GCIRMS及びLCIRMSを利用した農薬類の安定同位体比の高精度分析方法の確立

文献情報

文献番号
201426047A
報告書区分
総括
研究課題名
GCIRMS及びLCIRMSを利用した農薬類の安定同位体比の高精度分析方法の確立
課題番号
H25-食品-若手-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川島 洋人(公立大学法人秋田県立大学 システム科学技術学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,ガスクロマトグラフィーと安定同位体比質量分析計の融合・実用化が行われた。その結果,個別化合物に含まれる安定同位体比の測定が可能となった。しかし,農薬類を対象とした鑑識学的な応用事例は,研究代表者が行った原因不明の殺虫剤ダイアジノンの識別に利用したのみである(Kawashima and Katayama, Environmental Forensics)。
本研究では,不純物同定法に取って代わる画期的かつ革新的な新しい技術である安定同位体を用いた農薬類の識別方法の確立を目指す。安定同位体比は既に石油や石炭の原産地や生成過程等によって特徴を有すことが示されており,農薬自体の生産場所を特定する新たな方法となる可能性は非常に高いと思われる。26年度は,TCEA/IRMSを用いた農薬中の水素安定同位体比(δD)の測定及び,LC/IRMSを用いた農薬中の(δ13C)の測定を目指す。農薬の異同識別を通して,農薬のトレーサビリティを迅速かつ高精度に確保することは,国民の食の安全を保障するうえでは必須である。
研究方法
TCEA/IRMSを用いて11種類の農薬のδDの分析を行った。また,LC/IRMSを用いて5種の農薬類のδ13Cの分析を実施した。
結果と考察
TCEA/IRMSを用いて11種類の農薬のδDの高精度・高確度分析が可能になった。ただし,メモリー効果があるため,安定した分析のためには,測定は5回行うが,最初の2回はデータ棄却する必要があることがわかった。また,熱分解炉内部のグラッシーカーボンは,サンプル量で20mg程度でδDは不安定になるため,頻繁に新たなグラッシーカーボンに交換する必要があることがわかった。LC/IRMSを用いて5種の農薬類のδ13Cの高精度分析が可能になった。LC/IRMSとEA/IRMSを比較したところ,ほぼ同じ結果であったものの,一部の農薬は1~3‰程度,LC/IRMSの方が軽い値であることがわかった。原因はいくつか検討したものの不明であった。また,測定を繰り返すことで,ピークに大きなノイズが生じた。試行錯誤した結果,空冷式の冷却から,水冷式に変更し,数°C付近まで下げることで,このような大きなノイズ発生を抑えることが出来た。
結論
TCEA/IRMSを用いて11種類の農薬のδDの高精度・高確度分析が可能になった。精度の高い分析方法及び消耗品の交換時期等を決定することが出来た。また,26年度後半は,LC/IRMSを用いて水溶性の農薬を5成分構成を分析することが出来た。EA/IRMSとの比較においても,十分な精度であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201426047B
報告書区分
総合
研究課題名
GCIRMS及びLCIRMSを利用した農薬類の安定同位体比の高精度分析方法の確立
課題番号
H25-食品-若手-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川島 洋人(公立大学法人秋田県立大学 システム科学技術学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年,ガスクロマトグラフィーと安定同位体比質量分析計の融合・実用化が行われた。その結果,個別化合物に含まれる安定同位体比の測定が可能となった。しかし,農薬類を対象とした鑑識学的な応用事例は,研究代表者が行った原因不明の殺虫剤ダイアジノンの識別に利用したのみである(Kawashima and Katayama, Environmental Forensics)。
本研究では,不純物同定法に取って代わる画期的かつ革新的な新しい技術である安定同位体を用いた農薬類の識別方法の確立を目指す。安定同位体比は既に石油や石炭の原産地や生成過程等によって特徴を有すことが示されており,農薬自体の生産場所を特定する新たな方法となる可能性は非常に高いと思われる。25年度は,酸化炉の変更を行い,またクライオフォーカス部を導入し,炭素安定同位体比の高精度分析方法を確立すること,26年度は,TCEA/IRMSを用いた農薬中の水素安定同位体比(δD)の測定及び,LC/IRMSを用いた農薬中の(δ13C)の測定を目指す。農薬の異同識別を通して,農薬のトレーサビリティを迅速かつ高精度に確保することは,国民の食の安全を保障するうえでは必須である。
研究方法
多くの農薬類は複雑な夾雑物が混在し,また燃焼の効率性を下げる硫黄成分で構成されている。そこで本研究では研究代表者所属機関が所有するGC/IRMSを用いて高精度分析方法を開発する。最終的には農薬標準液,農薬製品を繰り返し分析で標準偏差が炭素0.2‰程度になる条件を確立する。これらは国内外においても極めて高い測定精度である。まず対象農薬としては,秋田県内の使用量等考慮し,15種程度選定する。酸化炉は酸化剤(酸化銅,ニッケル,白金など担持)の消耗試験を実施する。また液体窒素を用いたクライオフォーカス部を導入し,シャープなピークにして,高精度分析を行う。また,最後に2次元GC部を導入する。TCEA/IRMSを用いて11種類の農薬のδDの分析を行った。また,LC/IRMSを用いて5種の農薬類のδ13Cの分析を実施した。
結果と考察
各種分析法において高精度分析方法を確立することができた。また,分解性の高い農薬にも対応できるよう,クライオフォーシング技術を用いて分解したものをすべて一つにトラップして検出することが可能となった。実環境では微生物分解や化学反応を伴う分解で大きな同位体分別が生じることもあり,本手法は,有効な方法になる可能性もある。TCEA/IRMSを用いて11種類の農薬のδDの高精度・高確度分析が可能になった。精度の高い分析方法及び消耗品の交換時期等を決定することが出来た。また,LC/IRMSを用いて水溶性の農薬を5成分構成を分析することが出来た。EA/IRMSとの比較においても,十分な精度であることがわかった。
結論
各種分析法において高精度分析方法を確立することができた。また,25年末には,冷凍食品にマラチオンが混入する事件が勃発した。本研究では,マラチオンが含まれているマラソン乳剤を収集し,マラチオン中の炭素安定同位体比の分析を実施した。結果は,マラチオンの原体が同じ場合でも,乳剤に含まれエチルベンゼン,キシレンの炭素安定同位体比及びその比率を使うことで,乳剤を分類することが出来た。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201426047C

