毒性評価を目的としたナノマテリアル分類システムの構築

文献情報

文献番号
201428023A
報告書区分
総括
研究課題名
毒性評価を目的としたナノマテリアル分類システムの構築
課題番号
H24-化学-若手-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 直也(昭和薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノテクノロジーの有用性は周知の事実であるが、有用な物質特性が発揮できる半面、その高い活性による生体への影響が懸念されている。事実、生体への影響に関する研究により、一部のナノマテリアルは実験動物への経肺適用による毒性が報告されている。ナノマテリアルの健康影響に関して実験動物を用いる評価法は必須であると考えられるが、その煩雑性からスクリーニング的に検討することは難しく、前段階として、ナノマテリアルの安全性を簡便な手法により分類するシステムの構築が必要である。そこで、本研究ではナノマテリアルの物質特性から中・長期的な生体影響を予測可能な、安全性評価分類システムの確立を目的とする。
研究方法
これまでに、ナノマテリアルは水溶液中での強固な凝集を起こすことが知られており、ナノ粒子に特化した評価が非常に困難であることから、医薬品添加物として使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いたナノ分散系を確立した。本ナノ分散系を用いて、生体障害性および培養細胞を用いた毒性等が報告されている70nmのナノシリカを用いて、培養細胞における中・長期毒性評価モデルを用いてナノ分散系の有用性を評価したところ、ナノ粒子による細胞増殖抑制が観察された。そこで、本年度においては、ナノ粒子による細胞増殖抑制のメカニズムおよび生体分子との相互作用について検討をおこない、安全性評価の指標確立にむけ検討をおこなった。
結果と考察
本年度においては、ナノシリカと培養細胞を用いて構築した中・長期的な細胞増殖抑制評価系において観察されたナノシリカ粒子による細胞増殖性の抑制メカニズムについて検討を行った。その結果、ナノシリカ粒子による細胞増殖抑制効果は、細胞周期の停滞により引き起こされることが明らかとなった。また、その細胞周期はG2期への停滞であり、細胞分裂期であるM期への移行をシリカ粒子が阻害している可能性が示された。一方、細胞周期の停滞が分子特異的なメカニズムによる現象であるかの検討を行ったところHSPファミリーとの相互作用が明らかとなり、その結合は非特異的なナノシリカ粒子表面に吸着したタンパク質を介したものであることが示唆された。
ナノマテリアルはその表面積の大きさから非特異的なタンパク質吸着や核酸等の吸着も報告されている。本検討結果からも、ナノサイズにすることで、吸着タンパク質を介したHSPタンパク質との結合量が大きくなっており、この相互作用がナノマテリアルの分布等に影響していることが考えられる。HSPタンパク質は細胞が各種ストレスを受けることにより細胞核への移行が報告されており、ナノシリカが細胞核周辺に分布することが報告されていることから、核への分布にHSPが影響している可能性がある。一方、ナノシリカ粒子が細胞周期に影響することからも、細胞核への分布による影響であることが推察される。
結論
本年度においては、中・長期的な毒性評価系におけるナノシリカのメカニズム解明および相互作用因子の同定をおこなった。化学物質の生体毒性を予測するためには、その生体分子への相互作用を明らかとし、個体における毒性の予測を立てることが必要となる。このことからも、ナノマテリアルの障害性を正確に予測するためにメカニズムの一端を解明した意義は大きく、今後の検討に重要な成果を達成することができたと考えられる。これら結果はナノマテリアルの毒性予測に貢献できる成果と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-07-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201428023B
報告書区分
総合
研究課題名
毒性評価を目的としたナノマテリアル分類システムの構築
課題番号
