ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201427037A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科(輸血部))
  • 米村 雄士(熊本大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部附属病院 輸血部)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 大坂 顯通(順天堂大学 医学部 )
  • 岡崎 仁(東京大学 輸血部)
  • 日野 学(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 五十嵐 滋(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 百瀬 俊也(日本赤十字社 関東甲信越ブロック血液センター)
  • 石井 博之(一般社団法人日本血液製剤機構 信頼性保証本部)
  • 北澤 淳一(福島医科大学)
  • 大谷 慎一(北里大学 医学部)
  • 奥山 美樹(東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性を高いレベルに引き上げるために、国際社会における輸血に伴う副作用のヘモビジランス(サーベイランス)システムの必要性がヨーロッパにおいて認識され構築されている。日本においては、医療機関から日本赤十字社への自主的報告を中心として行われており、安定した成果を上げてきた。一方日本輸血細胞治療学会が中心となって実施しているヘモビジランス活動では、統一した判断基準を設定し、施設格差のない信頼性のある輸血副作用の全数管理システムを整備し、医療機関からの定期的な情報を収集するオンラインシステムを構築してきた。本研究課題において、医療機関からの輸血副作用報告システムを強化することにより、ヘモビジランスから得られる情報について、多様な観点から評価を行い、新たな安全技術導入やリスクに迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築する。
研究方法
医療機関からの現行のヘモビジランスにおいて改善すべき課題について検討を行う。また、血液製剤を製造から臨床使用にいたるすべての過程でチェックできる体制(トレーサビリティ)の構築を新たに進め、すべての安全性に関する情報の一元管理が可能となるシステムの構築を行うとともに、安全監視体制の一層の充実を図る。平成26年度は、日本におけるトレーサビリティのシステムを構築すべく、製造業者、病院・診療所において血液製剤の製造・供給・使用に関する情報を一元的にトレースできるシステムの構築の検討を、ICTシステムコンサルタント会社を研究協力者に加えて行う。
結果と考察
現在実施されているヘモビジランス活動において、改善すべき課題を明確にして、その対策への取り組みを実施した。
1)海外における輸血監視システムの評価と日本の位置づけ: 2014年3月に開催された国際ヘモビジランス会議においてTotal traceabilityに関する調査が行われ、Total traceabilityが要求されている欧州の国々の中でもすべての国で達成できている状況ではないことが判明した。状況を詳しく解析し、日本における体制構築に役立てる。
2)既存オンライン報告システムの拡充および教育:: 平成25年度に引き続き、副作用の報告体におけるデータの信用性を高めるため、副作用の輸血関連性、重症度などを精査する方策を検討した。また、平成22年度から25年度における日本全国で過誤輸血の推移は毎年10件台で、ほとんど変わらず、ニアミスはわずか減少傾向にあった。今後も過誤輸血及びニアミスの毎年の推移と詳細な解析が、過誤輸血を減少させる方策になると思われる。また、ヘモビジランス普及の啓発活動、医師・看護師・検査技師の教育プログラム作成については「輸血副反応ガイド」を2014.11.1に輸血細胞治療学会より発行した。診療科別の副作用発生調査の解析を進め論文としてまとめる準備を行っている。さらに、全国19大学病院の過去4年間のデータをもとに、診療科別の発生状況の解析のまとめが終わり、論文化を進めている。
3)学会および日本赤十字社との協力体制の強化: 現在、日本輸血・細胞治療学会で行っているヘモビジランス活動と日本赤十字社で行っているヘモビジランス活動の情報交換等のさらなる協力支援体制を確立しつつある。平成27年度にはさらに多くの医療施設でのヘモビジランス普及を目指し、日本赤十字社の協力のもと学会等での啓発活動を強化する。
4)新たな血液製剤管理情報収集のためのオンラインシステムの開発: 製造業者、病院・診療所において血液製剤の製造・供給・使用に関する情報を一元的に管理できるシステムの構築のためのパイロットスタディを開始した。平成26年10月1ヵ月間に4つの医療機関(北里大学、愛知医科大学、東京医大八王子病院、黒石病院)で使用された輸血用血液製剤について、医療施設内での使用履歴を明確にするとともに、日本赤十字社で製造された履歴を突合させることによりトレースを完了した。今後、突合に用いたソフトの改良しシステムの概要を固めるとともに、医療機関、日本赤十字社における情報収集上の問題点等を詳細に検討し、3年目に拡大したパイロットスタディを実施する。このことにより、血液センターからの情報および医療施設からの情報をそれぞれ収集し、献血から輸血実施さらには製剤廃棄までをモニターできる仕組みを構築される。
結論
既存のヘモビジランスシステムの改良・改善を図っていくことにより、輸血副作用対策において迅速かつ正確な状況判断ができるシステムの構築につながりつつある。こうした取り組みは、日本の輸血医療の安全性向上に寄与する。また、トレーサビリティが確立されることにより、すべての安全性に関する情報の一元管理が可能となるシステムの構築を行うとともに、安定供給、適性使用にも繋がり、安全監視体制の一層の進展に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2016-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201427037Z