文献情報
文献番号
201428025A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞毒性に虚弱である中枢神経系を対象とした、ナノマテリアルが持つ有害作用の評価手法開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-化学-若手-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
入江 智彦(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノマテリアル (フラーレン,酸化チタン等) は一般的に大きさが100 nm未満と定義されている.ナノマテリアルは従来の素材には無い有用機能を持つことから,次世代の新規素材として注目されている.一方,ナノマテリアルが想定外の健康被害を及ぼす事が懸念されており,実際にカーボンナノチューブや酸化チタンが発ガン性や炎症性を持つ可能性が数多く示唆されている.それゆえ,ナノマテリアルの健康への安全性評価は喫緊の課題である.
本研究では,中枢神経系細胞を対象とした評価手法の構築を目指す.今年度は使用する神経細胞のモデルとして汎用されているPC12細胞を用いた.
平成26年度は各種金属ナノマテリアルが示す細胞毒性の培養日数依存性と,金属ナノマテリアルが神経突起進展に対して与える影響を検討した.
本研究では,中枢神経系細胞を対象とした評価手法の構築を目指す.今年度は使用する神経細胞のモデルとして汎用されているPC12細胞を用いた.
平成26年度は各種金属ナノマテリアルが示す細胞毒性の培養日数依存性と,金属ナノマテリアルが神経突起進展に対して与える影響を検討した.
研究方法
用いたナノマテリアル 酸化亜鉛ZnO・酸化チタンTiO2の2種類を用いた.
細胞株及び培養方法 PC12細胞は,国立衛研薬理部で液体窒素中に凍結保存されていたものを培養して用いた.
PC12細胞のマルチウェルへの播種と分化誘導 コラーゲンIでコートされた96-wellプレーに,200 マイクロL培地を分注した時に,PC12細胞が2,500個/wellの密度になるように細胞懸濁液を調製した.なお,この時の培地は低血清培地にNGFを加えた分化用培地を用いた: 1%非働化HS,0.5% 非働化FBS,50 units penicillin, 50 マイクロg/ml streptomycin, を含む培地にNGFが終濃度50 ng/mLになるように添加した.各wellには200 マイクロLの細胞懸濁培地を分注し,細胞を播種した.
分化PC12細胞へのナノマテリアル暴露 96-wellプレートで培養したPC12細胞を1日培養した後にZnOナノ粒子懸濁液とTiO2をそれぞれ別のウェルに添加した.懸濁には,分化誘導時と同じ培地を使用した.ナノ粒子は100 マイクロg/mLが最高濃度となるように,段階希釈して各wellに添加した.希釈には分化用培地を用いた.各物質を添加後,インキュベーター内で培養を継続しながら最長7日間暴露した.
細胞毒性試験 ナノマテリアルを2時間~7日間暴露したPC12細胞プレートを用いて, MTTアッセイを行った.
神経突起進展の測定 培養7日目に細胞を4%PFAで固定し,マウス抗βIIIチューブリン抗体と抗マウス- AlexaFluor 488-conjugated goat anti-guinea-pig IgG antibodyを用いて神経突起を蛍光染色した.自動画像取得・画像解析はCellomics CellInsight用いて行った.
細胞株及び培養方法 PC12細胞は,国立衛研薬理部で液体窒素中に凍結保存されていたものを培養して用いた.
PC12細胞のマルチウェルへの播種と分化誘導 コラーゲンIでコートされた96-wellプレーに,200 マイクロL培地を分注した時に,PC12細胞が2,500個/wellの密度になるように細胞懸濁液を調製した.なお,この時の培地は低血清培地にNGFを加えた分化用培地を用いた: 1%非働化HS,0.5% 非働化FBS,50 units penicillin, 50 マイクロg/ml streptomycin, を含む培地にNGFが終濃度50 ng/mLになるように添加した.各wellには200 マイクロLの細胞懸濁培地を分注し,細胞を播種した.
分化PC12細胞へのナノマテリアル暴露 96-wellプレートで培養したPC12細胞を1日培養した後にZnOナノ粒子懸濁液とTiO2をそれぞれ別のウェルに添加した.懸濁には,分化誘導時と同じ培地を使用した.ナノ粒子は100 マイクロg/mLが最高濃度となるように,段階希釈して各wellに添加した.希釈には分化用培地を用いた.各物質を添加後,インキュベーター内で培養を継続しながら最長7日間暴露した.
