製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究ー情報提供活動を中心に

文献情報

文献番号
201427012A
報告書区分
総括
研究課題名
製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究ー情報提供活動を中心に
課題番号
H25-医薬-一般-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島理恵(日本大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新薬を開発した企業は、プロモーション用の資材を作成し、医療現場への浸透を図る。その際、各製品の特徴が強調され、裏付けとなる臨床試験等の試験成績が示される。しかし、その説明が正確さを欠くとしたら、医師や薬剤師は誤った認識を持ち、ひいては患者に不利益を生じさせるおそれもある。そこで本研究では、その実態を調査し、製薬企業による情報提供活動の適正化を図ることを目的とする。また、米国FDAを訪問して医療用医薬品のプロモーションの監視の詳細を入手し研究に活用する。なお、厚生労働省において設置された「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」での問題提起を受け、医療用医薬品の広告の在り方に関して、検討を行った。
研究方法
2011年から2012年までに発売された新有効成分を含有する81種類の医薬品を対象とし、製品情報概要の「特徴」、「臨床試験」における記載を審査報告書の内容と比較した。生じた疑問点について、企業に問い合わせ見解を求めた。
米国FDA、製薬企業および製薬団体のPhRMAを訪問し、担当者に対しインタビューを行った。
以下のメンバーの参加を得て医療用医薬品の広告の在り方について検討した。
早乙女芳明(東京都)
土屋 文人(日本病院薬剤師会)
藤原 康弘(国立がん研究センター)
結果と考察
対象とした医薬品のうち6成分10項目で、PMDAが記載するように指摘していた事項が記載されていない例や、審議内容を勝手に解釈し医療従事者の誤解を招くような表現とされている例などがみられた。各企業がチェック体制を整える必要があると思われるが、企業から提供される情報の正確さをどのように確保するのか、加工した情報はどのように提供し、誰が確認するのかなどのルールを更に検討する必要があると考えられる。
FDA内で、医薬品広告を規制する部門はOPDPである。現在、OPDPのスタッフは総勢70名で、16の専門分野に分かれて確認している。違反の洗い出し方法には、全資材に義務付けられる2253の提出、苦情審査、学会等のプロモーション活動のOPDP職員による監視などがあり、年間9万件にのぼる。   
FDAでは、これらの監視を、専門分野毎のレビューや現場の医療従事者からの違反疑いの報告を取り入れるなどして、効率良く行っている。現場の医療従事者からの報告を得るためには、Bad Ad Programのような教育制度が効果的であると考えられる。
医療用医薬品の広告の在り方に関して、現状の広告規制を踏まえつつ、検討を行った。臨床研究の論文を使用した広告に関する基本的な考え方としては、 広告の内容は承認を受けた範囲内とすること、論文の結果を加工して広告に使用する場合は誤解を生じさせることのないように配慮すること、査読のある雑誌に掲載されたもののみとすること、サブグループ解析は原則として利用しないこと、どの論文を引用したのかを容易に識別できるようにすること、製薬企業の関与の状況を広告に明記すること、などを提言した。
また、広告の審査、監視指導の在り方については、各製薬企業は透明性を確保した組織を設置し広告の審査を行うこと、業界団体は原則として新薬に関する広告すべての審査を行うこと、業界団体による審査の結果は適切な方法による公表を考慮すること、医療従事者等からの苦情通報窓口を新たに設置すること、行政機関は広告違反に関する情報を積極的に収集すること、医療従事者による広告監視モニター制度を新たに構築すること、などを提言した。
厚生労働省は、製薬企業、業界団体、国及び都道府県等が講ずる上記措置の実施状況について、検証すべきであり、検証の結果、問題があると判断される場合には、法改正や新たな法制度の構築も視野に入れた問題解決のための検討を行う必要があると考える。
結論
製品情報概要を通した情報提供の実態及び米国FDAにおけるプロモーション活動の監視方法についての調査研究結果も踏まえ、医療用医薬品の広告の在り方に関し提言を行った。医療用医薬品の広告については、今後業界あるいは各企業における取組を見ていくことになるが、併せて医療従事者による広告監視モニター制度をどのように構築していけばよいかも検討する必要があろう。そのためにも、引き続き製薬企業による情報提供の実態の把握に努めることも重要である。
広告については、厚生労働省より、広告の3要件が提示され、そのいずれも満たす場合に、広告に該当すると判断される。医薬品の広告を規制する目的は、誤ったあるいは不正確な情報提供が行われないことを担保することにある。現在では医療用医薬品の情報提供は様々な手段で行われており、中には広告の要素を満たさないものもある。仮に法整備を検討するならば、広告に限定することなく情報提供のあり方として法整備を進めるべきではないかと考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-02-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201427012B
報告書区分
総合
研究課題名
製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究ー情報提供活動を中心に
課題番号
H25-医薬-一般-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島理恵(日本大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新薬を開発した企業は、プロモーション用の資材を作成し、医療現場への浸透を図る。その際、各製品の特徴が強調され、裏付けとなる臨床試験等の試験成績が示される。しかし、その説明が正確さを欠くとしたら、医師や薬剤師は誤った認識を持ち、ひいては患者に不利益を生じさせるおそれもある。そこで本研究では、その実態を調査し、製薬企業による情報提供活動の適正化を図ることを目的とする。また、米国FDAを訪問して医療用医薬品のプロモーションの監視の詳細を入手し研究に活用する。なお、厚生労働省において設置された「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」での問題提起を受け、医療用医薬品の広告の在り方に関して、検討を行った。
