医薬品品質保証システムの進歩に対応した日本薬局方の改正のための研究

文献情報

文献番号
201427044A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品品質保証システムの進歩に対応した日本薬局方の改正のための研究
課題番号
H25-医薬-指定-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 寺田 勝英(東邦大学 薬学部)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 四方田 千佳子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 規格基準部)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方は,我が国の医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準及び標準的試験法等を示す公的な規範書であり,局方に採用される試験方法や医薬品各条の規格及び試験方法には普遍性が要求されている.
一方,医薬品の品質保証システムは,最新の科学の採用を推奨するとともに,リスクベースな方法へと変わりつつある.その結果,局方試験を最終製品に適用し,規格に適合しているか否かを確認することによるものから,製造工程を管理することによる品質の担保へと品質保証の在り方はシフトしてきている.分析法も長足の進歩を遂げ,リアルタイムリリースに適用可能な新しい試験法も開発されている.さらに,医薬品のサプライチェーンは一層国際化し,医薬品の円滑かつ安全な流通のためには,局方の国際調和が求められているところである.
このような状況に対応すべく,第17改正日本薬局方作成の基本方針では, (1)最新の学問・技術の積極的導入による通則,製剤総則,一般試験法等の改正; (2)国際調和の推進と日本薬局方の国際化の推進が最重要課題として謳われている.本研究班は基本方針のもと,ICHやWHO等における国際的な取組みを踏まえつつ,薬局方の改正に向けた必要な検討を行うことを目的とする.
研究方法
研究班は局方改正原案の作成の中核を担っている各委員会の専門家から構成され,①化学薬品各条ならびに試験法の検討,②生物薬品各条ならびに試験法の検討,③生薬各条および試験法の検討,④医薬品添加剤に関する検討,⑤理化学試験法の検討,⑥製剤総則および製剤試験法の検討,⑦医薬品名称原則の改正,の各分野の課題について,適宜横断的な協力を行いながら解決を図る.
結果と考察
当初研究計画に基づき研究を実施し,下記の研究成果を挙げた.
(1) 化学薬品分野: 最近開発が進んだ各種ラマン分光法を製剤試験の導入する際の問題点を検討し,超低波数領域を用いたラマン分光法は製剤中のアセトアミノフェンなどの結晶性の主薬の判別には有効であること等を明らかにした.
(2) 製剤総則・製剤試験法分野:ラマン分光計により皮膚中における吸収促進剤OTG処理による皮膚内部構造の変化を検討した.その結果,OTG添加によりセラミドの極性部分と相互作用することで,セラミドの非極性側鎖部分がtrans構造からgauche構造に変化することで構造の乱れを生じてモデル薬物のブメタニドの皮膚透過速度を増加していることが解明された.
(3) 生物薬品分野:最近,第十六改正日局第二追補に収載されている各条ヘパリン定量法に関して,トロンビン等の試薬の変化により,反応液の吸光度が低く,直線性が試験成立条件外となるケースがあることが報告された.本研究では,緊急の対策として,流通しているトロンビン,及び,アンチトロンビンより日局収載試験法で良好な定量が可能なロット選定を行った.
(4) 生薬分野:新規収載された竹葉石膏湯の構成生薬であるチクヨウ及びその類似生薬であるタンチクヨウについて,確認試験法案をまとめた.また,指標スポットの同定を目的に,チクヨウエキスの成分分画を行った結果,チクヨウの確認試験法における指標スポットは,2 種のトリテルペンの混合物であり,その一方は,3-epi-lupeol であることが明らかになった.
(5) 添加剤分野: 医薬品各条の国際調和が進められている二酸化ケイ素と微粒子二酸化ケイ素について,国際調和にあたっての問題点を検討し,その解決方策について考察した.両者は,ナトリウムの炎色反応によって両者を区別できることが分かった.しかし,ナトリウムは不純物であるため,精製技術の進歩によりその含有量が削減される可能性等のため,ナトリウムの炎色反応を採用することは困難と考えられた.
(6) 理化学試験法分野:日本薬局方では,金属分析のための一般試験法として,原子吸光光度法,誘導結合プラズマ発光分光分析法,誘導結合プラズマ質量分液法(ICP-MS)が収載されている.本研究ではプラスチック製医薬品容器試験におけるスズの試験法にマイクロ波分解とICP-MSの適用を試み,十分な感度が得られることを明らかにした.
(7) 医薬品名称分野:日本薬局方収載医薬品の医薬品各条は,医薬品の情報記載の規範を示しておりその波及効果は大きい.今年度は第17改正に対応するため,別名の整理,構造式の整備(分数表記の変更,ベンゼン環の2重結合の位置修正,塩の構造式の変更)し,化学名の整備方針を明確にした.
結論
本研究班は,局方作成に中核的に関与している研究者から構成されており,国際的整合性および最新の科学技術の導入の観点から,研究を実施し,所定の成果を挙げた.本研究成果の多くは日本薬局方の各条,一般試験方法や通則の改正に直接に反映される得るものと考える.

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201427044Z