患者及び医療関係者との医薬品等安全対策情報のリスクコミュニケーションに関する研究

文献情報

文献番号
201427001A
報告書区分
総括
研究課題名
患者及び医療関係者との医薬品等安全対策情報のリスクコミュニケーションに関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院薬剤部)
  • 山本 美智子(昭和薬科大学医療薬学教育研究センター)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部)
  • 小橋 元(放射線医学総合研究所企画部)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 田倉 智之(大阪大学医学部 未来医療センター)
  • 高橋 英孝(東海大学医学部)
  • 赤沢 学(明治薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医薬品・医療機器(以下医薬品とする)の安全対策情報の「患者・消費者」および「医療関係者」に対するリスクコミュニケーション(以下リスコミとする)方策を検討するものである。近年、医薬品においては、患者との協力関係のもとでの処方と使用のプロセスを重視する「コンコーダンス」モデル(“患者指導からパートナーシップへ”)が注目されている。その医療における選択の「共有決定(shared decision making)」を重視する流れでは、医薬品の有効性と安全性について、患者と医療専門職の双方向性のリスコミが重要な役割を持つ。平成24年4月には、医薬品安全性監視計画に加えて、医薬品のリスクの低減を図るためのリスク最小化計画を含めた医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)を策定するための指針「医薬品リスク管理計画指針について」及び具体的な計画書の様式、提出などの取り扱い「医薬品リスク管理計画の策定について」がとりまとめられ、「添付文書」とともに「患者向医薬品ガイド」 が「通常のリスク最小化活動」とされた。医薬品のベネフィットとリスクとのバランスについては、「患者」に対して、科学的不確実性を考慮した十分なリスコミが重要である。したがって、リスク最小化活動としての「患者向医薬品ガイド」のさらなる活用が求められており、その「ガイド作成要領」も時代に即した、より安全性を重視する、患者中心(patient-centered)の意思決定を支援するものに改定すべきである。
研究方法
本年度は、エビデンスに基づく「患者向医薬品ガイド」のあり方について、作業部会および班会議において検討を重ねた。また、多様な患者向医薬品ガイド改定暫定版を準備して、複数のフィールドにおいてユーザーテストを行った。その結果を踏まえて改訂を繰り返し、患者向医薬品ガイド(改定版)案を整理した。さらに、患者向医薬品ガイド作成要領(改定版)案も策定した。
結果と考察
本年度は、エビデンスに基づく「患者向医薬品ガイド」のあり方について、ユーザーテストの結果をもとに検討を重ね、同ガイド作成要領(改訂版)を整理した。その骨子は以下の通りである。
1)患者が自ら必要時に利用することを第一の目的とする資材とする。
2)患者(ユーザー)の視点を重視…a)単なる「添付文書」の抜粋とはしない、b)患者(ユーザー)に必要な情報(“ほしいもの”)を優先し前方に記載、c) 目次をつけてナビゲーションを改善(EUのPackage Leaflet (PL)を参考)、d) 単色刷りから2色刷りへ(特に重要な部分は赤字)、e) 吸入剤などの使用方法については動画も推奨、f) 重大な副作用のうち特に緊急対応が必要な副作用を分けて記載、g) 副作用の発現頻度の情報、重大な副作用以外の副作用も記載、
3)優先順位の高いものを前方に、低いものを後方に記載又は簡略化…a) リスク回避のため使用上の注意(警告、重要な基本的注意)で患者への説明及びリスク管理計画で患者の理解及び協力を必要としている事項を、「2. この薬について得に重要なこと」として記載、b) 重大な副作用の自覚症状の重複記載を整理、c) 「患者向け医薬品ガイドについて」は最後に移動
さらに、患者向医薬品ガイド(改訂版)作成要領案も整理した。
結論
研究班では、欧米の先行する取り組みの視察・国内調査を通して、また、医師、薬剤師などの医療関係者に加え、患者団体、メディアなどの非医療者の協力も得た活動を通して、「患者向医薬品ガイド」の望ましいあり方を検討してきた。その上で、ユーザーテストをもとに、「科学的根拠に基づくコミュニケーションデザイン」を考慮したデザイン・レイアウトおよび内容の議論を重ね、最終的に同「ガイド(改定版)」及び「ガイド作成要領(改定案)」を整理した。その上で、提言を纏めた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201427001B
報告書区分
総合
研究課題名
患者及び医療関係者との医薬品等安全対策情報のリスクコミュニケーションに関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院薬剤部)
  • 山本 美智子(昭和薬科大学)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部)
  • 小橋  元((独)放射線医学総合研究所企画部)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 田倉 智之(大阪大学医学部 未来医療センター)
  • 高橋 英孝(東海大学医学部)
