200ml献血由来の赤血球濃厚液の安全性と有効性の評価及び初回献血を含む学校献血の推進等に関する研究

文献情報

文献番号
201427017A
報告書区分
総括
研究課題名
200ml献血由来の赤血球濃厚液の安全性と有効性の評価及び初回献血を含む学校献血の推進等に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-022
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
室井 一男(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹下 明裕(浜松医科大学 医学部)
  • 浅井 隆善(千葉県赤十字血液センター)
  • 梶原 道子(東京医科歯科大学 医学部)
  • 岩尾 憲明(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,205,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 岩尾 憲明 山梨大学医学部(平成26年4月1日~平成26年4月30日)→順天堂大学医学部(平成26年5月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
1単位赤血球濃厚液(1単位製剤)に係わるアンケート調査結果と学校献血(高校献血)に係わるアンケート調査結果を解析し、日本赤十字社のデータをもとに200ml採血の実態を調査し、これらの結果を踏まえ、献血者の一層の安全対策を図りつつ、需給バランスに配慮した献血対策を考案する。
研究方法
(1)総合周産期母子医療センターを有する全国の93施設に実施した小児に対する1単位製剤に係わるアンケート調査結果を解析する。栃木県、山梨県、神奈川県、千葉県、新潟県の688医療施設に実施した成人に対する1単位製剤に係わるアンケート調査結果を解析する。(2)日本赤十字社のデータをもとに、女性献血者が200ml献血する理由を明らかにする。(3)静岡県の15高校に実施した学校献血の二次アンケート調査結果を解析する。(4)赤十字血液センターに実施した学校献血に係わるアンケート調査結果を解析する。
結果と考察
(1)新生児・小人に対する1単位製剤に係わるアンケート調査では、69施設から回答を得た(回収率74%)。1単位製剤を使用した施設は67施設(97%)。1年間の1単位製剤の使用単位の中央値114単位(0~2,484単位)。使用理由は、出生児低体重(64施設)、交換輸血(25施設)、新生児以外の小児疾患(42施設)、小児の外科手術(44施設)。1単位製剤を使用した患者数の中央値は、新生児・NICUで15例(0~118例)、新生児以外の小児で4例(0~169例)、小児外科で1例(0~100例)。成人に対する1単位製剤に係わるアンケート調査では、219医療施設から回答を得た(回収率32%)。同一施設で複数の診療科から回答を得たため有効回答総数は358。成人患者へ1単位製剤を使用した回答は283(79%)。1単位製剤を使用した患者年齢は、80歳以上(44%)、60~79歳(34%)。病態・基礎疾患は、出血(37%)、造血能低下(25%)、腎性貧血(17%)、手術(12%)。1単位製剤の使用理由は、循環負荷が少ない(37%)、1単位輸血で貧血が改善(25%)、鉄過剰の回避(17%)。1単位製剤は、新生児・小人、高齢者、低体重者、心機能低下者、腎機能低下者への輸血関連循環過負荷(TACO)の防止として広く使われていた。一方、その限定的な理由から、使用単位数は少数に留まっていた。1単位製剤が実際にTACO防止に有用であるかは、今後の検証が必要である。(2)平成24年度の200ml献血件数の男女別の割合では、女性献血者が過半数を占めていた。献血件数の多い東京都と神奈川県で、女性献血者が200ml献血する最も多い理由は、体重が400ml採血基準(50kg以上)を満たさないことであった(東京都63%、神奈川県54%)。(3)学校献血の二次アンケート調査では、15高校、7,592人から回答を得た。献血経験者7%、献血場所を知っている者51%、献血に関する広報を見たり聞いたりした者は56%。献血の方法を知っているかの問いに、知っている、ある程度知っていると回答した者は、2%、18%、あまり知らない、全く知らないと答えた者は、49%、30%。献血についての関心度は、非常に関心がある5%、関心がある30%、あまり関心がない48%、ほとんど関心がない17%。以上から、高校生に対する献血教育の不足が判明した。(4)赤十字血液センターへの学校献血に係わるアンケート調査では、23赤十字血液センターから回答を得た。回答した全てのセンターで、「学校献血は献血の動機付けとしての意義がある」、「今後も学校献血を続けるべきである」との意見であった。学校献血の実施上の問題は主には学校側にみられ、授業カリキュラムへの影響、献血同意書の取得の不備、担当教員の熱意等であった。200ml献血の存続に関しては、存続と廃止(400ml献血に一本化)が、ほぼ同数であった。(1)~(4)の研究結果をまとめると、1単位製剤には一定の需要はあるが供給過剰にある。1単位製剤の供給過剰の原因として、200ml採血の問題がある。200ml採血基準の体重の下限を適宜引き上げることによって、献血者の一層の安全を図りつつ、需要に合った200ml採血(1単位製剤の製造)が実施できる可能性がある。学校献血は、献血の動機付けとして意義があるが献血実施率は低く、その主な理由として高校生に対する献血教育の不足と学校側の学校献血への取り組みの困難さが明らかとなった。
