違法ドラッグ等の薬物依存のトレンドを踏まえた病態の解明と診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201427015A
報告書区分
総括
研究課題名
違法ドラッグ等の薬物依存のトレンドを踏まえた病態の解明と診断・治療法の開発
課題番号
H25-医薬-一般-020
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(星薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和隆(公益財団法人東京都医学総合研究所・精神行動医学研究分野)
  • 山田 清文(名古屋大学・医学部附属病院)
  • 新田 淳美(富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)・薬物治療学研究室)
  • 森 友久(星薬科大学 薬学部 )
  • 橋本 謙二(千葉大学社会精神保健教育研究センター 病態解析研究部門)
  • 曽良 一郎(神戸大学・精神医学分野)
  • 成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、薬物乱用の多様化に伴い、様々な違法ドラッグや処方向精神薬といったゲートウェイドラッグの使用から、より強い作用の薬物を求めることになり、それが覚せい剤などの乱用に繋がっていることが指摘されている。これまでに、覚せい剤依存の作用機序に関する研究が数多く行なわれてきているが、まだまだ不明な点が多く残されている。さらに、ゲートウェイドラッグの作用機序に関する研究に至っては、殆ど行なわれていないのが現状である。一方、これらの薬物依存者の診断・治療も大きな進歩はみられていない。これらの背景から、本研究では違法ドラッグのリード化合物(MDMAやカンナビノイド等)や覚せい剤依存の病態解明、さらにはこれらの薬物依存のトレンドを踏まえた依存症の薬物療法ならびに有効で現実的な診断および認知行動療法プログラムについて検討を行う。
研究方法
本研究では、基礎および臨床の2つのグループで研究班を編成し、相互に連携して現在の薬物依存のトレンドに関する病態の解明および診断・治療法の開発を目指す。これまで班員が展開してきた覚せい剤依存に関する神経精神薬理学的研究ならびに覚せい剤による転写因子、遺伝子発現およびエピジェネティック変化などの研究を基に本研究を大きく発展させる。また、近年乱用が問題となっているメチルフェニデート、MDMAおよびカンナビノイドの行動ならびに神経精神薬理学的機序の相違について検討し、標的分子を遺伝学的に解析することにより、覚せい剤ならびに違法ドラッグの依存に関する遺伝学的脆弱性を明らかにし、診断および治療法開発のための標的分子を検討する。また、依存症専門医療機関において、薬物依存のトレンドを踏まえた上で違法ドラッグの依存症および処方薬(睡眠薬・抗不安薬)による依存症の診断を適切に行い、有効で現実的な認知行動療法プログラムを開発し、その効果判定を行い、これまでに独自に開発した再使用リスク評価尺度などを用いて基礎研究の知見を臨床応用し、診断法の改良にもつなげていく。
結果と考察
これまでに危険ドラッグによる精神症状を明らかにしつつあり、今後は、危険ドラッグ乱用者の入院時における臨床症状と予後を調査し、さらに、危険ドラッグ乱用者から生体試料を採取し、神経伝達関連分子の遺伝子多型などのバイオマーカー候補と臨床症状との関連を検討する。また、実際の治療において、既存のLIFE-miniというワークブックを使用してきたが、今後、危険ドラッグに特化したワークブックおよび補助介入ツールを開発することにより、より効果的な介入法となることを課題として、全国多施設において効果測定を行っていく。
チノン系薬物の薬理作用を評価するのに適した、薬理作用が若干異なるMDMAとメチルフェニデートの感覚効果を検討したところ、その感覚効果が薬理機序に対応して異なることを見出し、カチノン系薬物の感覚効果の相違をup to dateに評価しうる系であることを明らかにした。今後は、既存のゲートウェイドラッグだけでなく、より現在のトレンドに則した誘導体であるカチノンおよびカンナビノイド系薬物の1次評価、さらには、依存性を含めた2次評価系を構築し、社会にフィードバックする評価系の構築を進めていく。
シグナル分子としてRasGRP2を同定した。また、覚せい剤連続投与により脳内で発現増加するShati/Nat8lが、ドパミンD1受容体を介したPKA/CREBシグナル経路によって発現制御されていることを明らかにした。さらに、覚せい剤の離脱症状に対する治療戦略として、TrkB拮抗薬の側坐核への微量投与により、うつ症状および逆耐性が改善されることを見出した。
結論
薬物依存に関する病態の解明と診断・治療法を見出す為に、臨床、動物を用いた基礎研究ならびに分子薬理学を駆使した包括的な研究が順調に進んでいる。今後は、これらの研究をさらに発展させ、また、多岐に渡る研究を集約することにより、トレンドを踏まえて治療法の開発について研究を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201427015Z