文献情報
文献番号
201427028A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの臨床評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-医薬-指定-025
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小川 千登世(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
- 小川 淳(新潟県立がんセンター新潟病院)
- 米田 光宏(大阪市立総合医療センター)
- 富澤 大輔(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
- 吉村 健一(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
- 手良向 聡(京都府立医科大学大学院医学研究科)
- 寺島 慶太(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,385,000円
研究者交替、所属機関変更
(所属機関異動)
研究分担者 米田光宏:大阪府立母子保健総合医療センター(平成26年4月1日~26年6月30日)→大阪市立総合医療センター(平成26年7月1日以降)
研究分担者 富澤大輔:東京医科歯科大学医学部附属病院(平成26年4月1日~26年8月31日)→国立成育医療研究センター 小児がんセンター(平成26年9月1日以降)
研究分担者 吉村健一:神戸大学医学部付属病院 臨床研究推進センター(平成26年4月1日~26年7月31日)→金沢大学附属病院 先端医療開発センター(平成26年8月1日以降)
研究分担者 手良向聡:金沢大学附属病院 先端医療開発センター(平成26年4月1日~26年5月1日)→京都府立医科大学大学院医学研究科(平成26年6月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
小児がんは稀少疾患であるが、5~14歳の病死の原因の第一位であり、継続的な治療開発と新規薬剤の導入が必要かつ有効な疾患である。本研究は、小児がんに対する適切な抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法を記載したガイドラインを作成すること目的とし、これにより小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、ガイドラインに沿った臨床試験の実施によって、小児がん分野で使用できる薬剤を増やし、小児がん患者の予後及び生活の質の改善に寄与すると考える。
研究方法
平成24年度は基礎資料収集および既存の「抗悪性腫瘍薬の臨床評価に関するガイドライン」、「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」の内容を検討した。平成25年度は24年度の現状分析を元に、不足情報についてはさらなる調査を進めながら、行政側との意見交換も行い、「小児悪性腫瘍における抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイダンス」の枠組みを検討し、骨子・素案の作成に入った。これを踏まえ本年度は前年度までに作成された素案を元にガイダンス案を作成し、行政等との意見交換を行い、ガイダンス案を完成する。その後、関係諸機関や広く国民に対して意見公募を行い、新たに出てきた論点について考え方の整理を行い、ガイダンスを完成する。
結果と考察
平成25年度までに作成された素案およびその他追加収集した資料を基に班会議を行い、行政および医薬品医療機器総合機構との複数回の意見交換を経て、記載内容の再検討、具体的な文言の調整、記載整備を行い、ガイダンス案を作成し、平成27年2月に厚生労働省審査課へ提出した。ガイダンスは1.緒言、2.背景、3.小児悪性腫瘍における開発戦略、4.臨床試験、5.薬物動態(PK)試験、6.製造販売後調査及び製造販売後臨床試験、7.その他の各項にて構成される。今後行政での調整を経て意見募集が行われる予定であり、これらを経てガイダンス完成予定である。小児悪性腫瘍に対する抗悪性腫瘍薬の臨床試験のあり方の考えを示すことにより、小児試験の開始時期や計画等、開発戦略が再検討され、企業の薬剤開発インセンティブにもつながることを期待する。
また、本ガイダンス案作成の過程で現行制度下での小児悪性腫瘍に対する薬剤開発の問題点も明らかとなったことから、調査過程において収集した資料、また、議論の過程において抽出された小児がんに対する薬剤開発における問題点等を別途掲載した総合報告書を作成した。企業の薬剤開発インセンティブの点において小児悪性腫瘍は成人悪性腫瘍と比較して圧倒的に不利であることは自明である。更に従来の薬剤開発および承認は、原則として病理学的疾患名に基づいて行われていることが極希少疾患である小児期に特有の悪性腫瘍に対する開発をより一層困難にしてきた。本ガイダンスはその解決の一助となることが期待されるが、更なる小児における薬剤開発の促進においては米国におけるBest Pharmaceutical for Children Act (BPCA,1997)やPediatric Research Equity Act (PREA,2002)、欧州におけるPediatric Regulationのような医薬品の承認申請を目指した開発を進める際に企業に小児開発を義務づける法制度を整備することが必要かもしれない。また多くの分子標的薬が開発される時代となっていることから、一部の分子標的薬では日本国内の適応症にも必要な陽性分子名や遺伝子変異が記載され始めたように、薬剤によっては病理学的疾患名毎ではなく疾患メカニズムと薬剤作用機序に基づいた開発や適応取得が行われることも必要であると考えられる。
また、本ガイダンス案作成の過程で現行制度下での小児悪性腫瘍に対する薬剤開発の問題点も明らかとなったことから、調査過程において収集した資料、また、議論の過程において抽出された小児がんに対する薬剤開発における問題点等を別途掲載した総合報告書を作成した。企業の薬剤開発インセンティブの点において小児悪性腫瘍は成人悪性腫瘍と比較して圧倒的に不利であることは自明である。更に従来の薬剤開発および承認は、原則として病理学的疾患名に基づいて行われていることが極希少疾患である小児期に特有の悪性腫瘍に対する開発をより一層困難にしてきた。本ガイダンスはその解決の一助となることが期待されるが、更なる小児における薬剤開発の促進においては米国におけるBest Pharmaceutical for Children Act (BPCA,1997)やPediatric Research Equity Act (PREA,2002)、欧州におけるPediatric Regulationのような医薬品の承認申請を目指した開発を進める際に企業に小児開発を義務づける法制度を整備することが必要かもしれない。また多くの分子標的薬が開発される時代となっていることから、一部の分子標的薬では日本国内の適応症にも必要な陽性分子名や遺伝子変異が記載され始めたように、薬剤によっては病理学的疾患名毎ではなく疾患メカニズムと薬剤作用機序に基づいた開発や適応取得が行われることも必要であると考えられる。
結論
我が国の現行制度下において、製薬企業に対しても自ら治験を実施する医師に対しても、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、治験を推進する目的で、小児がんに対する医薬品の臨床評価方法を記載した研究班としてのガイダンス最終案を作成し、厚生労働省へ提出した。今後行政での調整を経て、意見募集が行われる予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
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