結論
献血者の安全をさらに高め、需給に見合った1単位製剤の適正な製造を図るため、現在の採血基準を見直すことが必要と考えられた。複数回献血に繋がる学校献血を一層推進するために、学校と生徒両者への献血の啓発が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201427017B
報告書区分
総合
研究課題名
200ml献血由来の赤血球濃厚液の安全性と有効性の評価及び初回献血を含む学校献血の推進等に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-022
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
室井 一男(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 隆善(千葉県赤十字血液センター)
  • 竹下 明裕(浜松医科大学 医学部)
  • 梶原 道子(東京医科歯科大学 医学部)
  • 岩尾 憲明(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 岩尾 憲明 山梨大学 医学部(平成25年4月1日~平成26年4月30日)→順天堂大学 医学部(平成26年5月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
200ml献血由来赤血球濃厚液(1単位製剤)の特性、200ml採血の現状、海外における採血量、学校献血について調査し、献血者の一層の安全を図りつつ、需給バランスに配慮した献血対策を考案する。
研究方法
(1) 血液製造に係わるコストを算出し、輸血副作用を解析し、採血副作用を解析する。(2)女性献血者が200ml献血する理由を明らかにする。(3)アジア地区の400ml未満採血と本邦と米国の住民の体格差を調査する。(4)平成24年度血液製剤使用実態調査における1単位製剤使用実態を解析する。(5)全国の総合周産期母子医療センターと栃木県、山梨県、神奈川県、千葉県、新潟県の医療施設に1単位製剤に係わるアンケート調査を実施する。(6)静岡県下の高校生に献血に係わるアンケート調査を実施する。(7)赤十字血液センターに学校献血に係わるアンケート調査を実施する。
結果と考察
(1)1単位製剤と2単位製剤の製造コストは各々9,118円、9,759円。2008年8月から2011年7月までの3年間、200ml献血(1単位製剤)と400ml献血(2単位製剤)の初回献血者のHBs抗原、HBc抗体、HCV抗体陽性率は、献血者1,000人当たり前者が各々1.53, 3.11、 1.01、後者が各々2.87, 6.40, 2.10。2008年から2010年までの3年間、遡及調査で個別NAT陽性となった件数(%)は、1単位製剤で28件(11.3%)、2単位製剤で221件(88.7%)。全血製剤に占める1単位製剤の割合は約12%(2010年)から、両製剤の個別NAT陽性率には差がないと判断された。平成24年度上半期採血の血管迷走神経反応(VVR)の発生頻度は、初回献血、年齢が10から20歳代、体重が60kg未満で多かった。2010年の1年間における呼吸困難等の重篤な輸血副作用の発生件数(頻度%)は、1単位製剤で22件(7.5%)、2単位製剤で273件(92.5%)であるが、1単位製剤の割合を考慮すると、この輸血副作用は1単位製剤で少ない傾向があると判断された。(2) 平成24年度東京都と神奈川県で女性献血者が200ml献血する最も多い理由は、体重が400ml採血基準(50kg以上)を満たさないことであった(東京都63%、神奈川県54%)。(3)アジア地区の13カ国で400ml未満の採血が行われていた。住民健康調査によると、本邦の男性と女性の体重は、米国の男性と女性の各々約80%と約70%。本邦の成人女性の平均体重は約55kg、米国女性のそれは約75kg。(4) 4,812病院中2,663病院(55%)で1単位製剤が使用され、使用本数は1から50本が1,828病院(69%)、次いで51から100本339病院(13%)。(5) 新生児・小人に1単位製剤を使用した施設は67施設(97%)、1年間の1単位製剤の使用単位数の中央値114単位(0~2,484単位)。使用理由は、出生児低体重(64施設)、小児の外科手術(44施設)、交換輸血(25施設)等。成人に1単位製剤を使用した診療科・部門は283(回答数の79%)、使用患者年齢は、80歳以上(44%)、60~79歳(34%)。使用理由は、循環負荷が少ない(37%)、1単位輸血で貧血が改善(25%)、鉄過剰の回避(17%)。1単位製剤は、新生児・小人、高齢者、低体重者、心機能低下者への輸血関連循環過負荷(TACO)の防止として広く使われていた。一方、その限定的な理由から使用単位数は少数に留まっていた。 (6) 7,592人から回答を得た。献血経験者7%、献血の方法を知っているかの問いに、知っている、ある程度知っていると回答した者は、2%、18%、あまり知らない、全く知らないと答えた者は、49%、30%。献血についての関心度は、非常に関心がある5%、関心がある30%、あまり関心がない48%、ほとんど関心がない17%。以上から、高校生に対する献血教育が不足していることが判明した。(7)回答した全ての血液センターで、「学校献血は献血の動機付けとしての意義がある」との意見で、学校献血の実施上の問題は主には学校側にあった。 (1)~(7)の結果をまとめると、1単位製剤はTACO防止に有用である可能性があり一定の需要はあるが供給過剰にある。1単位製剤の供給過剰の原因として、200ml採血の過剰採血の問題がある。200ml採血基準の体重を適宜引き上げることによって、献血者の一層の安全を図りつつ、需要に合った200ml採血(1単位製剤の製造)に繋がる可能性がある。
結論
献血者の安全をさらに高め、需給に見合った1単位製剤の適正な製造を図るため、現在の採血基準を見直すことが必要と考えられた。学校献血を一層推進するために、学校と生徒両者への献血の啓発が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
200ml献血由来1単位赤血球濃厚液(1単位製剤)は、輸血関連循環過負荷(TACO)予防目的に、高齢者や心機能低下者に使われていた。日本赤十字社で収集された呼吸困難等の重篤な輸血副作用は、1単位製剤の方が2単位製剤より少ない傾向にあった。一方、限定的な使用理由から、1単位製剤の使用数は少数に留まっており、需給に大きな開きが存在した。供給過剰の原因として、低体重の女性献血者の200ml採血の問題が浮上した。学校献血に係わる様々な問題(献血教育の不足、学校側の事情等)が明らかとなった。
臨床的観点からの成果
1単位製剤の利点と欠点が明らかとなり、1単位製剤にTACO防止のエビデンスがあるか検証する必要性が浮上した。献血における200ml採血の採血基準の体重(男性45kg以上、女性40kg以上)が低すぎると考えられ、これを適宜引き上げることによって、献血者の採血副作用の減少と過剰な200ml採血の減少(1単位製剤の製造抑制)に結びつくことが示唆された。学校献血には、献血動機付けとして意義があることが改めて認識された。学校献血を一層推進するために、学校と生徒両者への献血の啓発が必要と考えられた。
ガイドライン等の開発
200ml採血基準の体重(男性45kg以上、女性40kg以上)は、低すぎると考えられた。この体重は、男性と女性とも国民平均体重の約12歳に相当する体重である。低体重者からの採血では、血管迷走神経反応発生率が高いことが知られている。そこで、200ml採血基準の体重を+5kg(男性50kg以上、女性45kg以上)に設定した場合を検討した。男性の50kg未満、女性の45kg未満の献血者から製造された1単位製剤は、赤血球濃厚液の約15%に過ぎず、この採血基準は導入可能な採血基準と考えられた。
その他行政的観点からの成果
平成26年10月6日に開かれた平成26年度第1回薬事・食品衛生審議会血液事業部会献血推進調査会で、本研究の内容が説明された。この調査会では、以前より200ml献血の問題が取り上げられ様々な議論がなされてきたが、一定の結論を至ることが困難であった。今回の発表によって、1単位製剤の供給過剰、200ml採血基準の問題、学校献血が抱える問題への理解が深まった。発表内容は、献血推進に係る新たな中期目標の設定と平成27年度献血推進計画に反映された。
その他のインパクト
該当する行為は行っていない。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
室井一男, 浅井隆善, 竹下明裕, 他
200ml献血と採血基準
日本輸血細胞治療学会誌 , 61 (1) , 19-23  (2015)
原著論文2
岩尾 憲明, 梶原 道子, 室井 一男
1単位赤血球液に係わる考察 アンケート調査を踏まえて
日本輸血細胞治療学会誌 , 62 (6) , 745-750  (2016)
原著論文3
竹下 明裕, 古牧 宏啓, 室井 一男, 他
高校生の献血意識に関する調査
日本輸血細胞治療学会誌 , 62 (6) , 711-717  (2016)
原著論文4
保坂侑里,室井一男,竹下明裕,他
高校生献血の契機に関する意識調査(第2報) 高校生にとって効果的な献血推進方法とは
日本輸血細胞治療学会誌 , 64 (4) , 608-613  (2018)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,205,000円
(2)補助金確定額
1,205,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 669,603円
人件費・謝金 75,190円
旅費 69,720円
その他 390,504円
間接経費 0円
合計 1,205,017円

備考

備考
預金利息17円が発生しました。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-