簡便に調製可能な分子標的気泡を用いた超音波分子イメージングの開発-臨床用超音波造影剤の適応拡大の可能性の検討

文献情報

文献番号
201427052A
報告書区分
総括
研究課題名
簡便に調製可能な分子標的気泡を用いた超音波分子イメージングの開発-臨床用超音波造影剤の適応拡大の可能性の検討
課題番号
H25-医薬-若手-023
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大谷 健太郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造影超音波法は、微小気泡を造影剤として用いる非侵襲的かつベッドサイドで施行可能な造影検査法である。近年、抗体やペプチド、タンパクにより修飾した微小気泡を用い、生体内の炎症部位や動脈硬化巣等に気泡を集積させ(分子標的気泡)、それを画像化することで造影超音波法を用いた分子イメージングの開発を目指す試みがなされている。我々はこれまでに、本邦で臨床使用可能な超音波造影剤Sonazoidを基盤とした分子標的気泡の作製の可能性について検討しており、先般、Sonazoidと生体内タンパクMFG-E8(Lactadherin)の複合体が、新生血管や新鮮血栓に対する分子標的気泡になり得ることを見出した。本研究の目的は、担癌モデルマウスを用い、Sonazoid-Lactadherin複合体の新生血管に対する分子標的気泡としての実現可能性について検討することである。併せて、Sonazoid-Lactadherin複合体作製法の簡素化へ向けた、in vitro実験による検討も行う。
研究方法
新生血管(腫瘍血管)に対する分子標的性の検討
 4週齢の雌性ヌードマウスの右腹部皮下に、ヒト卵巣線種細胞(SK-OV-3)を5.0×106個移植し、移植7日目(Day7)に造影超音波法にて評価を行った。頸静脈に留置したカテーテルよりSonazoid (1.2×106 bubbles)およびSonazoid-Lactadherin複合体を投与し、投与10分後に超音波装置Aplio(東芝)の1202Sプローブを用いて撮像を行った。音圧はMechanical index 0.4 (AP 9%)とし、視野深度は1cm、焦点位置は腫瘍組織よりも深部とした。Sonazoid-Lactadherin複合体は、既報の方法と同様に、Sonazoid (1.2×108 bubbles, 100μL)とLactadherin 5μg (100μL)を室温で15分反応させて作製した。その後、蒸留水を用いての洗浄と遠心分離操作によって未反応のLactadherinを除去した。
簡便な分子標的気泡作製法の実現に向けたLactadherin定量法の確立
通常、分子標的気泡の調製には洗浄と遠心分離の操作が必須である。しかし今後、洗浄・遠心分離操作が不要な、簡便なSonazoid-Lactadherin複合体の作製を目指すには、気泡溶液中のLactadherin濃度を正確に定量する測定系を確立する必要がある。そこで、Human MFG-E8 Quantikine ELISA Kit (DFGE80, R&D Systems)を用い、本研究で使用しているRecombinant Human MFG-E8 (Lactadherin, 2767-MF, R&D Systems)の測定および、Sonazoid-Lactadherin複合体中のLactadherin濃度について検討を行った。
結果と考察
新生血管に対する分子標的性の検討
Day7の担癌モデルマウスにおいて、Sonazoid-Lactadherin複合体投与直後は良好な腫瘍の造影像が認められたが、造影剤投与10分後に再度撮像を行ったところ、腫瘍内の染影はほぼ消失しており、腫瘍内へのSonazoid-Lactadherin複合体の滞留がほとんど認められない事を示唆する結果であった。この原因としては、Sonazoidの気泡密度(気泡数)の経時的な低下が大きく関係していると推察され、これを克服するには生体へ投与する直前にSonazoid-Lactadherin複合体を調製する、新たな気泡作製法の開発が必要だと分かった。
簡便な分子標的気泡作製法の実現に向けたLactadherin定量法の確立
ELISAにてRecombinant Human MFG-E8の濃度を測定したところ、実際の濃度の1/40~1/20の値が算出されることが明らかとなった。また、Sonazoid-Lactadherin複合体溶液で検討したところ、5×105 bubbles/ mL~1×106 bubbles/mLに希釈することで、ELISAの測定レンジ内での定量が可能であることが明らかとなった。
結論
本年度の検討から、Sonazoid-Lactadherin複合体を用いた超音波分子イメージングの実現に、洗浄・遠心分離操作が不要な気泡作製法の早急な開発が必要であることが明らかとなった。また一方で、その簡便な気泡作製法の開発に必要な、Sonazoid-Lactadherin複合体溶液中のLactadherin濃度の定量法を確立した。今後は、これまでに確立した様々な実験系を駆使して、Sonazoid-Lactadherin複合体を用いた新生血管及び新鮮血栓に対する超音波分子イメージングの開発を進めて行く予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201427052B
報告書区分
総合
研究課題名
簡便に調製可能な分子標的気泡を用いた超音波分子イメージングの開発-臨床用超音波造影剤の適応拡大の可能性の検討
課題番号
H25-医薬-若手-023
