検査機関の信頼性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201426036A
報告書区分
総括
研究課題名
検査機関の信頼性確保に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 食品衛生事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
19,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全性確保のために精度管理体制の整備や適正な精度管理用調査試料の開発とこれに付随した精度管理を実施し、食品衛生検査機関における検査成績の信頼性の確保に貢献することを目的とした。
研究方法
外部精度管理調査用適正調査試料の作製において、理化学検査では、コメを基材とした規格基準が設定された農薬の安定性を検討し、微生物学検査では、定性検査として腸炎ビブリオ、定量検査としてセレウス菌(米飯)の大量作製を検討した。アレルギー物質検査については、落花生ELISAキットの様々な食品に対する反応性について確認した。また、カビ毒検査では、特異性の高い総アフラトキシン簡易測定法としての直性競合ELISAの開発を行った。残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、協力機関の連携の下、GCMS測定における食品成分によるマトリックスの影響とその制御法について検討した。食品に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、輸入食品からの違反事例の多いアフラトキシンについて、従来の蛍光検出法の問題点を解決するために、前処理法として、より選択性の高いイムノアフィニティーゲルを用いた固相分散抽出(SPDE)法の適用を検討した。同位体希釈質量分析法(IDMS)による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、IDMSにおけるマトリックス効果の影響を検討、除去し、同法の高精確化を行った。
結果と考察
食品衛生外部精度管理調査用適正試料の作製と信頼性確保に関する研究のうち、理化学検査では枝豆ペーストについては、均質化のために水(5、10、20%)及び油(2、5、10%)をそれぞれ添加し、冷凍保存6か月までの濃度測定が終了し、一部の農薬を除いておおむね安定性が確認できた。コメ類については、加熱なしの条件は冷蔵保存3か月までが終了した。微生物学検査では、腸炎ビブリオの見立て食材(ゆでだこ、ゆでがに)として、形態は異なるが高野豆腐が有効であることが確認された。また、セレウス菌(米飯)の大量作製の前段階として、冷蔵及び32.5℃で接種菌数の経時変化を検討した結果、2週間は安定であることが確認され、更なる長期の安定性と輸送安定性を確認する。残留分析の測定値に与える食品成分の影響に関する研究では、事前検討により、汎用マトリックス候補として野菜果実ジュース抽出物(野菜果実ジュース由来ブランク試験液)とポリエチレングリコール300(PEG)、試験食品としてほうれん草、えだまめ、添加農薬88種を選択した。 共同研究の結果、各協力機関の前処理、試験液濃度、注入量に関わらず、内部標準(トリフェニルリン酸)による補正は効果的であった。また、野菜果実ジュース抽出物とPEGを併用添加した検量線は全ての協力機関において補正効果が高く、汎用性が高い検量線と考えられた。野菜果実ジュース抽出物とPEGは汎用性の高いマトリックスで有り、食品毎にブランク試験液を調製する必要があるマッチド検量線と比較して、調製にかかるコストや時間が大幅に削減され、実用性も極めて高いと考えられた。食品中に残留するマイコトキシン分析に係る精度管理体制の構築に関する研究では、夾雑物の多い香辛料を十分クリーンアップするにはイムノアフィニティーカラムが最適であり、SPDEでは、従来の固相抽出では目詰まりするような現象も妨ぐことができた。同位体希釈質量分析法による残留農薬の高信頼性分析に関する研究では、まず、平成25年度食品衛生外部精度管理調査試料の基材であるトウモロコシペーストをモデル試料として、その前処理液によって校正溶液をマトリックスマッチングした場合とそうでない場合の検量線を比較した。その結果、マトリックスマッチングすることによって、正確な分析結果が得られることを明らかにした。次に、この分析条件によって平成26年度食品衛生外部精度管理調査試料を分析したところ、得られた分析結果は試料調製時の農薬添加濃度とよく一致していた。これより、検討したIDMS分析法によって、外部精度管理調査試料中の農薬濃度を正確に分析できることが示された。
結論
野菜果実ジュース抽出物とPEGを併用添加した検量線は、マトリックス補正効果が高く、汎用マトリックス検量線として有用であった。また、食品中のマイコトキシンの前処理として、イムノアフィニティーゲルを用いたSPDE法及び固相蛍光誘導体化法を構築した。さらに、理化学と微生物の検査における適正な外部精度管理調査試料の開発を進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201426036Z