新規in vivo遺伝毒性試験であるPig-a遺伝子遺伝毒性試験の胎仔を含めた週齢および性差に関する開発研究

文献情報

文献番号
201428024A
報告書区分
総括
研究課題名
新規in vivo遺伝毒性試験であるPig-a遺伝子遺伝毒性試験の胎仔を含めた週齢および性差に関する開発研究
課題番号
H25-化学-若手-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
堀端 克良(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幼児や妊婦(胎児)は、化学物質の遺伝毒性に対して脆弱であると考えられるが、それを定量的かつ簡便に評価する研究手法は未だに確立されていない。本研究課題では、化学物質の子どもおよび胎児への遺伝毒性影響を検出可能な評価手法としてPig-aアッセイを提案し、その有用性を明らかにし、そして幼若動物や胎仔に与える遺伝毒性影響を明らかにすることを研究目的とする。加えて、Pig-aアッセイのOECDガイドライン化に向けた国内外での取り組みに対して、日本国内の研究成果をアピールするため、日本環境変異原学会の分科会である哺乳動物試験研究会(MMS研究会:Mammalian Mutagenicity Study Group)に参画する機関中17機関が参加する共同研究を実施しており、研究代表者は総括世話人の役割を担っている。これらの日本国内の取り組みが評価され、平成26年末に米国をリード国としてOECDに提出されたSPSF (Standard Project Submission Form)に日本の貢献が明記された。それに伴い、上記共同研究を早期に達成する必要が生じたため、ラットを用いたPig-aアッセイによる遺伝毒性評価を併せて実施する。
研究方法
胎児マウス解析の予備的試験として、使用血液量を0.5μLまで抑制した条件でのPig-aアッセイを実施した。また、OECDガイドライン化へ向けた日本からの貢献について、日本国内独自の取り組みとして、ラット全赤血球を標的としたRBC Pig-aアッセイに加えて、幼若赤血球を標的としたPIGRET法を開発し、バリデーション研究を実施し、線形回帰分析により共同研究参加各機関間の相関性を解析した。また、上記の方法を用いてアクリルアミドの遺伝毒性試験を実施した。
結果と考察
胎児マウスから得られる末梢血量はごく微量であるため、本アッセイ系で解析可能な最少末梢血量を予備的試験として解析した結果、0.5µLでも十分解析可能であることが明らかになった。本予備試験の結果から、胎児から得られる微量末梢血でPig-aアッセイが実施可能である予測を立てることができたため、次年度での解析への目処をつけることができた。また、ラットにおいてのバリデーション試験では両アッセイとも、全ての参加機関で強い正の相関が見られた。また、研究代表者が実施したアクリルアミドの遺伝毒性評価結果に関しては、両アッセイとも有意な差は検出されなかった。上記に関連したアクリルアミドの遺伝毒性評価について、RBC Pig-aアッセイおよびPIGRET法では陰性であったが、米国で先行して実施されている別手法のPig-aアッセイの結果と同様の結果であり、RBC Pig-aアッセイおよびPIGRET法における再現性を示すことができたと考えられる。他方、トランスジェニック動物を用いた他のアクリルアミド遺伝毒性報告では陽性を示す場合があることが報告されている。Pig-aアッセイでは原理的に標的臓器が造血系のみであることから、造血系はアクリルアミドの遺伝毒性に関する標的臓器ではないと考えられる。
結論
これまでに得られたマウスを用いた研究成果によって、①遺伝毒性試験方法としてのPig-aアッセイとして見た場合、幼若動物を用いる方が感受性の高い試験を実施できる可能性が高いこと、②化学物質の遺伝毒性影響の視点から見た場合、成熟期よりも幼若期の方がより強い遺伝毒性影響を受ける可能性が高いこと、の2点が明らかになった。これにより、上記①については、Pig-aアッセイを実施する場合には使用動物の開始週齢をそれぞれの試験研究目的に応じて吟味した上で実施すべきであるということを提案するものであり、今後本アッセイを活用していく上で重要な情報となる。また、上記②については、幼若期における化学物質暴露に対する遺伝毒性リスクは成熟期よりも高いことを示唆するものであり、重要なリスク評価情報となる。
 加えて、ラットを用いた日本国内のPig-aアッセイ共同研究の推進により、本アッセイのOECDガイドライン化に向けた日本国内の貢献を強く示すことができる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201428024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,800,000円
(2)補助金確定額
1,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,747,609円
人件費・謝金 0円
旅費 22,580円
その他 29,811円
間接経費 0円
合計 1,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
-