乱用薬物の鑑別法に関する研究

文献情報

文献番号
201427014A
報告書区分
総括
研究課題名
乱用薬物の鑑別法に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 緒方 潤(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 河野 徳昭(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,法規制薬物の中で,麻薬・向精神薬取締法及びあへん法など関連4法で厳しく規制される薬物及び植物,さらに今後これらの法律により規制される可能性の高い薬物及び植物について,迅速かつ効果的な分析と鑑別を目的として,以下の研究を行った.
研究方法
法規制薬物の分析に関しては,法規制薬物及びその構造類似化合物として,PCP類,フェンタニル類,ケタミン類及びMDMA類を対象として,TLC分析を行い,Rf値及び呈色試薬による発色を確認した.さらに,5種類の法規制薬物(フェンタニル,ケタミン,PCP等)それぞれを検出対象薬物とした簡易薬物スクリーニングキットを用いて法規制薬物及び未規制薬物を対象として検出法を評価した.
法規制薬物の生体試料分析に関しては,危険ドラッグが関与すると考えられている死亡事例を分析した.また,麻薬に指定された合成カンナビノイド7化合物について,固相分散抽出法-GC/MS法により,血清中の検出法の検討を行った.さらに,指定薬物10物質についてLC-TOF-MSによる尿からのスクリーニング分析を検討した.その他に,法規制薬物の鑑別法におけるコンピュータシミュレーションの妥当性について検証することを目的し,ホモロジーモデリングにより立体構造を構築したカンナビノイドCB1受容体と様々なCB1リガンド(合成カンナビノイドおよびΔ9-THC,計69種類)のドッキングシミュレーションを行った.
植物関係では,前年度より行っているLAMP法を用いた法規制植物由来DNAの目視判定法の精度向上を目指し,詳細な検討を行った. また,大麻の産地識別法を目的として,マイクロサテライトマーカー17種を用い,大麻32種の遺伝子型判定を行った.さらに,ケシ属のオリパビンの生合成に関与すると推定される酵素遺伝子の取得を試み,特異的プライマーを設計した.
結果と考察
法規制薬物の分析に関しては,TLC分析により各化合物群内においては概ね良好に分離した.また,各化合物群により,特徴的な呈色がみられる事例が示された.従って,両分析は,法規制薬物等を識別する際の簡易且つ迅速な予試験法として有用であることが示唆された.また,簡易薬物スクリーニングキットの検討結果としては,各検出キットにおいて,例外はあるものの,各対象薬物の一置換体が概ね陽性であった.また,危険ドラッグ製品自体についても対象薬物の検出は可能であった.今回検討を行ったキットでは,法規制薬物及び未規制薬物を区別することは困難であった.しかし,新たな流通が危惧されるフェンタニル,ケタミン,PCP等の構造類似体の簡易検出法の一つとして有用であると考えられた.生体試料分析の結果,4つの死亡事例のうち,1事例においては1種類の合成カンナビノイド及びその代謝物5化合物が検出され,残りの3事例からは,薬理作用が異なる複数の危険ドラッグ成分が同一試料から検出された.特に2事例からは,それぞれ11種類の化合物(及び代謝物)が検出され,乱用者の危険な使用実態が明らかになった.また,固相分散抽出法-GC/MS法を検討した結果,本法は簡便かつ迅速な抽出法であり,ほぼ閉鎖系で抽出を行うため,実験者への感染を回避し易い安全な前処理法であった.従って,合成カンナビノイドの血中未変化体の確認試験法として有用であることが示唆された.さらに,LC-TOF-MSによる尿試料分析の結果,正確な保持時間情報が無くても2.5~50 ng/mLの濃度(尿中)まで検出できた.よって,尿中の指定薬物を幅広くスクリーニングできる鑑定法としての可能性が示唆された.その他に,CB1受容体とCB1リガンドのドッキングシミュレーションの結果,これらのリガンドはCB1リガンド結合領域中に存在する広い疎水性空間において疎水性相互作用することで安定化していることが示唆された.さらに,それぞれのリガンドの受容体に対する結合エネルギーと活性の相関関係評価を行った.
植物関係では,LAMP法は,試料中5%程度の植物片の含有,もしくは,DNA 0.5 ng程度で分析が可能であり,判定指示薬としてHNBの他にBTも使用可能であることから,両指示薬の併用は誤判定回避に繋がると考えられた.大麻マイクロサテライトマーカー解析では,マーカーにより得られた遺伝子型を基に系統樹を作成し,系統間比較を行った結果,系統識別に有効であることが示唆された.オリパビン合成関連酵素遺伝子16種から,特異的プライマーを設計し,遺伝子鑑別を行ったところ,3遺伝子でオニゲシ特異的に増幅産物が得られた.
結論
以上,本研究は,厚生労働省の法規制薬物行政と取り締まりに直接的に貢献する内容であり,ひいては,国民の健康・危機リスクを軽減させるものと考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201427014Z