鶏肉及びその関連製品中の抗ウイルス剤の一斉分析法の開発

文献情報

文献番号
201426049A
報告書区分
総括
研究課題名
鶏肉及びその関連製品中の抗ウイルス剤の一斉分析法の開発
課題番号
H26-食品-若手-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 敬行(一般財団法人東京顕微鏡院 理化学検査部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、東南アジアを中心に鳥インフルエンザの流行が散発的に起こっている。鳥インフルエンザが発生した場合、一般的には周辺への伝播を阻止するために殺処分が行われるが、抗ウイルス剤が治療あるいは予防のために使われることがある。しかし、安易な薬剤の投与は耐性ウイルスの出現の原因となる。2012年に中国産の鶏肉からインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤であるアマンダジンとリバビリンが検出され、社会的にも大きな問題となったが、我が国では抗ウイルス剤の動物への使用を認めていない。この事例は作用機序の異なる薬剤を複数組み合わせることで効果の拡大を狙ったものと思われるが、これら以外の抗ウイルス剤が使用される可能性もある。そのため抗ウイルス剤を網羅的に分析できる手法の開発が望まれる。食品からの分析法としては、これまでにもいくつか報告例があるが、いずれも鶏筋肉のみを対象としており、我が国で焼き鳥などに代表される鳥の内臓部や鶏卵などは対象にしていない。そこで、本研究では代表的な10種の抗ウイルス剤について鶏肉及びその加工品からの分析法の開発を行うことにした。
研究方法
 分析法を作成するに当たり、検出事例のあるアマンタジンとリバビリンに加え、抗インフルエンザ薬として汎用されるオセルタミビル、ザナミビル、近年開発されたペラミビル、ラニナミビル、諸外国で使用実績のあるリマンダジンとアルビドール、さらに、その他の抗ウイルス剤として、ヘルペスウイルスに対するアシクロビル、尖圭コンジローマに対するイミキモドの計10種の抗ウイルス剤を分析対象とした。
 試料からの抗ウイルス剤の抽出には0.1vol%塩酸・メタノールを用い、ODSミニカラムおよび強陽イオン交換体ミニカラムを用いて精製後、LC-MS/MSを用いて定量する方法を作成した。LC-MS/MSでの定量は、ESIポジティブモードにより行った。LCカラムには親水性相互作用を有するHILICカラムを用いることにより10種類の抗ウイルス剤を分離測定することができた。
結果と考察
 鶏の筋肉及び肝臓を用いて試料から抗ウイルス剤を効率よく抽出できる溶媒系について検討を行った結果、強酸性に調整した溶媒系、すなわち0.1vol%塩酸・メタノールを用いた場合、10種の抗ウイルス剤を同時に効率よく抽出できることが分かった。LC-MS/MS用の試験溶液を調製するにあたっては、測定の妨害となる夾雑物を除く必要があり、ミニカラムによる精製条件につて検討を行った。まず、ODSミニカラムを用いて、脂質等の低極性物質を除き、次いで強陽イオン交換ミニカラムで酸性物質や中性物質を除くことで大きな精製効果を得ることができた。しかし、この中でリバビリンについては強陽イオン交換体ミニカラムに保持されなかったため、リバビリンについては別途精製条件について検討した。リバビリンは配糖体で檮構造の中にcis-ジオール基を持つため、cis-ジオール基との親和性の高いPBAミニカラムを用いることにより夾雑物との分離が可能となった。これらの結果より、精製にはODSミニカラム、強陽イオン交換体ミニカラム、PBAミニカラムを用いることとした。
 鶏の筋肉および肝臓を用いて作成した分析法により添加回収試験を行ったところ、筋肉での回収率は96.2~111.3%、標準偏差11.3%以下、肝臓での回収率は100.1~109.2%、標準偏差7.9%以下と良好な結果が得られた。しかしながら、マトリックスの影響がみられたため、定量にはマトリックス標準による補正が必要であった。なお、本法の定量下限値は0.01 µg/gである。
結論
本研究は厚生労働省で動物用医薬品として指定されていない多種類の抗ウイルス剤の一斉分析法の作成に関するものであり、厚生労働行政の中で食品衛生法違反となる事例を検証する手法の開発である。また、本分析法は地方衛生研究所等での収去検査や民間検査機関の一般依頼検査においても活用され、食品衛生法違反となるような鶏肉の排除に有効であると考える。。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201426049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,500,000円
(2)補助金確定額
2,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,476,943円
人件費・謝金 204,000円
旅費 160,490円
その他 15,000円
間接経費 0円
合計 2,856,433円

備考

備考
当初予定していたよりも、抗ウイルス剤が高額であり、精製の検討でミニカラムなどの使用が多くなったため。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-