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大谷 健太郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造影超音波法は、微小気泡を造影剤として用いる非侵襲的かつベッドサイドで施行可能な造影検査法である。近年、抗体やペプチド/タンパクにより修飾した微小気泡を用い、生体内の炎症部位や動脈硬化巣等に気泡を集積させ(分子標的気泡)、それを画像化する超音波分子イメージングの開発が試みられている。先般、我々は本邦で臨床使用可能な超音波造影剤Sonazoidと生体内タンパクLactadherinから、新生血管や新鮮血栓を標的とする分子標的気泡(Sonazoid-Lactadherin複合体)作製の可能性を見出した。本研究の目的は、Sonazoid-Lactadherin複合体の(1)分子標的気泡としての実現可能性について検討すること、および(2)より簡便な作製法を開発することである。
研究方法
新生血管に対する分子標的性について、担癌モデルマウスを用いて評価した。雌性ヌードマウスの皮下にヒト卵巣線種細胞(SK-OV-3)を移植し、腫瘍体積を経時的に観察することにより、造影超音波法を行う至適時期を決定した。造影超音波法は、経静脈的にSonazoidおよびSonazoid-Lactadherin複合体を投与し、投与後10分後に撮像を行った。Sonazoid-Lactadherin複合体の作製は、既報の方法(反応後、洗浄と遠心分離操作を行う)で行った。
新鮮血栓に対する分子標的性については、ヒトおよびマウス血餅を用いたin vitro実験と頸動脈血栓モデルマウスにて検討を行った。凝固促進用シリカ微粒子入り採血管にヒト/マウス血液を採血し、37℃で2時間凝固させた。その後切片を作成し、抗CD41(GPIIb/IIIa)抗体を用いて免疫染色を行った。頸動脈血栓モデルは、剥離した右頸動脈に塩化鉄(III)溶液を反応させて作製した。塩化鉄(III)暴露30分後に頸動脈を摘出し、免疫染色を行った。
SonazoidとLactadherinの結合の特異性を検証するため、Lactadherinと分子量および等電点が近いAngiopoietin-like protein 5 (ANGPTL5)を用い、蛍光標識したLactadherinあるいはANGPTL5とSonazoidとの結合をFACSにより評価した。
洗浄・遠心分離操作が不要な、混ぜるだけでSonazoid- Lactadherin複合体の作製を実現する簡便な作製法を開発するため、溶液中のLactadherin濃度を正確に検出する測定系の確立を試みた。
結果と考察
腫瘍サイズは移植7日目(Day7)以降に縮小する傾向が認められたため、Day7にSonazoid-Lactadherin複合体にて癌新生血管の分子イメージングが可能か否かについて検討した。Sonazoid-Lactadherin複合体投与直後は良好な腫瘍の造影像が認められたが、造影剤投与10分後に再度撮像を行ったところ、腫瘍内の染影はほぼ消失しており、腫瘍内にSonazoid-Lactadherin複合体の滞留はほとんど認められなかった。その原因としては、Sonazoidの経時的な気泡密度(気泡数)の低下が大きく関係していると推察された。
ヒト/マウス血餅内にSonazoid-Lactadherin複合体の標的分子であるGPIIb/IIIaが存在することを免疫染色で確認した。同様に、マウス頸動脈血栓においても一様なGPIIb/IIIaの発現が認められた。
蛍光標識Lactadherinと混合した場合にはSonazoidからの蛍光強度の顕著な増加が確認できた。しかし、蛍光標識ANGPTL5と混合した場合には、蛍光色素と混合した場合と同等の蛍光強度の増加しか認められなかったことから、SonazoidとLactadherinの結合が特異的であることが示唆された。
ELISAにて本研究で使用しているLactadherin濃度を測定したところ、実際の濃度の1/40~1/20の値が算出されることが明らかとなった。また、Sonazoid-Lactadherin複合体で検討したところ、5×105 bubbles/ mL~1×106 bubbles/mLに希釈することで、ELISAの測定レンジ内での定量が可能であることが明らかとなった。
結論
本研究により、Sonazoid-Lactadherin複合体の新生血管および新鮮血栓に対する分子標的性を評価するために必要な、多くのin vitroおよびin vivo実験評価系を確立することができた。今後、これらの実験評価系を駆使してSonazoid-Lactadherin複合体を用いた非侵襲的かつ定量性の高い、臨床応用可能な超音波分子イメージングの開発へと発展させたいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427052C

収支報告書

文献番号
201427052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,990,000円
(2)補助金確定額
2,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,197,924円
人件費・謝金 0円
旅費 39,480円
その他 62,844円
間接経費 690,000円
合計 2,990,248円

備考

備考
補助金確定額と支出合計の差額248円は自己資金から支払いを行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-