  • 赤沢 学(明治薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は「患者」および「医療関係者」との医薬品安全対策情報のリスクコミュニケーション(以下リスコミ)に関する諸課題に取り組むものである。「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」最終提言(平成22年4月)においても指摘された喫緊の課題である。近年、医薬品においては、患者との協力関係のもとでの処方と使用のプロセスを重視する「コンコーダンス」モデル(“患者指導からパートナーシップへ”)が注目されている。その医療における選択の「共有決定(shared decision making)」を重視する流れでは、医薬品の有効性と安全性について、患者と医療専門職の双方向性のリスコミが重要な役割を持つ。平成24年4月には、医薬品安全性監視計画に加えて、医薬品のリスクの低減を図るためのリスク最小化計画を含めた医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)を策定するための指針「医薬品リスク管理計画指針について」及び具体的な計画書の様式、提出などの取り扱い「医薬品リスク管理計画の策定について」がとりまとめられ、「添付文書」とともに「患者向医薬品ガイド」 が「通常のリスク最小化活動」とされた。医薬品のベネフィットとリスクとのバランスについては、「患者」に対して、科学的不確実性を考慮した十分なリスコミが重要である。したがって、リスク最小化活動としての「患者向医薬品ガイド」のさらなる活用が求められており、その「ガイド作成要領」も時代に即した、より安全性を重視する、患者中心(patient-centered)の意思決定を支援するものに改定すべきである。
研究方法
本課題の前身は、厚生労働科学研究「国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討」(平成21-23年度、研究代表者・杉森裕樹)であり、本研究はその上に立脚する。本研究は、医薬品安全対策情報のリスコミ方策に関する検討を次の3年計画で行った。
24年度:情報収集、エビデンスに基づくリスコミ方策の検討
25年度:調査分析、患者参加のあり方検討
26年度:ベストプラクティス(種類・組合せ)の提言
エビデンスに基づく「患者向医薬品ガイド」のあり方について、作業部会および班会議において検討を重ねた。また、多様な患者向医薬品ガイド改定暫定版を準備して、複数のフィールドにおいてユーザーテストを行った。その結果を踏まえて改訂を繰り返し、患者向医薬品ガイド(改定版)案を整理した。さらに、患者向医薬品ガイド作成要領(改定版)案も策定した。
結果と考察
エビデンスに基づく「患者向医薬品ガイド」のあり方について、ユーザーテストの結果をもとに検討を重ね、同ガイドおよび同作成要領(改訂版)を整理した。その骨子は以下の通りである。
1)患者が自ら必要時に利用することを第一の目的とする資材とする。
2)患者(ユーザー)の視点を重視…a)単なる「添付文書」の抜粋とはしない、b)患者(ユーザー)に必要な情報(“ほしいもの”)を優先し前方に記載、c) 目次をつけてナビゲーションを改善(EUのPackage Leaflet (PL)を参考)、d) 単色刷りから2色刷りへ(特に重要な部分は赤字)、e) 吸入剤などの使用方法については動画も推奨、f) 重大な副作用のうち特に緊急対応が必要な副作用を分けて記載、g) 副作用の発現頻度の情報、重大な副作用以外の副作用も記載、
3)優先順位の高いものを前方に、低いものを後方に記載又は簡略化…a) リスク回避のため使用上の注意(警告、重要な基本的注意)で患者への説明及びリスク管理計画で患者の理解及び協力を必要としている事項を、「2. この薬について得に重要なこと」として記載、b) 重大な副作用の自覚症状の重複記載を整理、c) 「患者向け医薬品ガイドについて」は最後に移動
結論
研究班では、欧米の先行する取り組みの視察・国内調査を通して、また、医師、薬剤師などの医療関係者に加え、患者団体、メディアなどの非医療者の協力も得た活動を通して、「患者向医薬品ガイド」の望ましいあり方を検討してきた。その上で、ユーザーテストをもとに、「科学的根拠に基づくコミュニケーションデザイン」を考慮したデザイン・レイアウトおよび内容の議論を重ね、最終的に同「ガイド(改定版)」及び「ガイド作成要領(改定案)」を整理した。その上で、提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2015-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201427001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究班では、欧米の先行する取り組みの視察・国内調査を通して、また、医師、薬剤師などの医療関係者に加え、患者団体、メディアなどの非医療者の協力も得た活動を通して、「患者向医薬品ガイド」の望ましいあり方を検討してきた。その上で、ユーザーテストをもとに、「科学的根拠に基づくコミュニケーションデザイン」を考慮したデザイン・レイアウトおよび内容の議論を重ね、最終的に「患者向医薬品ガイドのあり方についての提言」を策定した。また、患者の読解力、すなわちヘルスリテラシーを評価するツールの検討も行った。
臨床的観点からの成果
平成24年4月には、医薬品安全性監視計画に加えて、医薬品のリスクの低減を図るためのリスク最小化計画を含めた医薬品リスク管理計画(RMP)が整理され、「添付文書」とともに「患者向医薬品ガイド」が「通常のリスク最小化活動」となった。リスク最小化活動としての「患者向医薬品ガイド」の活用が求められている。本提言の内容が端緒となり、社会における医薬品への信頼性が向上し、より安全で満足度の高い医療システムの実現が期待される。
ガイドライン等の開発