研究方法
2011年から2012年までに発売された新有効成分を含有する81種類の医薬品を対象とし、製品情報概要の「特徴」、「臨床試験」における記載を審査報告書の内容と比較した。生じた疑問点について、企業に問い合わせ見解を求めた。
米国FDA、製薬企業および製薬団体のPhRMAを訪問し、担当者に対しインタビューを行った。
以下のメンバーの参加を得て医療用医薬品の広告の在り方について検討した。
早乙女芳明(東京都)
土屋 文人(日本病院薬剤師会)
藤原 康弘(国立がん研究センター)
結果と考察
対象とした医薬品のうち5成分8項目で、PMDAが記載するように指摘していた事項が記載されていない例や、審議内容を勝手に解釈し医療従事者の誤解を招くような表現とされている例などがみられた。各企業がチェック体制を整える必要があると思われるが、企業から提供される情報の正確さをどのように確保するのか、加工した情報はどのように提供し、誰が確認するのかなどのルールを更に検討する必要があると考えられる。
FDA内で、医薬品広告を規制する部門はOPDPである。現在、OPDPのスタッフは総勢70名で、16の専門分野に分かれて確認している。違反の洗い出し方法には、全資材に義務付けられる2253の提出、苦情審査、学会等のプロモーション活動のOPDP職員による監視などがあり、年間9万件にのぼる。   
FDAでは、これらの監視を、専門分野毎のレビューや現場の医療従事者からの違反疑いの報告を取り入れるなどして、効率良く行っている。現場の医療従事者からの報告を得るためには、Bad Ad Programのような教育制度が効果的であると考えられる。
医療用医薬品の広告の在り方に関して、現状の広告規制を踏まえつつ、検討を行った。臨床研究の論文を使用した広告に関する基本的な考え方としては、 広告の内容は承認を受けた範囲内とすること、論文の結果を加工して広告に使用する場合は誤解を生じさせることのないように配慮すること、査読のある雑誌に掲載されたもののみとすること、サブグループ解析は原則として利用しないこと、どの論文を引用したのかを容易に識別できるようにすること、製薬企業の関与の状況を広告に明記すること、などを提言した。
また、広告の審査、監視指導の在り方については、各製薬企業は透明性を確保した組織を設置し広告の審査を行うこと、業界団体は原則として新薬に関する広告すべての審査を行うこと、業界団体による審査の結果は適切な方法による公表を考慮すること、医療従事者等からの苦情通報窓口を新たに設置すること、行政機関は広告違反に関する情報を積極的に収集すること、医療従事者による広告監視モニター制度を新たに構築すること、などを提言した。
厚生労働省は、製薬企業、業界団体、国及び都道府県等が講ずる上記措置の実施状況について、検証すべきであり、検証の結果、問題があると判断される場合には、法改正や新たな法制度の構築も視野に入れた問題解決のための検討を行う必要があると考える。
結論
製品情報概要を通した情報提供の実態及び米国FDAにおけるプロモーション活動の監視方法についての調査研究結果も踏まえ、医療用医薬品の広告の在り方に関し提言を行った。医療用医薬品の広告については、今後業界あるいは各企業における取組を見ていくことになるが、併せて医療従事者による広告監視モニター制度をどのように構築していけばよいかも検討する必要があろう。そのためにも、引き続き製薬企業による情報提供の実態の把握に努めることも重要である。
広告については、厚生労働省より、広告の3要件が提示され、そのいずれも満たす場合に、広告に該当すると判断される。医薬品の広告を規制する目的は、誤ったあるいは不正確な情報提供が行われないことを担保することにある。現在では医療用医薬品の情報提供は様々な手段で行われており、中には広告の要素を満たさないものもある。仮に法整備を検討するならば、広告に限定することなく情報提供のあり方として法整備を進めるべきではないかと考える。

公開日・更新日

公開日
2016-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-02-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療用医薬品の広告の在り方の見直しに関する提言については、中間とりまとめを厚生労働省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」に報告し、同検討会の報告書にも取り上げられた。なお、それを踏まえた改善への取り組みが製薬企業団体ですでに進められている。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
医療用医薬品の広告の在り方の見直しに関する提言については、中間とりまとめを厚生労働省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」に報告し、同検討会の報告書にも取り上げられた。また、平成28年度には、本提言を受けて厚生労働省では、「広告監視モニター制度」を発足させている。
その他のインパクト
上記検討会の報告書を踏まえた改善への取り組みが製薬企業団体ですでに進められている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小室雅人、小野寺祐加、白神誠他
製薬企業の作成するプロモーション資材における問題点
医薬品情報学 , 15 (3) , 111-117  (2013)

公開日・更新日

公開日
2018-02-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,660,000円
(2)補助金確定額
1,660,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 171,866円
人件費・謝金 632,648円
旅費 552,888円
その他 302,688円
間接経費 0円
合計 1,660,090円

備考

備考
銀行利息によるもの

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-