救護班及び自治体保健師対象の災害研修受講保健師への質問紙調査、都及び都内区市町村の防災計画における受援体制の調査を行った。
結果と考察
1.被災者数、避難所数、保健医療救護等のニーズと必要支援量等の量的推定 
従来の支援の仕組みでは南海トラフ巨大地震や首都直下型巨大地震には対応できないことから、医療の調整を主任務とする都道府県災害医療コーディネーターの整備と並行して公衆衛生支援においても同様な効率的で組織的な仕組みを考える必要がある。
H25年度は、モデル的地域とした浜松地域において中学校区別に地震による建物被害及び人的被害の負傷程度別推計によって必要医療措置量を推定するとともに、中学校区別の被害と医療資源との比を地図表示した。
H26年度には高知地域をモデル地域として、250mメッシュ、字、建物別に被害推定の精度を高め、地震と津波とが連続して起こった場合の負傷による避難困難を原因とする津波死亡者数、重症度別被害者数や必要医療措置量の推計を行った。

2.保健医療救護等を調整するための情報と入手/共有方策の検討:
H25年度は、被災地で保健師が中心となって把握する情報項目案(地区診断項目)を作成し、H26年度は、自治体保健師に対する研修等を通じて検証した。
またDMATと保健医療行政との連携を検討し災害急性期の病院の被災状況把握において不可欠であると考えられ具体的情報共有方法として、EMIS、衛星電話、リエゾン(連携担当者)の設置が有用と考えられた。各々の情報共有方策の課題や市町村と県の役割や連携を明確にしておく必要性が明らかとなった。

3.保健医療救護等の調整を行うための機構の地域別検討
H25年には、浜松地域では静岡県、浜松市、地元大学等を交えた、小地域別被害推定を提示し地域保健医療ニーズの把握と対応の検討会を開催した。高知県及び相互支援協定を結ぶ2県(山口、島根)で合同訓練について協議を行った。H26年度は、南国市をモデルに最前線の救護活動エリアと活動拠点を設定し、エリア毎の需要を推計し、現存する資源を把握しマップ化した。
愛知県東部の東三河地域と隣接し発災後の被災者受け入れや救護が期待される長野県南部との間で、その調整機構(ICSを活用)を検討し、具体例として透析患者受け入れ可能人数の推定とその条件について明確化した。
 医療救護班は急性期・亜急性期を中心に多くの災害時公衆衛生活動に従事しており、専門的総括的に従事すべき公衆衛生チームへの期待は非常に高かった。
宮城県の公衆衛生マニュアルには詳細な受援体制の記載があり、効果的な公衆衛生機能の支援・受援に不可欠であると考えられる。

4.上記に必要な人材の構成や育成するために必要な事項の検討
 H25年度は被災地での経験の共有を含め福島県で研修会を実施した。
H26年度は危機時体制への移行、人員不足への法的課題を含めた対処方法、地域ニーズの評価手法、災害時の保健医療情報の基盤や防衛省/自衛隊との連携に関して検討し保健医療科学院等における研修に取り入れた。
 多人数への研修の参考とするため米国国立環境保健科学研究所による「災害対応従事者の精神的耐久力研修インストラクターマニュアル」の概要を翻訳した。
結論
従来の支援の仕組みでは南海トラフ巨大地震や首都直下型巨大地震には対応できず、医療の調整を主任務とする都道府県災害医療コーディネーターの整備と並行して公衆衛生支援においても同様な効率的で組織的な仕組みが必要である。
 小地域単位の重症度別被災者数および医療資源との差を事前に推定することで、地域における準備を具体的かつ効率的に行うための情報を自治体保健医療部門に提供できた。また、震災時の資源配分を効率的に行うため、地域内および広域の階層別支援調整の全国で基本を共有出来る仕組みを検討し合同訓練を実施し有用性を確認した。これを担う人材は地域ごとに必要でありその育成は迅速かつ広域に展開する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201429005C

収支報告書

文献番号
201429005Z