デオキシニバレノールが呼吸器由来細胞やマウス肺に与える影響

文献情報

文献番号
201426048A
報告書区分
総括
研究課題名
デオキシニバレノールが呼吸器由来細胞やマウス肺に与える影響
課題番号
H25-食品-若手-020
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
豊留 孝仁(帯広畜産大学 動物・食品検査診断センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デオキシニバレノールはFusarium属が産生するカビ毒(マイコトキシン)の一種で、小麦類を中心とする穀類を汚染する。汚染食品の摂取によるカビ毒中毒が懸念され、これまでに盛んに研究が行われてきている。特に経口摂取を念頭に数多くの研究が行われてきたが、吸入摂取を念頭に置いた肺や肺由来細胞への影響について検討を行った研究は少ない。そこで本研究ではマウス個体への反復経気管投与処理により、デオキシニバレノールの毒性に関する検討を行った。
研究方法
異なるデオキシニバレノール量を1週間に2回、3か月経気管反復投与してマウスの体重変化、外見所見を観察し、初回投与後90日目に解剖し肺を摘出し、病理学的所見の観察を行った。また、肺における遺伝子の発現変動についてデオキシニバレノール処理の有無で比較するためにマイクロアレイを用いた解析を行った。
結果と考察
マウス個体への週2回3ヶ月にわたる経気管投与において外見上の変化は見られなかった。また、肺の病理標本を作製して観察を行ったが大きな変化は認められなかった。肺よりRNAを調製し、網羅的な遺伝子発現変動解析を行った結果、デオキシニバレノール処理により発現が2倍以上上昇した遺伝子を82遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)、0.5倍以下に低下した遺伝子を143遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)見出した。このことから、本研究で用いた反復経気管投与においては外見上デオキシニバレノールによる変化は認められないが、詳細な遺伝子発現変動解析によってデオキシニバレノールの影響を受けて多数の遺伝子が発現変動していることが明らかとなった。
結論
マウス個体への週2回3ヶ月にわたる経気管投与において外見上、また病理学的な変化は認められなかった。しかしながら、遺伝子発現の観点からは多数の遺伝子で発現変動が認められ、デオキシニバレノール処理が肺内の遺伝子発現に影響を与えていることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201426048B
報告書区分
総合
研究課題名
デオキシニバレノールが呼吸器由来細胞やマウス肺に与える影響
課題番号
H25-食品-若手-020
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
豊留 孝仁(帯広畜産大学 動物・食品検査診断センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デオキシニバレノールは小麦を中心とする穀類汚染の原因となるカビ毒(マイコトキシン)であり、食品の安全を考えるうえで非常に重要なカビ毒である。デオキシニバレノールについては主に経口摂取による毒性を念頭に研究が行われてきたが、本研究では吸入摂取を念頭に置いたマウス個体の肺や肺由来細胞への影響について検討を行った。
研究方法
本研究では肺胞由来A549細胞にデオキシニバレノール処理を行い、網羅的遺伝子発現変動解析を含めた種々の検討を行った。また、マウスにデオキシニバレノールの経気管的反復投与を行い、その影響についても種々の検討を行った。
結果と考察
本研究において検討を行った結果、肺胞由来細胞株A549細胞に対して細胞増殖阻害を引き起こしていることが明らかとなった。さらに網羅的遺伝子発現変動解析からデオキシニバレノール処理によりA549細胞で有意に発現変動がみられる16遺伝子および5ノンコーディングRNAを見出した。これらのうち、5遺伝子については定量PCR法によっても発現変動を確認した。これらの遺伝子がデオキシニバレノールによる増殖阻害につながる毒性発現に重要な役割を果たしていることが推測された。マウス個体を用いた検討では、週2回3ヶ月にわたる経気管投与において外見上および肺組織においての大きな変化は認められなかった。肺よりRNAを調製し、網羅的な遺伝子発現変動解析を行った結果、デオキシニバレノール処理により発現が2倍以上上昇した遺伝子を82遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)、0.5倍以下に低下した遺伝子を143遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)見出した。
結論
これら発現変動がみられる遺伝子はデオキシニバレノール処理と関連があり、デオキシニバレノールの肺や肺胞細胞への毒性発現に寄与していることが推測される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201426048C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肺胞由来細胞株A549細胞に対して細胞増殖阻害を引き起こしていることが明らかとなった。また、マウス個体を用いた検討では、週2回3ヶ月にわたる経気管投与において外見上および肺組織においての大きな変化は認められなかったが、網羅的な遺伝子発現変動解析により、デオキシニバレノール処理により発現が2倍以上上昇した遺伝子を82遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)、0.5倍以下に低下した遺伝子を143遺伝子(ノンコーディングRNAを含む)見出した。
臨床的観点からの成果
呼吸器細胞に対する毒性に関して今後応用可能と思われる基礎的知見が得られた。
ガイドライン等の開発
デオキシニバレノールの毒性に関する基礎的知見として参照される価値のあるデータを得ることができた。
その他行政的観点からの成果
吸入毒性に関しても今後検討を進めて知見を積み上げる必要性が示された。
その他のインパクト
日本マイコトキシン学会および日本医真菌学会の学術集会にて発表を行い、出席していた専門家らと討論を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
2016年 Journal of Toxicological Sciences
学会発表(国内学会)
4件
2014年日本医真菌学会総会・学術集会 2014年日本マイコトキシン学会学術講演会 2015年日本細菌学会総会 2016年日本細菌学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahito Toyotome, Hiroki Takahashi, Katsuhiko Kamei
MEIS3 is repressed in A549 lung epithelial cells by deoxynivalenol and the repression contributes to the deleterious effect
The Journal of Toxicological Sciences , 41 (1) , 25-31  (2016)
10.2131/jts.41.25

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201426048Z