抗原性物質への免疫応答に対するナノマテリアル経皮曝露の影響に関する評価手法の開発研究

文献情報

文献番号
201428014A
報告書区分
総括
研究課題名
抗原性物質への免疫応答に対するナノマテリアル経皮曝露の影響に関する評価手法の開発研究
課題番号
H26-化学-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
10,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年幅広く利用されているナノマテリアルについては物理化学的特性による健康影響の可能性が指摘されている。OECDでは、わが国も参加して、フラーレン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化亜鉛等、13品目の安全性評価が重点的に進められている。酸化チタンや酸化亜鉛は多くの日焼け止め製品に配合されており、ヒト皮膚と接触する頻度が非常に高い。一方で、最近、加水分解コムギタンパク質を含有する洗顔石鹸の事例のように、タンパク質が皮膚を透過して取り込まれ抗原となる経皮感作経路がアレルギー発症の重要な要因として注目されている。しかし、酸化チタン等のナノマテリアルがタンパク質経皮感作に及ぼす影響については未だ検討されていない。本研究班では、酸化チタン、酸化亜鉛等のナノマテリアルが抗原タンパク質の経皮感作に及ぼす影響に関する[1] in vivo評価系及び[2] in vitro評価系、及び、[3] ナノマテリアルのアジュバント活性に関する貪食細胞を用いたin vitro評価系を開発し検討することを目的とする。
研究方法
酸化チタンナノマテリアルとしては、粒子径35 nm、15 nm、6 nmの3種を用いた。[1]に関しては、モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を用い、まず抗原のマウス腹腔内投与による感作に対する影響、続いて、抗原の経皮感作に関するマウスを用いたin vivo評価系の構築と酸化チタンの影響について検討した。[2]に関しては、ヒト単球系細胞株を抗原提示細胞様に分化させ、OVAの添加による細胞活性化マーカーの発現量変動を指標とする評価系を構築して、抗原提示に対する酸化チタンの影響について解析した。[3]に関しては、抗原免疫時のアジュバント作用において決定的な役割を果たす、サイトカインIL-1β産生を誘導するNLRP3インフラマソームの活性化を指標とする評価系を構築し、検討を行った。
結果と考察
[I] 抗原の腹腔内投与による感作実験系では、用いた3種の酸化チタンとも、陽性対照アジュバントであるAlumと同様に、OVAによる感作を増強する(アジュバント作用を有する)ことが示された。また、OVAをマウス皮膚に繰り返し貼付することにより経皮感作が成立するモデル実験系を構築し、酸化チタンの共存により経皮感作による抗原特異的抗体産生が増強されることが示された。[II] 単球系細胞株を用いて、OVAに対する抗原提示細胞としての応答を、細胞表面の活性化マーカー(HLA-DR、及びCD86)発現量を指標として評価する系を構築した。細胞にOVAを添加する際の酸化チタン共存の影響を解析した結果、酸化チタンが濃度依存的に抗原提示細胞の活性化を減弱させる傾向が認められた。[III] アジュバント活性のin vitro 評価手法として、マクロファージ系培養細胞を用いたNLRP3インフラマソーム活性化のアッセイ系を確立した。この系を用いて酸化チタンについて検討したところ、濃度依存的にアジュバント活性を示すことが明らかとなった。また、粒子径が小さい場合は、酸化チタン粒子の貪食に依存しない、直接の細胞活性化が起きることが示唆された。今後、用量依存性やナノマテリアルの種類による違い等の詳細について検討を進めるとともに、3種の評価手法の結果を統合し、抗原性物質への免疫応答に対するナノマテリアル経皮曝露の影響に関して総合的な理解につなげるべく解析を進める。
結論
酸化チタンナノマテリアルが抗原タンパク質の経皮感作に及ぼす影響に関する[1] in vivo評価系及び[2] in vitro評価系、及び、[3] ナノマテリアルのアジュバント活性に関する貪食細胞を用いたin vitro評価系の開発・検討を行った。[1]に関しては、酸化チタンが、Alumと同様にOVAによる腹腔内感作を増強する(アジュバント作用を有する)こと、及び、OVAの経皮感作を増強することが示された。[2]に関しては、単球系培養細胞を抗原提示細胞様に分化させ、OVA添加による細胞活性化を評価する系を構築し、酸化チタンの影響について解析した結果、酸化チタンが濃度依存的に抗原提示細胞の活性化を減弱させる傾向を認めた。[3]に関しては、アジュバント活性のin vitro 評価手法として、マクロファージ系培養細胞を用いたNLRP3インフラマソーム活性化のアッセイ系を確立し、酸化チタン粒子が濃度依存的なアジュバント活性を有することを明らかにした。また粒子径が小さい場合は貪食によらない直接の細胞活性化が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201428014Z