文献情報
文献番号
201426038A
報告書区分
総括
研究課題名
リスクコミュニケーションにおける情報の伝達手法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-食品-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 山口 一郎(国立保健医療科学院生活環境研究部)
- 奥村 貴史(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
- 藤井 仁(国立保健医療科学院政策技術評価研究部)
- 乾 健太郎(東北大学大学院情報科学研究科)
- 岡崎 直観(東北大学大学院情報科学研究科)
- 山口 浩(駒澤大学グローバルメディアスタディーズ学部)
- 榊 剛史(東京大学工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
東日本大震災により生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故により前例のない規模の放射能汚染が生じたことに加え、放射能に関する正誤のあいまいな情報や伝聞による健康情報がインターネットを中心として蔓延し、国民の間には食品の安全性に関する漠然とした不安は今なお存在している。
このような状況において食品並びに食品安全行政への信頼を確保するために、科学的知見に基づく食品の安全性に関する情報を正確かつ分かりやすく国民に伝える「リスクコミュニケーション」が求められている。しかしながら、従来のリスクコミュニケーションは、専門家から一般人への一方通行な情報伝達、または、専門家と一般市民における双方向の情報交換のいずれかを前提としており、現在のように放射能に関する正誤のあいまいな情報がネットに溢れる状況を想定していなかった。
本研究では、ネットが普及した現在における食品安全に関するリスクコミュニケーションを確立するため、食品中の放射性物質汚染を事例として取り上げ、ネット時代に求められるリスクコミュニケーションのあり方を明らかとすることを目的とする。
このような状況において食品並びに食品安全行政への信頼を確保するために、科学的知見に基づく食品の安全性に関する情報を正確かつ分かりやすく国民に伝える「リスクコミュニケーション」が求められている。しかしながら、従来のリスクコミュニケーションは、専門家から一般人への一方通行な情報伝達、または、専門家と一般市民における双方向の情報交換のいずれかを前提としており、現在のように放射能に関する正誤のあいまいな情報がネットに溢れる状況を想定していなかった。
本研究では、ネットが普及した現在における食品安全に関するリスクコミュニケーションを確立するため、食品中の放射性物質汚染を事例として取り上げ、ネット時代に求められるリスクコミュニケーションのあり方を明らかとすることを目的とする。
研究方法
上記の目的を達成するために、本年度では、1) ソーシャルメディア上の投稿を分析することで、ソーシャルメディア上での情報発信についての現状、ニュース記事が受け手に与える感情の相関、ニュース記事とその反響の大きさの相関について分析を行った。また、2) ソーシャルメディアにおいてリスクコミュニケーションを実施するうえでの課題の整理を行った。さらに、3) 原子力災害によりもたらされた現存被ばく状況での食品の放射線安全に関するリスクコミュニケーションのあり方を明らかにするための一端として、マス・メディアなどメディアを通じたリスクコミュニケーションのあり方を原発事故後との国内外の取り組みに基づき考察した。とくに放射能に関するリスクについては、4) 消費者庁が実施したアンケート結果の二次的な解析として、放射線に関する知識量がどのような要因で増減するのかを探索的に分析した。
本研究の最終年度の成果として、本研究結果を活かして、現状に即した食品安全行政のためのリスクコミュニケーション手法について、ガイドライン案としてまとめた。
本研究の最終年度の成果として、本研究結果を活かして、現状に即した食品安全行政のためのリスクコミュニケーション手法について、ガイドライン案としてまとめた。
結果と考察
本研究全体の結論として、インターネットの普及によるリスク情報の流通過程は急速に変化しており、このような状況の変化に対して、有効なリスクコミュニケーションを行うためには、インターネットの強力な情報伝達力を利用すべきであり、今後は技術の進歩に対応するだけでなく、技術革新をリードする体制が必要であることがわかった。
従来のリスクコミュニケーションの概念には、基本的に「情報発信者」、「情報受信者」、「情報の媒介者」の3者が含まれている。このうち情報発信者にとっては「どのように」情報を伝えるかということだけでなく、情報の内容として「何を」伝えるかということも重要とされている。とくに放射線リスクに関しては、放射線防護体系やその考え方は非常に複雑な科学的知見から成り立っており、専門家がすべての情報を正確にかつ分かりやすく一般住民に伝えることはきわめて難しい。したがって、従来のリスクコミュニケーションの概念の枠組みの中では、情報伝達のためのガイドラインやリスクコミュニケーションのための仕組みづくりなどが課題と考えられる。
しかし、近年のインターネットの急速な普及を考慮すると、リスク情報の発信者が科学者や専門家であるとは限らないこと、一般市民の間で流通する情報量は非常に大きいこと、一般に関心がもたれている情報の大部分の内容はインターネット上に存在する可能性があること、情報発信者は出版物やマスコミなどの媒体を通さずに直接的に一般市民に情報を伝えられること、などの点で変化が生じていることが示唆されており、今後はこれらの変化に対応できるように、情報ニーズの把握方法、情報伝達の技術・表現方法、専門家や行政担当者の役割などを検討していく必要がある。
従来のリスクコミュニケーションの概念には、基本的に「情報発信者」、「情報受信者」、「情報の媒介者」の3者が含まれている。このうち情報発信者にとっては「どのように」情報を伝えるかということだけでなく、情報の内容として「何を」伝えるかということも重要とされている。とくに放射線リスクに関しては、放射線防護体系やその考え方は非常に複雑な科学的知見から成り立っており、専門家がすべての情報を正確にかつ分かりやすく一般住民に伝えることはきわめて難しい。したがって、従来のリスクコミュニケーションの概念の枠組みの中では、情報伝達のためのガイドラインやリスクコミュニケーションのための仕組みづくりなどが課題と考えられる。
しかし、近年のインターネットの急速な普及を考慮すると、リスク情報の発信者が科学者や専門家であるとは限らないこと、一般市民の間で流通する情報量は非常に大きいこと、一般に関心がもたれている情報の大部分の内容はインターネット上に存在する可能性があること、情報発信者は出版物やマスコミなどの媒体を通さずに直接的に一般市民に情報を伝えられること、などの点で変化が生じていることが示唆されており、今後はこれらの変化に対応できるように、情報ニーズの把握方法、情報伝達の技術・表現方法、専門家や行政担当者の役割などを検討していく必要がある。
結論
インターネットの普及によるリスク情報の流通過程は急速に変化している。すなわち、
1)リスク情報の発信者が科学者や専門家であるとは限らない。
2)情報発信者は誰でも、出版社やマスコミなどの媒介を通さずに、直接的に意見を表明することができる。
3)発信された情報はその内容によっては急速に社会に広がる。
4)技術進歩により、コミュニケーションの様相が常に変化している。
上記のような状況の変化に対して、有効なリスクコミュニケーションを行うためには、インターネットの強力な情報伝達力を利用すべきであり、今後は技術の進歩に対応するだけでなく、技術革新をリードする体制が必要であろう。
1)リスク情報の発信者が科学者や専門家であるとは限らない。
2)情報発信者は誰でも、出版社やマスコミなどの媒介を通さずに、直接的に意見を表明することができる。
3)発信された情報はその内容によっては急速に社会に広がる。
4)技術進歩により、コミュニケーションの様相が常に変化している。
上記のような状況の変化に対して、有効なリスクコミュニケーションを行うためには、インターネットの強力な情報伝達力を利用すべきであり、今後は技術の進歩に対応するだけでなく、技術革新をリードする体制が必要であろう。
公開日・更新日
公開日
2015-06-29
更新日
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