研究班の成果物として「患者向医薬品ガイドのあり方についての提言」を策定した。
その他行政的観点からの成果
「患者向医薬品ガイドのあり方についての提言」では、「患者向医薬品ガイド」改定案(サンプルとしてジャヌビア錠25 ㎎、50 ㎎、100 ㎎)、および「患者向医薬品ガイド作成要領」改定案を具体的に提示した。これを参考として、厚生労働省において新しい「患者向医薬品ガイドの作成要領」の改定がなされる方向で進められている。
その他のインパクト
日本薬学会第131年会(熊本大学・2014年3月29日15:00~17:00)にて、一般シンポジウム S36「リスク最小化に向けた患者への医薬品情報を考える―患者向医薬品ガイドの検討―(オーガナイザー:山本美智子,杉森裕樹)にて討論を行った。(シンポジスト:山本美智子、磯崎正季子、杉森裕樹、折井孝男、浅田和広、佐藤嗣道)

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山本美智子, 杉森裕樹
リスク最小化に向けた患者への医薬品情報を考える—患者向医薬品ガイドの検討—
薬学雑誌. 乙号 , 135 (2) , 269-270  (2015)
原著論文2
小田嶋剛, 杉森裕樹, 高梨美乃子、他
検査医学/輸血医療における危機管理とリスクコミュニケーション (特集 医療機器のリスク管理とリスクコミュニケーション)
医療機器学 , 84 (1) , 46-50  (2014)
原著論文3
杉森裕樹
リスクコミュニケーションとヘルスリテラシー : 医薬品の安全性対策に学ぶ (特集 医療機器のリスク管理とリスクコミュニケーション)
医療機器学 , 84 (1) , 37-45  (2014)
原著論文4
杉森裕樹
患者・公衆中心(patient and public-centered)の医療情報と保健サービス (特集 NPO健康開発科学研究会 2013フォーラム ヘルスリテラシー) -- (パネルディスカッション)
健康開発 = Health development , 18 (1) , 30-35  (2013)
原著論文5
高木彩, 堀口逸子, 杉森裕樹, 柴田清, 丸井英二
母親は携帯電話使用のリスクをどのように考えているのか : 携帯電話の電磁波の発がんリスクに関する認知
日本リスク研究学会誌 , 23 (3) , 193-199  (2013)
原著論文6
須賀万智, 小田嶋剛, 杉森裕樹, 中山健夫
ユーザーテストに基づく望ましい健診結果票のあり方
総合健診 , 40 (6) , 593-603  (2013)
原著論文7
Suka M, Nakayama T, Sugimori H. et al
The 14-item health literacy scale for Japanese adults (HLS-14).
Environ Health Prev Med , 18 (5) , 407-415  (2013)
原著論文8
山本美智子, 土肥弘久, 古川 綾
欧州(EU)における公的な患者向け医薬品情報とユーザーテスト
薬学雑誌. 乙号 , 135 (2) , 277-284  (2015)
原著論文9
佐藤嗣道
患者のニーズに合った医薬品ガイドとは?
薬学雑誌. 乙号 , 135 (2) , 297-306  (2015)
原著論文10
浅田和広
Symposium Review 情報提供者である製薬企業の立場から(新記載要領に対するアンケートより)
薬学雑誌. 乙号 , 135 (2) , 291-295  (2015)
原著論文11
折井孝男
Symposium Review 病院薬剤師の立場から患者向医薬品情報を考える
薬学雑誌. 乙号 , 135 (2) , 285-289  (2015)
原著論文12
Kogure T, Sumitani M, Sugimori H et al
Validity and reliability of the Japanese version of the Newest Vital Sign: a preliminary study.
PLoS One , 9 (4) , e94582-e94582  (2014)
原著論文13
Suka M, Odajima T, Sugimori H. et al
Relationship between health literacy, health information access, health behavior, and health status in Japanese people.
Patient Educ Couns. , 98 (5) , 660-668  (2015)
10.1016/j.pec.2015.02.013
原著論文14
Maeda E, Sugimori H, Boivin J, et al
A cross sectional study on fertility knowledge in Japan, measured with the Japanese version of Cardiff Fertility Knowledge Scale (CFKS-J).
Reprod Health. , 12 (1) , 10-  (2015)
原著論文15
Suka M, Nakayama T, Sugimori H, et al
Reading comprehension of health checkup reports and health literacy in Japanese people.
Environ Health Prev Med , 19 (4) , 295-305  (2014)
doi: 10.1007/s12199-014-0392-8

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427001Z