患者数が特に少ない希少疾病に対する医薬品の有効性・安全性評価のためのガイダンス作成に関する研究

文献情報

文献番号
201427047A
報告書区分
総括
研究課題名
患者数が特に少ない希少疾病に対する医薬品の有効性・安全性評価のためのガイダンス作成に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(北里大学薬学部 臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 荒戸 照世(北海道大学大学院医学研究科)
  • 土田 尚(国立病院機構本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少疾病の中でも患者数が特に少ない疾病に対する医薬品の開発に焦点を当て、これまでに承認されたこの種の医薬品の臨床データパッケージ等の整理分析や特に小児領域における特徴の分析、さらにはこれらの医薬品の開発促進のための制度的側面からの検討等を行う。これらの結果に基づき、最終的には、少数の被験者でも合理的に有効性・安全性を評価するために留意すべき事項等をまとめたガイダンス文書を作成すること等により、その開発の推進を図ることを目的とした。

研究方法
本研究における主な研究項目を以下の通りとし、各々において、文献調査、現地調査、アンケート又はインタビュー調査等により必要な情報を収集し、集計・分析するとともに、研究項目間での議論・調整を行い、ガイダンス文書をとりまとめた。
(1)日本で承認された患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の臨床データパッケージ等に関する研究、(2)患者数が特に少ない小児領域の希少疾病に対する医薬品開発に関する研究、(3)希少疾病用医薬品の開発促進のための制度的側面からの検討
結果と考察
ウルトラオーファンドラッグの臨床データパッケージの分析結果からみると、有効性及び安全性に関するエビデンス構築の観点からは、許容可能なデータがあれば必ずしも2本以上の無作為化比較試験の実施が必要ではないことが伺えた。用量反応試験は適切な用量を探索するために重要な試験であり、ウルトラオーファンドラッグであっても可能な限り用量反応試験を実施することが望ましい。しかし、症例数が極めて少なく複数の用量群をおいた並行群間比較試験や群漸増試験の実施が困難な疾患も想定され、調査対象とした多くのウルトラオーファンドラッグで強制的漸増試験や任意漸増試験が実施されていた。Pivotal臨床試験において、評価項目、対照群、症例数等の設定において種々の工夫が施されており、その他比較のために工夫された試験デザインが採用されていた品目もあったことから、これらも参考となる。また、特に、ウルトラオーファンドラッグに関しては、治験で得られる情報が希少疾病用医薬品の中でもより少ないことが想定されることから、製造販売後調査の位置づけはより高いと考えられ、患者レジストリ等の構築も含め、製造販売後にエビデンスを高めるための努力が継続されるべきと考える。
小児領域の希少疾病用医薬品に関しては、患者数が特に少ない小児領域の希少疾病は多くが先天代謝異常症であることがわかった。先天代謝異常症は、その診断や治療法の開発に対しても、患者レジストリなどが整備されてきている良い例と言えそうであるが、その整備途上あるいはほとんど未整備の希少疾病がより多いであろうことも想像に難くない。このため、先天代謝異常症に限らず、患者数が特に少ない希少疾病については、難病の施策などとも絡めて考えていく必要があろう。また、特にウルトラオーファンドラッグでは、その開発に関する大きな枠組みとして、これまで設置されてきた国による種々の検討会議が、進みにくいであろう医薬品等の開発に役立っていると考えられた。
希少疾病用医薬品の開発促進のための制度的側面に関して、日本及び欧州の双方で希少疾病用医薬品に指定された医薬品の指定日を比較したところ、我が国においては、特に希少疾病用医薬品についてその開発着手のタイミングに遅れがあることが推測され、今後、希少疾病用医薬品の開発を推進するためのさらなる環境の整備が必要と考えられる。企業ヒアリング及びアンケート調査の結果からは、希少疾病用医薬品に対する経済的インセンティブ(開発助成金、相談・審査手数料の減額など)に対する考え方には企業規模により差があるように見えた。また、特に患者数が少ない希少疾病用医薬品については、患者登録(レジストリ)システムの整備が、臨床試験における被験者の確保のみならず、病態そのものの解明や患者の診断・特定、医薬品が市販された後の患者モニターなど、様々な場面で有益であると考えられる。
結論
患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発においては、無作為化比較試験や用量設定試験を含む海外臨床試験データの活用、特に日本人を対象とした臨床研究や使用実態調査結果の参考資料としての活用、無作為化比較試験に限定しない工夫した試験デザインの採用、適切な製造販売後調査によるエビデンスの補強等が重要である。また、制度面からは、患者数が特に少ない疾病に対する有望な医薬品(候補)の希少疾病用医薬品としての指定の早期化、企業規模等を考慮した経済的インセンティブの重点化など、その開発をさらに後押しするために今後継続して検討していくべき課題があると考える

