多色発光細胞を用いたhigh-throughput免疫毒性評価試験法の開発

文献情報

文献番号
201428001A
報告書区分
総括
研究課題名
多色発光細胞を用いたhigh-throughput免疫毒性評価試験法の開発
課題番号
H24-化学-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
相場 節也(国立大学法人東北大学 大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近江谷 克裕( (独)産業技術総合研究所(バイオメディカル研究部門)・生化学,光生物学(同研究室))
  • 山影 康次(食品薬品安全センター・秦野研究所・代替法試験部、細胞遺伝学、動物実験代替法 (同研究室)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・薬理部 新規試験法評価室、毒性学、動物実験代替法,(同研究室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は平成18-22年NEDOプロジェクトにおいて,Jurkat細胞におけるINF-γ,IL-2, G3PDHプロモーター活性,THP-1細胞におけるIL-8,IL-1β, G3PDHプロモーター活性をhigh throughputに評価できる多色発光細胞を樹立し,化学物質の免疫毒性評価システム(Multi-ImmunoTox assay; MITA)を構築した(特願2010-151362; PCT/JP2011/65090).そこで本研究課題においては,MITAの化学物質免疫毒性評価における予測性,適用範囲,有用性などを明らかにすることを目的とした.
研究方法
1. MITAによる46種類の化学物質免疫毒性評価 と一般化学物質評価プロトコールの作成.
2. 施設内,施設間再現性の検討
WagnerらがFluorescent Cell Chip assay (FCC)において検討した46種類の化学物質 (Wagner W et al. Toxicol Lett, 2006)のうち,平成26年度には,被検物質を10種類をに増やし,ブラインド条件で東北大,産総研,食薬センター3施設で施設間ならびに施設内再現性の検討を行い,プロトコールの更なる改善をはかる.
3. 評価細胞の改良
MITAから常に一定の評価結果が得られるように,発光細胞の管理維持,改良を行う.
4. 測定機器の改良
測定に用いるルミノメーターの機種による測定結果の変動補正を行うための多色発光標準プレートを用いた装置の校正法を確立する.
5. 免疫毒性評価における国際動向調査 (小島)
REACH規制などに関連して,国際的にどのような免疫毒性評価が望まれているのか,また,MITAを国際的評価法とするためにはどのような検討が必要かの情報収集を行う.特に2014年度は,免疫毒性作用機序の文献的考察を加え,本研究の位置づけを明確にする.
結果と考察
平成25年度に引き続き26年度もWagnerら(Wagner et al., 2006)がFluorescen Cell Chip assay(FCCA)に関する論文中で検討した46化学物質に関してMITAによる評価をおこないMITAのdata setを作成した.その結果,鉛,活性酸素による免疫抑制作用,水銀,リチウムによる免疫増強作用,ニッケル,コバルトによるT細胞サイトカイン産生抑制作用などがMITAにより評価できることを明らかにした.MITA,FCCAともにDex,CyA,Tac,Dapsone,鉛の免疫抑制作用と水銀による免疫増強作用(IFN-γ転写活性増強)を適確に評価できた.一方,ニッケル,コバルトなど2価イオンによるCa2+ release-activated Ca2+ (CRAC) channelを介するT細胞機能抑制作用は,MITAにより検出できたのに対し,FCCAでは検出できなかった.また今年度の研究では、研究期間中に明らかになったIL-1βレポーター細胞THP-G1bの脆弱性を克服する目的で、あらたにTGCHAC-A4細胞を樹立した。この細胞は、人工染色体上にIL-1βレポーター遺伝子が搭載されている世界で初めてのレポーター細胞である。樹立後、SLR-LAの陰性化などの問題を克服し、またTHP-G1bとの同等性比較試験なども行い、今後THP-G1b細胞に代わるMITAのあらたなIL-1βレポーター細胞とし使用していく予定である。東北大皮膚科および本研究に参加している産業総合研究所,食品薬品安全センター秦野研究所の3施設で10種類の化学物質について施設間再現性試験を施行した.#2H4細胞に関しては85%,THP-G1b細胞とTHP-G8細胞に関してはそれぞれ70%,50%の一致率を認めた.
結論
 免疫系に対する化学物質の影響を簡便かつ短時間に評価可能なルシフェラーゼレポーターアッセイ系を確立した(Multi-Immuno Tox Assay ; MITA)。本研究により、この評価系を用いることで、T細胞におけるIL-2とIFN-γ、マクロファージ/樹状細胞におけるIL-1βとIL-8の転写に至るシグナル伝達経路への化学物質の影響を多面的に評価することができることが明らかとなった。あらたに世界に先駆けて、人工染色体を用いたIL-1βレポーター細胞を樹立し、MITA構成細胞の長期安定性を確保した。施設間再現性も検討し、IL-2とIFN-γレポーター細胞に関しては既に良好な結果が得られている。以上の研究より、MITAが化学物質の免疫毒性を自然免疫と獲得免疫の両面から評価できる新しいhigh-throughput手法となりうることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201428001B
報告書区分
総合
研究課題名
多色発光細胞を用いたhigh-throughput免疫毒性評価試験法の開発
課題番号
H24-化学-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
