医療機器の登録認証機関の国際整合に向けた課題の可視化に関する研究

文献情報

文献番号
201427011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器の登録認証機関の国際整合に向けた課題の可視化に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 浩治(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 裕一(埼玉医科大学 保健医療学部医用生体工学科)
  • 山崎 直也(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門 )
  • 西山 彩子(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度管理医療機器の審査を登録認証機関に移行するに際し、登録認証機関の審査の力量の確保、維持が不可欠である。本研究では、国内の登録認証機関の現状調査を踏まえ、国内の登録認証機関の審査範囲の拡大における課題の抽出を行うこと、及び海外認証機関において実施されている認証機関の審査の力量の確保に関する取り組みを踏まえ、改正後に求められる登録認証機関の力量の確保、維持に向けた提言を目的としている。
研究方法
本研究では、国内登録認証機関12社にメールで依頼し、アンケート調査を実施した。アンケート調査は、審査員の力量の評価方法、クラスⅢ製品の認証移行に伴う対応状況、IMDRF文書への対応状況、時事問題について選択式または自由記述で行った。
国内の登録認証機関の現状を把握するため、今年度は2施設に対して訪問調査を実施し、各審査機関における審査員の確保、育成の方針について、審査員の育成における重要な事項、基本的な考え方など、審査を実際にするにあたって必要なスキルについて意見交換した。
ここ数年、海外では医療機器の規制の変更が相次いで行われてきたことを踏まえ、グローバルに展開している企業がどのように対応しているか、どのように規制の変化をとらえているかを調査するため、グローバルカンパニーへの訪問調査を実施した。
結果と考察
国内の登録認証機関を対象としたアンケート調査においては、外資系の認証機関を中心に、CEマークへの対応が必要な機関はISOへの対応状況が比較的進んでいるように見受けられた。審査員の獲得については、どこの認証機関においても苦慮しているようであり、ベテランと経験が浅い担当の2極化がおこっていることが推察された。教育については、OJTが重視されているようであり、審査員の育成には実際の審査によって行われていることが明らかとなった。
国内の登録認証機関の調査については、今年度は公益財団法人医療機器センター、および一般財団法人日本品質保証機構の調査を行った。訪問に際しては、人材の育成、確保に関する取組、および、認証審査における課題について意見交換を行った。人材育成においては、法人ごとの悩みはあるものの、認証審査のスキルを身に着けるには、審査の経験を積むことが不可欠であるが、審査の経験を持つ人材の確保は難しく、人材確保と育成に苦労をしているようであった。
欧州ではQMSを中心に規制強化が図られ、アジア諸国でも自国の審査制度の強化が図られるなど、近年の医療機器審査に関する変化は大きく、対応が必要な企業の負担も大きくなっていることが想定された。したがって、グローバルカンパニーを訪問し、海外の規制への対応について、具体的にどのように行っているのか、および、国ごとの審査制度、認証機関の水準の違いについて意見交換した。基本的には会社としての一つの方針のもとに進めており、その方針に沿って品質確保をすると各国の規制のハードルを満たしているというのが現状であるため、国ごとの対応を特段とらなくても対応可能というのが基本的な考え方とのことであった。
結論
今年度は登録認証機関の全体像をより詳細に把握すること、及び海外における規制の変化を踏まえ、我が国の医療機器の認証制度について提言することを目的に研究を進めた。今年度の研究により得られた情報を踏まえた課題は、①登録認証機関で実施する審査の限界を知ること、②審査員の確保と維持のためには、良い審査員の供給が必要であると知ることである。
登録認証機関では、絶対的な情報量がPMDAに劣るが、それを踏まえて対策を考える必要がある。たとえば、基本要件の適合の有無や、類似製品との同等性比較による単純化した審査ではなく、前例がない医療機器等で行われる原理原則に沿った審査を行うことも一つの方法と思われる。そのためには、審査の力量を高く保つことが必要であることは言うまでもない。
 良質な審査員の育成には、審査の考え方を学ぶことだけでなく、審査経験を積むことが重要であり、その審査経験の時にいかに審査の基本的な考え方を身に着けられるかが重要である。その審査の基本的な考え方こそがレギュラトリーサイエンスであるが、レギュラトリーサイエンスについて議論できる場所は、我が国にほとんどないのが現実である。特に医療機器となるとその数は皆無に等しくなる。したがって、審査員の力量の確保にあたっては、まず審査員の裾野を広げていくことが重要であり、そのためには、レギュラトリーサイエンス教育の体制整備が不可欠であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201427011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機器の登録認証機関の国際整合に向けた課題の可視化に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 浩治(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 裕一(埼玉医科大学 保健医療学部医用生体工学科)
  • 山崎 直也(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門)
  • 西山 彩子(東北大学 病院臨床研究推進センター開発推進部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成26年11月25日に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が施行された。その改正では、登録認証機関において審査を行う品目の範囲が管理医療機器(クラスⅡ)から高度管理医療機器(クラスⅢ)に拡大された。
高度管理医療機器は管理医療機器に比べリスクが高く、その審査においてより厳密さが要求されると、審査機関の力量が重要であるため、登録認証機関の審査の力量の確保・維持、審査員の力量の確保・維持が求められてくる。本研究においては、国内の登録認証機関の現状調査、および海外第三者認証機関との比較を行い、国内の登録認証機関の審査の力量を確認すること、さらには国際的な動向を踏まえ、改正後に求められる登録認証機関の力量の確保、維持に向けた提言を目的としている。
研究方法
国内の登録認証機関6機関を訪問し、審査員の人材確保、育成体制について、認証審査の課題等について意見交換した。海外の状況を確認するため、欧州の認証機関2機関(SGS, BSI)への訪問、および豪州をはじめとする海外規制当局への情報収集を行った。この調査においては、各審査機関における審査員の確保、育成の方針について、審査員の育成における重要な事項、基本的な考え方など、審査を実際にするにあたって必要なスキルについて意見交換した。加えて、欧州で発生したブレストインプラントの品質不良の課題に対する規制当局の意見、反響等について調査した。
 海外との協調を図るためにはISO準拠の認証機関の力量確保、および人材確保が必要となってくるため、国内の登録認証機関を対象に国際基準案への対応状況について調査を行った。
 ここ数年、海外では医療機器の規制の変更が相次いで行われてきたことを踏まえ、グローバルに展開している企業がどのように対応しているか、どのように規制の変化をとらえているかを調査するため、グローバルカンパニーへの訪問調査を実施した。
結果と考察
2年の研究期間内に6施設の訪問調査を行ない、調査結果に示すように様々な側面から登録認証機関の現状を知ることができた。調査項目によっては各施設で対応や考え方が異なるもの、国外資本と国内資本とで対応や考え方が異なるもの、全ての施設において対応や考え方が一致するもの等、今後の登録認証機関のあるべき姿を考えていく上で大変参考となる情報を得ることができた。現状では、クラスⅡ医療機器の認証業務には対応できているものの、今後の規制のかかり方によってはリソース・教育システム・情報共有などにおいて、リスクの高い医療機器の認証業務を行うにあたっての準備に、認証機関によっては相当程度時間をかける必要があると考えられる。民間企業において、リソース・教育システムを充実させることは収益にも直結する話なので容易ではなく、情報共有の面からも機器の同等性等を判断するにあたってPMDAや厚生労働省との情報共有を容易に行える環境は必要不可欠となってきている。
本研究の結果を踏まえ、高度管理医療機器の認証移行にあたり、医療機器のよりよい規制を確立させるために、以下の3点を提言する。
①登録認証機関及び製品認証に携わる審査員の力量確保と維持
②申請者の申し出に頼らない資料確認体制の整備
③PMDAとの意見交換が容易にできる体制の構築
結論
登録認証機関の審査は、審査員の力量以前に、PMDAとは有している情報の絶対量に違いがあることを認識し、対応を考えることが必要である。現状の制度では同等性の範囲を確認する資料は申請企業が自ら適切な資料を提示することが前提になるが、その提示が難しい場合は試験成績から評価するなど厳しくならざるを得ない。同時に、同等性によらない審査は、審査員の力量が審査の質を左右することから、審査員の力量を継続的に高めていくことが重要である。そのためには、PMDAの持つ情報量、審査の経験、原理原則に沿った審査の考え方を共有することは、審査の質の向上に寄与すると思われることから、登録認証機関との人材交流、勉強会等による交流の機会をつくることが必要と思われる。
クラスⅢのようなリスクの高い医療機器も認証移行が行われる昨今において、我が国で使用される医療機器の有効性及び安全性を確保するためには、PMDAと登録認証機関が協力して、医療機器審査の質を確保していくことが不可欠と考える。加えて、医療機器を申請する企業が自らの手間を惜しむことだけに終始することなく、必要な資料を速やかに準備する体制の整備も欠かせない。特に自己管理の範囲が拡大された状況においては、医療機器の企業の質の向上がないと、医療機器の有効性、安全性及び品質は十分に確保されないことから、審査員の力量の確保に加え、医療機器企業の力量の確保も同時に確保していくことを忘れてはならない。