細胞毒性試験 ナノマテリアルを2時間~7日間暴露したPC12細胞プレートを用いて, MTTアッセイを行った.
神経突起進展の測定 培養7日目に細胞を4%PFAで固定し,マウス抗βIIIチューブリン抗体と抗マウス- AlexaFluor 488-conjugated goat anti-guinea-pig IgG antibodyを用いて神経突起を蛍光染色した.自動画像取得・画像解析はCellomics CellInsight用いて行った.
結果と考察
結果 TiO2は100 マイクロg/mLの高濃度でも細胞毒性を示さなかったが,1 マイクロg/mL以上の濃度で神経突起伸長を有意に阻害する事が分かった.一方,ZnOは1 マイクロg/mL以上の濃度で経日的に細胞毒性を示し,細胞毒性を示さない0.1 マイクロg/mL以下の濃度でも神経突起伸長を有意に阻害する事が分かった(~10-4 マイクロg/mL).
考察 TiO2は主に化粧品などに用いられているが, TiO2は神経細胞の突起進展に対して高濃度において抑制作用を示す事を見いだした.これは,TiO2が経鼻経路で中枢神経系に到達した場合,神経細胞の成長に影響を与える可能性を示唆している.
ナノ粒子ZnOも工業製品などに幅広く使われているが,ZnOは細胞毒性が生じない低濃度でも,神経細胞の突起進展に対して抑制作用を示す事を見いだした.この事は,ZnOが経鼻経路で中枢神経系に到達した場合,神経細胞の成長に影響を与える可能性を示唆している.今回は株化細胞であるPC12細胞を用いたが,より生体の神経組織に近い細胞種(例:ラット脳由来の初代神経培養細胞等)を用いる事で,より精度の高い実験系になると考えられる.
考察 TiO2は主に化粧品などに用いられているが, TiO2は神経細胞の突起進展に対して高濃度において抑制作用を示す事を見いだした.これは,TiO2が経鼻経路で中枢神経系に到達した場合,神経細胞の成長に影響を与える可能性を示唆している.
ナノ粒子ZnOも工業製品などに幅広く使われているが,ZnOは細胞毒性が生じない低濃度でも,神経細胞の突起進展に対して抑制作用を示す事を見いだした.この事は,ZnOが経鼻経路で中枢神経系に到達した場合,神経細胞の成長に影響を与える可能性を示唆している.今回は株化細胞であるPC12細胞を用いたが,より生体の神経組織に近い細胞種(例:ラット脳由来の初代神経培養細胞等)を用いる事で,より精度の高い実験系になると考えられる.
結論
1) 分化PC12細胞を用いた金属ナノマテリアルの評価系として,MTT法及びLDH法を用いた細胞毒性評価系を確立した.
2) TiO2は100 マイクロg/mLの高濃度でも細胞毒性を示さなかったが,1 マイクロg/mL以上の濃度で神経突起伸長を有意に阻害した.
3) ZnOは1 マイクロg/mL以上の濃度で経日的に細胞毒性を示した.細胞毒性を示さない0.1 マイクロg/mL以下の濃度でも神経突起伸長を有意に阻害した(~10-4 マイクロg/mL).
これらの結果はナノマテリアルの中枢神経系への影響の有無の予測に貢献できる評価手法として活用することが可能だと考えられよう.
2) TiO2は100 マイクロg/mLの高濃度でも細胞毒性を示さなかったが,1 マイクロg/mL以上の濃度で神経突起伸長を有意に阻害した.
3) ZnOは1 マイクロg/mL以上の濃度で経日的に細胞毒性を示した.細胞毒性を示さない0.1 マイクロg/mL以下の濃度でも神経突起伸長を有意に阻害した(~10-4 マイクロg/mL).
これらの結果はナノマテリアルの中枢神経系への影響の有無の予測に貢献できる評価手法として活用することが可能だと考えられよう.
公開日・更新日
公開日
2016-06-02
更新日
-