H24-化学-若手-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 直也(昭和薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノテクノロジーの有用性は周知の事実であるが、有用な物質特性が発揮できる半面、その高い活性による生体への影響が懸念されている。事実、生体への影響に関する研究により、一部のナノマテリアルは実験動物への経肺適用による毒性が報告されている。ナノマテリアルの健康影響に関して実験動物を用いる評価法は必須であると考えられるが、その煩雑性からスクリーニング的に検討することは難しく、前段階として、ナノマテリアルの安全性を簡便な手法により分類するシステムの構築が必要である。そこで、本研究ではナノマテリアルの物質特性から中・長期的な生体影響を予測可能な、安全性評価分類システムの確立を目的とする。本分類システムは、これまでに毒性の有無に関して報告のあるナノマテリアルを様々な指標について評価し、それぞれの評価別に分類することで、生体適用に際しての安全性と懸念事項の概要についてナノマテリアルの物質特性より把握が可能とする分類システムであり、安全なナノマテリアルの利用促進と安全性に疑いのあるナノマテリアルの使用抑制を同時に示すことが可能となる。今後増加の一途をたどるナノマテリアルのヒト健康影響を評価し、利用者の安全を確保するためには必須の安全性分類システムになると考えられ、新たなナノマテリアル安全性評価手法の開発とその発展に貢献できると考えている。
研究方法
本研究事業では、ナノマテリアルの簡便なin vitro評価系の構築およびナノスケールに特化した生体毒性を評価可能な評価方法の確立をおこない、さらに中・長期的なナノマテリアルの影響についてメカニズムを明らかとすることを目的とした。
水溶液中での強固な凝集を起こすことが知られているナノマテリアルに分散剤を用いたナノ分散系を確立した。本ナノ分散系を用い、培養細胞における急性期または中・長期毒性評価モデルを構築した。また、本評価モデルを用いて検討を行ったところ、ナノスケールに特異的な細胞増殖抑制が存在することが明らかとなった。さらに、分子特異的なメカニズムの解析を行ったところ、ナノマテリアルが細胞核周辺に分布すること、また細胞増殖抑制は細胞周期の進展を阻害していること、さらに細胞内ストレス応答分子であるヒートショックプロテインとの相互作用が示唆さることを見出した。
結果と考察
本研究事業においては、ナノマテリアルの慢性毒性を予測可能な評価系の構築と、その解析結果からマテリアルの物性より安全性を予測するシステムの構築が最終目標であった。しかしながら、簡便なin vitro評価系の構築およびその妥当性の評価に多くの時間が費やされ、最終的なシステムの構築まで到達することができなかった。しかしながら、簡便な培養細胞を用いた中・長期的な細胞毒性評価系において観察されたナノシリカ粒子による細胞増殖抑制機構の解明、およびその抑制メカニズムについて一端を解明できたことは今後の評価系の妥当性検証に有用な成果であると考えられる。さらに、水溶液中でのナノスケールに特化した評価が可能なHSを用いた分散系の構築は、今後広くナノマテリアル研究に貢献可能な成果であると考えられ、有益な成果であると考えられる。これら成果を組み合わせた研究において、新たな知見も得られたことから、ナノマテリアルの安全性評価研究に利用可能と考えられる。
一方、疎水性の表面特性を保持していると考えられるナノマテリアル表面に、非特異的なタンパク吸着が起こり、さらに吸着したタンパク質と相互作用するHSPタンパク質の存在を明らかとしたことから、ナノマテリアルと直接的な相互作用をするだけでなく、間接的な相互作用による細胞内分布の可能性を見出したことも新たな知見として有益な成果であると考えられる。最終目標となるナノマテリアルの物性から生体分子への相互作用を推察し、個体における毒性の予測をするためのメカニズムの一端を解明した意義は大きく、今後の検討に重要な成果を達成することができたと考えられる。
結論
本研究事業では、水溶液中での強固な凝集を起こすことが知られているナノマテリアルにHSを用いたナノ分散系を確立し、培養細胞における中・長期毒性評価モデルを構築することができた。また、本評価モデルを用いて、ナノスケールに特異的な細胞増殖抑制機構を明らかとし、分子特異的なメカニズムが存在することを見出した。これら評価系の構築と、細胞増殖抑制機構能解明は、慢性的なナノマテリアルの安全性評価系の構築に貢献できる成果であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-07-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201428023C

収支報告書

文献番号
201428023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
3,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,895,500円
人件費・謝金 0円
旅費 28,500円
その他 0円
間接経費 876,000円
合計 3,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-