文献情報
文献番号
201426034A
報告書区分
総括
研究課題名
非定型BSE(牛海綿状脳症)に対する安全対策等に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 柴田 宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
- 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
- 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞生化学部 )
- 長谷部 理絵(北海道大学 大学院獣医学研究科)
- 福田 茂夫(北海道総合研究機構畜産試験場 基盤研究部畜産工学グループ)
- 室井 喜景(帯広畜産大学 畜産学部)
- 横山 隆(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
英国で発生して世界各地に広がったBSE(定型BSE [C-BSE])は、ヒトに感染して変異CJDを起こすことから大きな社会問題となったが、現在その発生は制御下にある。しかし、能動サーベイランスの結果、定型BSEとは性質が異なるBSE(非定型BSE)が、主に高齢牛で発見され、ヒトへの感染リスクや定型BSEの原因となる可能性が指摘されている。非定型BSEは、実験的に牛やヒトPrP遺伝子発現マウスに伝達することから、感染拡大リスクを考慮した管理措置が必要である。本研究では、これまでに培った技術・知見を活用して、サル、ウシおよび各種モデル動物を用いる感染実験、in vitroの実験を含む多角的な試験を実施して、1) 非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明、2) 非定型BSEのヒトへのリスクの推定、3) 潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定および非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定、に資する研究を進める。定型BSEと比べて、感染病態、ヒトへの感染リスクなど不明な要素が多く残る非定型BSEに関して、食品を介した感染拡大を防ぐための安全対策等に貢献することを目的とする。
研究方法
1)非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明に資する研究
・L-BSEおよびおH-BSE脳内接種牛におけるPrPScの脳内出現部位を経時的に解析してPrPScが検出される時期を明らかにする。・L-およびH-BSE実験感染牛の発症牛の可食部位におけるプリオンの存在をウシ型PrP過剰発現マウス(TgBovPrP)を用いるバイオアッセイにより調べる。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・L-BSE経口接種および脳内接種連続継代中のカニクイザルの、臨床経過の観察、運動機能試験、脳波測定による神経機能解析を継続する。
・H-BSEのヒトへのリスクの推定のために、カニクイザルの経口接種試験を新規に開始して、経過観察、血液および脳脊髄液の採取を行う。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・RT-QUIC法によるL-BSEの検出法をさらに改良して高精度化し、高齢牛を対象に潜在的な非定型BSEが存在する可能性を調べる。
・L-BSEおよびおH-BSE脳内接種牛におけるPrPScの脳内出現部位を経時的に解析してPrPScが検出される時期を明らかにする。・L-およびH-BSE実験感染牛の発症牛の可食部位におけるプリオンの存在をウシ型PrP過剰発現マウス(TgBovPrP)を用いるバイオアッセイにより調べる。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・L-BSE経口接種および脳内接種連続継代中のカニクイザルの、臨床経過の観察、運動機能試験、脳波測定による神経機能解析を継続する。
・H-BSEのヒトへのリスクの推定のために、カニクイザルの経口接種試験を新規に開始して、経過観察、血液および脳脊髄液の採取を行う。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・RT-QUIC法によるL-BSEの検出法をさらに改良して高精度化し、高齢牛を対象に潜在的な非定型BSEが存在する可能性を調べる。
結果と考察
1)非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明に資する研究
・L-BSEを脳内接種した牛の中枢神経系組織では、臨床症状が出現する6ヶ月前にPrPScが検出されることが示唆された。
・L-BSE感染ウシ脳乳剤の希釈列をTgBovPrPに接種し、L-BSE感染価を測定するための容量-潜伏期標準曲線を作成した。
・mAb132を用いて、世界で初めて、プリオン感染動物の脳組織からプリオンに感染した神経細胞を分離する方法を確立した。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・サルを用いたL-BSEプリオンの2代目継代では、初代接種と同様に小脳、延髄へのPrPScの蓄積レベルが低かった。この点はC-BSEプリオン接種ザルと異なり、両プリオンのトロピズムが異なることが明らかとなった。
・L-BSE感染ザルの発症期に採取した尿、脳脊髄液、唾液サンプルおよび発症前の脳脊髄液サンプルからPMCA法によりPrPScが検出できたことから、採取可能な体液を用いる診断法への応用が示唆された。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・1回目のRT-QUIC法をマウスrPrPを基質として行い、引き続き2回目のRT-QUIC法をマウスおよびハムスターrPrPを基質として用いて行うことで、高感度かつ高精度にC-およびL-BSEを識別できるようになった。また、この方向を用いて、過去のBSE確認検査で陰性と判断された検体および、北海道大学で健体あるいは病理解剖された牛(BSE検査陰性)を調べたが、C-BSE, L-BSEともに陰性と判定できた。
・L-BSEを脳内接種した牛の中枢神経系組織では、臨床症状が出現する6ヶ月前にPrPScが検出されることが示唆された。
・L-BSE感染ウシ脳乳剤の希釈列をTgBovPrPに接種し、L-BSE感染価を測定するための容量-潜伏期標準曲線を作成した。
・mAb132を用いて、世界で初めて、プリオン感染動物の脳組織からプリオンに感染した神経細胞を分離する方法を確立した。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究
・サルを用いたL-BSEプリオンの2代目継代では、初代接種と同様に小脳、延髄へのPrPScの蓄積レベルが低かった。この点はC-BSEプリオン接種ザルと異なり、両プリオンのトロピズムが異なることが明らかとなった。
・L-BSE感染ザルの発症期に採取した尿、脳脊髄液、唾液サンプルおよび発症前の脳脊髄液サンプルからPMCA法によりPrPScが検出できたことから、採取可能な体液を用いる診断法への応用が示唆された。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定
・1回目のRT-QUIC法をマウスrPrPを基質として行い、引き続き2回目のRT-QUIC法をマウスおよびハムスターrPrPを基質として用いて行うことで、高感度かつ高精度にC-およびL-BSEを識別できるようになった。また、この方向を用いて、過去のBSE確認検査で陰性と判断された検体および、北海道大学で健体あるいは病理解剖された牛(BSE検査陰性)を調べたが、C-BSE, L-BSEともに陰性と判定できた。
結論
1)非定型BSE感染動物における感染病態機序の解明に資する研究:L-BSE感染牛の発症前のPrPSc検出時期を明らかに出来た点、L-BSE感染価測定用の容量-潜伏期標準曲線が作成できた点で、計画通りに研究が進展している。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究:サルでのL-BSE連続継代および経口感染実験は予定通り進んでいるが、H-BSEの感染実験の開始は、施設移行のため遅れが生じている。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定:高精度のC-, L-BSE識別法を確立し、その実用性が確認できたことから、計画通りに研究が進展している。
2)非定型BSEのヒトへのリスクの推定に資する研究:サルでのL-BSE連続継代および経口感染実験は予定通り進んでいるが、H-BSEの感染実験の開始は、施設移行のため遅れが生じている。
3)潜在的な非定型BSEの存在リスクの推定、非定型BSEが定型BSEの起源となる可能性の推定:高精度のC-, L-BSE識別法を確立し、その実用性が確認できたことから、計画通りに研究が進展している。
公開日・更新日
公開日
2015-05-22
更新日
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