相場 節也(国立大学法人東北大学 大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近江谷 克裕((独)産業技術総合研究所(バイオメディカル研究部門)・生化学,光生物学(同研究室))
  • 山影 康次(食品薬品安全センター・秦野研究所・代替法試験部、細胞遺伝学、動物実験代替法 (同研究室)
  • 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・薬理部 新規試験法評価室、毒性学、動物実験代替法,(同研究室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は,3色発光細胞技術を応用し,Jurkat細胞におけるINF-γ,IL-2,G3PDHプロモーター活性,THP-1細胞におけるIL-8,IL-1β,G3PDHプロモーター活性をhigh throughputに評価できる長期細胞株を樹立し,それらを用いた化学物質の免疫毒性評価システム(Multi-ImmunoTox assay;MITA)を構築した。そこで本研究においては、MITAによる化学物質免疫毒性評価のためのプロトコールを確立し、それを用いて環境汚染物質、食物添加物、薬剤などの化学物質による免疫毒性が適確に評価できるかを検証する。
研究方法
1. MITAを用いてdexamethasone (Dex), cyclosporine A (CyA), Tacrolimus (Tac)がphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) と ionomyin (Io)の混合物(PMA/Io)に刺激された#2H4細胞、またはlipopolysaccharide (LPS)に刺激されたTHP-G1β細胞、THP-G8細胞のルシフェラーゼ活性に与える影響を調べ、これら薬剤の既知の免疫薬理作用と比較する。
2. 3種の免疫毒性評価細胞のルシフェラーゼ活性と、Jurkat細胞、THP-1細胞、ヒト全血細胞におけるmRNAの発現との相関を検討する。
3. MITAのプロトコールの確立とMITAの適用限界を決定する。
4. 免疫薬理作用の明らかな薬剤17種をMITAにより評価することにより、MITAのプロトコールの確立、MITAで評価可能な免疫薬理作用を明らかにする。
5. Wagnerら(Wagner et al., 2006)が用いた46化学物質に関してMITAによる評価をおこないMITAのdata setを作成する。
6. MITAとFluorescen Cell Chip assay (FCCA)により同一化合物を評価することにより、両者の相違を明らかにする。
7. 本研究に参加していの3施設で10種類の化学物質について施設間再現性試験を施行する。
8. MITAを感作性評価に対応できるように改良する。
9. 人工染色体を用いた新規IL-1βレポーター細胞を樹立する。
結果と考察
1. レポーター細胞株#2H4、THP-G1b、THP-G8は、それぞれPMO/Io、LPS刺激によりSLG-LA, SLO-LAを増強した。
2. レポーター活性に対する3種の免疫抑制剤、Dex, CyA, Tacの効果はJurkat細胞、THP-1細胞およびヒトwhole bloodのmRNA発現に対する効果と相関した。
3. 免疫薬理作用の明らかな薬剤17種類をMITAにて評価し、あわせてMITAのプロトコールを作成した。
4. MITAにより、直接サイトカイン発現を抑制する薬剤はは適切に評価できるが、免疫担当細胞の代謝、細胞増殖に作用し二次的にサイトカイン発現を抑制する薬剤の作用は評価できないことが明らかにした。
5. 46化学物質をMITAを用いて評価することにより、MITAが鉛、活性酸素による免疫抑制作用、水銀、リチウムによる免疫増強作用、ニッケル、コバルトによるT細胞サイトカイン産生抑制作用などを評価できることを明らかにした。
6. 本研究に参加している3施設で14種類の化学物質について施設間比較試験を施行した。14種類の化学物質に関して全体として80%の一致率が得られた。
7. 以上の研究から、MITAは自然免疫と獲得免疫の両方に対する免疫毒性を評価できることが明らかになったが、感作性物質の評価には不適切であることも明らかになった。そこで未知の化学物質評価においては、MITAとIL-8 Luc assayを併用する。
8. 人工染色体技術(Hoshiya et al., 2009) }を応用して、新たにIL-1βレポーター細胞を樹立した。
結論
本研究により、MITAを用いることで、T細胞におけるIL-2とIFN-γ、マクロファージ/樹状細胞におけるIL-1βとIL-8の転写に至るシグナル伝達経路への化学物質の影響を多面的に評価することができることが明らかとなった。あらたに世界に先駆けて、人工染色体を用いたIL-1βレポーター細胞を樹立し、MITA構成細胞の長期安定性を確保した。施設間再現性も検討し、IL-2とIFN-γレポーター細胞に関しては既に良好な結果が得られている。以上の研究より、MITAが化学物質の免疫毒性を自然免疫と獲得免疫の両面から評価できる新しいhigh-throughput手法となりうることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201428001C

収支報告書

文献番号
201428001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,300,000円
(2)補助金確定額
18,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,717,332円
人件費・謝金 2,723,169円
旅費 930,238円
その他 1,706,261円
間接経費 4,223,000円
合計 18,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-07-01
更新日
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