文献情報
文献番号
201427020A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品リスク管理計画制度の着実かつ効果的な実施のための基盤的研究
課題番号
H24-医薬-指定-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(北里大学薬学部 臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
- 青木 良子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 堀 明子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
- 前田 玲(日本製薬団体連合会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省より2012年4月に公表され、2013年4月から実施に移された「医薬品リスク管理計画(RMP)指針」に基づき我が国で計画・実施される医薬品のリスク管理について、その構成要素である安全性監視、並びにリスク最小化活動に関する我が国の現状及び諸外国での実施状況の調査・分析を行い、問題点の抽出及び対応策の検討を行うとともに、両者を計画・実施する際の基礎となる医薬品市販後のベネフィット・リスク評価のあり方について整理・検討を行う。これらを踏まえて、我が国で計画・実施される医薬品のリスク管理の課題を明らかにし、対応策の提案を行うことを目的とした。
研究方法
安全性監視について、市販後安全性情報の添付文書への反映方法、使用成績調査における症例選択について検討するとともに、我が国の市販後安全対策に関する制度の枠組みと歴史について整理・検討した。諸外国におけるRMPの実施状況については、欧州医薬品庁(EMA)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)の活動を中心に、欧州における医薬品安全性監視システム全般及びシグナル検出の実施状況を調査した。ベネフィット・リスク評価については、これまでの研究結果を踏まえて、製造販売後のベネフィット・リスク評価方法の一例としてのフレームワーク案を作成した。リスク最小化活動の効果の評価については、これまでの検討結果を踏まえて、評価実施時の考慮事項のとりまとめ等を行った。
結果と考察
安全性監視計画について、現状では、多くの医薬品において、治験及び製造販売後調査から得られた副作用発現の数値を単に合算して個々の副作用の発現頻度が算出され、添付文書に記載されており、副作用が過小評価される方向で誤解されるおそれがある。製造販売後調査については、その開始あるいは制度化から長い年月が経過し、それを取り巻く状況も大きく変化した。RPM制度が実質的に稼働し始めた現在、医薬品安全対策を巡る規制・制度も、データベース研究をはじめとする安全対策に関する新たな試みを可能とし、それをより適切な方向に導き推進するために進化していく必要があるであろう。
諸外国におけるRMPの実施状況について、EUでは、2012年から施行された新ファーマコビジランス法による体制強化により、特に新たに設置されたPRACが中心となって医薬品の安全性監視が体系的に行われ、情報公開も進んでいる。これらのシステムと組織の役割は、法律やガイドラインによって詳細に規定されており、これらの情報は、我が国のRMPを効果的・効率的に実施する際に参考になると考えられる。
市販後のベネフィット・リスク評価については、まずは定性的なフレームワーク案を作成することによってベネフィット・リスク評価の視点・検討項目を明確化し、質の高いベネフィット・リスク評価をRMPに沿って実施していくことを目指す必要があると考える。このため、製造販売後のベネフィット・リスク評価方法の一例として、フレームワーク案を作成し、その結果を表形式にする方式を提示した。今後、本班研究で調査した国内外の状況等を踏まえ、規制当局内、企業内での検討を重ね、試行を行うプロセスが必要と考える。
リスク最小化活動の効果の評価について、EUガイドライン、FDAの情報、CIOMS 9より、リスク最小化策の有効性の測定の基本的な考え方として、プロセス指標、アウトカム指標の2種類が提唱されており、日本においてもこれらを指標として測定する必要があると考える。測定する際には保健衛生上の必要性を考慮する必要があり、評価に用いる指標については、医療システムへの影響・負担を考慮し、計画段階において測定可能となるよう具体的に設定することが重要である。方法論としては現在利用可能な医療情報データベースの利活用、アンケート調査の実施等が考えられるが、汎用的な方法論を示すことは有意義ではない。
諸外国におけるRMPの実施状況について、EUでは、2012年から施行された新ファーマコビジランス法による体制強化により、特に新たに設置されたPRACが中心となって医薬品の安全性監視が体系的に行われ、情報公開も進んでいる。これらのシステムと組織の役割は、法律やガイドラインによって詳細に規定されており、これらの情報は、我が国のRMPを効果的・効率的に実施する際に参考になると考えられる。
市販後のベネフィット・リスク評価については、まずは定性的なフレームワーク案を作成することによってベネフィット・リスク評価の視点・検討項目を明確化し、質の高いベネフィット・リスク評価をRMPに沿って実施していくことを目指す必要があると考える。このため、製造販売後のベネフィット・リスク評価方法の一例として、フレームワーク案を作成し、その結果を表形式にする方式を提示した。今後、本班研究で調査した国内外の状況等を踏まえ、規制当局内、企業内での検討を重ね、試行を行うプロセスが必要と考える。
リスク最小化活動の効果の評価について、EUガイドライン、FDAの情報、CIOMS 9より、リスク最小化策の有効性の測定の基本的な考え方として、プロセス指標、アウトカム指標の2種類が提唱されており、日本においてもこれらを指標として測定する必要があると考える。測定する際には保健衛生上の必要性を考慮する必要があり、評価に用いる指標については、医療システムへの影響・負担を考慮し、計画段階において測定可能となるよう具体的に設定することが重要である。方法論としては現在利用可能な医療情報データベースの利活用、アンケート調査の実施等が考えられるが、汎用的な方法論を示すことは有意義ではない。
結論
今後、我が国においてRMP制度が着実にかつ効果的に実施されていくためには、本研究の結果も踏まえて、そのPDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)をうまく、機動的に回していくことが重要となる。また、医薬品安全対策への寄与の観点から、市販後のリスク管理活動に要するリソース(人的、経済的)と、その結果として得られるパフォーマンスとの全体的バランスを評価していく必要があるであろう。
新薬の研究開発が急速に国際化する中で、市販後の安全対策についても国際的な視野・方法論に基づく対応が必要とされている。今後も、RMP制度が先行実施されている欧米の状況について、その実際上の問題点や制度改善に向けた検討状況なども含めて情報収集及び分析を継続しつつ、我が国の医療や薬事規制の状況も踏まえた形で、医薬品リスク管理の手法及び考え方を検討していくべきであると考える。
新薬の研究開発が急速に国際化する中で、市販後の安全対策についても国際的な視野・方法論に基づく対応が必要とされている。今後も、RMP制度が先行実施されている欧米の状況について、その実際上の問題点や制度改善に向けた検討状況なども含めて情報収集及び分析を継続しつつ、我が国の医療や薬事規制の状況も踏まえた形で、医薬品リスク管理の手法及び考え方を検討していくべきであると考える。
公開日・更新日
公開日
2015-09-24
更新日
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