成果

専門的・学術的観点からの成果
農薬類を対象とした安定同位体比を用いた鑑識学的な応用事例はほとんど行われていないのが現状であったが,本研究では各種の分析方法を用いた農薬類の安定同位体比の高精度分析方法が可能になった。安定同位体比は,水素,炭素の同位体比を高精度に分析することが出来るようになった。特にLC/IRMSを用いた農薬類の測定は国外でもほとんど結果が出ておらず,また国内では皆無である等,先駆的に研究を実施することが出来た。
臨床的観点からの成果
25年末には冷凍食品にマラチオンが混入する事件が勃発した。本研究では,マラチオンが含まれているマラソン乳剤を収集し,マラチオン中の炭素安定同位体比の分析を実施した。結果は,マラチオンの原体が同じ場合でも,乳剤に含まれエチルベンゼン,キシレンの炭素安定同位体比及びその比率を使うことで,乳剤を分類することが出来た。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiroto Kawashima
The measurement of stable carbon isotope ratios of eight methamidophos samples
Journal of Forensics Science , 60 (5) , 1360-1364  (2015)
10.1111/1556-4029.12825
原著論文2
Nana Suto, Hiroto Kawashima
Stable carbon isotope ratio for sugar, amino acid, and caffeine by liquid chromatography/isotope ratio mass spectrometry
Procedia Earth and Planetary Science , 13 , 181-184  (2015)
10.1016/j.proeps.2015.07.042
原著論文3
Hiroto Kawashima, Takuro Kariya
Use of stable carbon isotope ratios to determine the source of cypermethrin in so-called natural plant extract formulations used for organic farming
Isotopes in Environmental & Health Studies , 53 , 70-79  (2017)
10.1080/10256016.2016.1164697
原著論文4
Nana Suto, Hiroto Kawashima
Classification of nine malathion emulsion samples by using carbon isotope ratios and the ratio of organic solvents
Science & Justice , 57 , 1-5  (2017)
https://doi.org/10.1016/j.scijus.2016.10.009
原著論文5
Hiroto Kawashima, Momoka Suto, Nana Suto
Determination of carbon isotope ratios for honey samples by means of a liquid chromatography/isotope ratio mass spectrometry system coupled with a post‐column pump
Rapid Communications in Mass Spectrometry , accepted  (2018)
https://doi.org/10.1002/rcm.8170

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
2018-07-09

収支報告書

文献番号
201426047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,847,000円
(2)補助金確定額
2,847,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,604,480円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 242,520円
間接経費 853,000円
合計 3,700,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-