公開日・更新日

公開日
2017-10-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-10-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201427047B
報告書区分
総合
研究課題名
患者数が特に少ない希少疾病に対する医薬品の有効性・安全性評価のためのガイダンス作成に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(北里大学薬学部 臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 荒戸 照世(北海道大学大学院医学研究科)
  • 土田 尚(国立病院機構本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の医学(医療技術、診断技術など)の進歩に伴い、従来は原因の特定や早期の発見・診断が困難であった疾患について病態の解明などが進んできたものもある。これにより、これまでほとんど治療法がなかった希少な難病に対して、新たな治療法が利用可能となる状況も生まれている。しかしながら、希少疾病全体から見ればそれらはまだ一部であり、中でも患者数が特に少ない疾病(国内患者数が1,000人未満程度を想定)におけるunmet medical needsは依然として高い。これらの疾病については、病態の解明などがなかなか進まないといった面もあるが、有望なシーズ(医薬品候補物質)が見つかりながらも、臨床試験等によってその有効性・安全性を示すステップが何らかの理由でうまく進まないことにより開発が停滞してしまうといった状況も考えられる。
このような希少疾病に対する医薬品においても、製造販売承認取得のためには臨床試験等によりその有効性・安全性を示す必要があることは、通常の医薬品と同様である。しかしながら、開発企業側から見ると、(1)患者数が極端に少ないが故に通常の臨床試験の方法論(試験デザイン、評価法)を適用できないことが多い、(2)仮に試験が成功し製造販売承認を得たとしても市場性が小さく投資回収の見込みを立てづらい、といった背景から開発が躊躇される状況にあり、何らかの手立てを講じていく必要がある。厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会による「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」(2012年1月)においても、患者数が特に少ない希少疾病におけるレギュラトリーサイエンス研究を推進し、少数の被験者数でも合理的に安全性・有効性を評価できるようにガイドラインを整備すべきであるとされている。
本研究は、希少疾病の中でも患者数が特に少ない疾病に対する医薬品に焦点を当て、その開発の推進を図るため、これまでに承認されたこの種の医薬品の臨床データパッケージ等の整理分析、欧米との状況の比較、その開発促進のための制度的側面からの検討等を行い、これらの結果に基づき、少数の被験者でも合理的に有効性・安全性を評価するために留意すべき事項等をまとめたガイダンス文書を作成することを目的とした。
研究方法
我が国でこれまでに承認された患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の臨床データパッケージ等の分析、欧州における希少疾病用医薬品の開発・承認の動向調査、希少疾病用医薬品の開発促進制度の国際比較等を行った。これらを踏まえて、少数の被験者でも合理的に有効性・安全性を評価するために留意すべき事項等をまとめたガイダンス文書を作成した。
結果と考察
患者数が特に少ない希少疾病用に対する医薬品の有効性、安全性評価のためのガイダンスをとりまとめた。ガイダンス文書の章立てを以下に示す。

「患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の臨床開発に関するガイダンス」
はじめに
1.エビデンスの構築
(1)無作為化比較試験、(2)用量反応試験、(3)継続投与試験の実施
2.利用データソース
(1)国際共同治験や海外試験成績の利用、(2)臨床研究や使用実態調査の利用
3.pivotal臨床試験の計画
(1)評価項目、(2)対照群の設定、(3)臨床試験デザイン、(4)症例数の設計
4.製造販売後における情報収集
結論
これまでも、患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発においては、臨床試験のデザインや結果の評価において種々の工夫が施されてきた。今後、本ガイダンス文書も参考にしながら、個々の医薬品の置かれた状況も考慮した柔軟かつ適切な臨床開発が行われていくべきと考えられる。また、希少疾病用医薬品に係る制度的枠組み及びその運用においても、今後その開発をさらに促進するための対応と見直しが適時に行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-10-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201427047C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発にあたり、その臨床試験のデザインや結果の評価方法を含めて、少数の被験者でも合理的に有効性・安全性を評価するために留意すべき事項等をまとめたガイダンス文書を作成した。これにより、開発計画作成時における予見可能性の向上、試験デザインの適切化・効率化が図られ、今後の患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発促進に資することになる。
臨床的観点からの成果
-
ガイドライン等の開発
本研究では、患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発にあたり、その臨床試験のデザインや結果の評価方法を含めて、少数の被験者でも合理的に有効性・安全性を評価するために留意すべき事項等をまとめたガイダンス文書を作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、将来、厚生労働省の関係部局から示されるであろう指針文書のベースとして用いられることになる。これにより、このような希少疾病用医薬品の開発計画作成時における予見可能性が高まるとともに、適切なデザインによる臨床試験が実施されるようになり、患者数が特に少ない希少疾病用医薬品の開発促進に資することになる。

その他のインパクト
-

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
成川 衛
希少疾病用医薬品の開発経験に関するアンケート調査に基づくその開発促進策に関する検討
医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス , 46 (1) , 60-65  (2015)

公開日・更新日

公開日
2017-10-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,300,000円
(2)補助金確定額
3,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,096,054円
人件費・謝金 0円
旅費 1,008,429円
その他 1,195,517円
間接経費 0円
合計 3,300,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-