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201427011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療機器の規制制度の研究は極めて少なく、学術的な希少性は高い。特に第三者認証機関による認証制度については、欧州で発生したブレストインプラントによる健康被害とその原因究明の経過を含め、世界的に関心が高い事象であると思われる。本研究においては、認証機関の力量確保について調査する独創性の高いものであり、得られた成果は大変重要な情報として、今後の規制に生かされていくべきものと考える。
臨床的観点からの成果
本研究は医療機器の認証機関の力量確保に関する研究であるが、今回研究するに至った経緯は高度管理医療機器への認証範囲の拡大が原因である。高度管理医療機器は、インプラントなど侵襲性が高いものを含み、その有効性、安全性、品質の確保は臨床現場において、欠かすことのできないものである。本研究において必要な審査体制と力量維持について提言することにより、より早く、より良いものを臨床現場に提供することが促進されると確信する。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は新たなガイドラインの策定につなげるためのものではないが、認証機関の力量の確保、審査員の力量の確保は、認証制度を維持する厚生労働行政においてきわめて重要な問題である。海外の現状、国内の現状を調査し、提言する本研究の成果により、我が国の認証機関の力量維持、向上に関する体制整備に繋がることが期待できる。
その他行政的観点からの成果
本研究により登録認証機関による認証審査における課題も合わせて抽出されたことを踏まえ、力量維持・確保に関する提言のみならず、認証機関における同等性評価の課題についても提言することができた。原材料の同等性の確認方法等、実際の運用における課題については、今後、継続的にPMDAと登録認証機関、厚生労働省が議論することにより、適切な安全性、有効性、品質の確保がなされることを期待する。
その他のインパクト
この研究期間中に医療機器に関する規制の変更が、いくつかの国で実施された。世界的には規制強化に向かう中で、我が国の規制は自己担保範囲の拡大というように、一見すると規制緩和ともとられかねない方向に進んでいる。本研究報告書の中で、医療機器の製造販売業者が担保すべき範囲に何も変化がないことを提言したが、この点について適切な理解がないと我が国の医療機器産業において脆弱な状況になることから、適切な対応が必要である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427011Z