食品中の病原ウイルスの検出法に関する研究

文献情報

文献番号
201426025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の病原ウイルスの検出法に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博之(秋田県健康環境センター 保健衛生部)
  • 滝澤 剛則(富山県衛生研究所 ウイルス部)
  • 渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 食品衛生事業部)
  • 上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性食中毒は依然多発し近年はノロウイルス(NoV)以外のウイルスによる事件も増加傾向にある。食中毒の原因究明や食品のウイルス汚染実態の把握には食品のウイルス検出法の確立が必要であるが、困難な場合が多く、遺伝子が変異し検出困難な事例も認められる。そのためNoV以外のウイルスの検出法や検出困難なウイルスを迅速に検出同定する技術が必要である。また,そのような変異株の出現を早期に探知し、迅速に対応するためには食品や環境のウイルスサーベイランスが不可欠である。一方現在食品ウイルス検査は外部精度管理体制が確立されておらず信頼性が確保されていない。以上の背景から,本研究では,ウイルス性食中毒の検査体制の強化,高度化および標準化並びにウイルス性食中毒予防に必要な疫学データ等の蓄積等を目的とした。
研究方法
全国16方衛生研究所等の協力の下,研究を実施した。(1)食品からのウイルス検出法および遺伝子解析法の開発:食品からのウイルス検出法であるパンソルビン・トラップ法の汎用化等に向けた検討を実施した。市販カキを用いてnested PCR法とリアルタイムPCR法による検出率等を比較した。次世代シークエンサーを用いて網羅的ゲノム解析のNoV食中毒調査の適応に向けた基礎的な研究を実施した。食中毒検査の向上に向けた検査法の開発・評価を行った。(2)変異株等早期検出のための食品・環境等のサーベイランス:市販カキ等を対象としてNoV等の腸管系ウイルスの検索を実施した。下水等を対象としてNoV等の検索を実施し,ヒトの食中毒および胃腸炎散発例,集団発生事例から検出されたウイルスとの関連性等を分析した。各地域で発生した食中毒,胃腸炎集団発生,散発例等からウイルス検出を行い,検出ウイルスの遺伝子解析を行うとともに,疫学的な解析を行った。(3)食品のウイルス検査の精度管理体制の確立に関する研究:12地方衛生研究所を対象として,共通試料(陽性試料4種類,陰性試料1種類および標準cDNA溶液)を配布することにより外部精度管理を行った。
結果と考察
(1)パンソルビン・トラップ法で使用する工業用ガンマグロブリンを用いることで検査の汎用化が図れた。検体の相互汚染防止策としてUNG 処理によるDNA汚染の無効化と2nd. PCRにreal-time PCRを用いてCt値で判別する方法が有効であった。通知法の陽性判定基準(実測値10以上)に基づくとリアルタイムPCR法では偽陰性となる場合が多かった。網羅的ゲノム解析法を用いてNoV陽性便から直接得たRNAを分析した結果,ダイレクトシークエンス法で得られた遺伝子型と異なる遺伝子型のリードが得られる場合があった。A型肝炎ウイルス(HAV)等のPCR用の陽性コントロールプラスミドを作製した。HAVの長鎖DNAを検出するリアルタイムPCR法の条件を決定した。カキからのウイルス検出に特異性の高い逆転写反応とPCR増幅を行うことで,特異的な遺伝子増幅ができた。ハイドロキシアパタイトを用いた回収法で清浄検体からは高率よくウイルスを回収できたが,カキ乳剤では低い回収率であった。(2) 2014年2月採取カキ検体を中心とて食品媒介ウイルスの汚染調査を実施した。加熱調理用カキは生食用カキと比較して,検出率,汚染ウイルス量が高い傾向にあった。生食用カキの汚染率は採取海域により大きく異なった。汚染量はGIIが高い傾向にあった。ヒトでの流行を反映しGII/4 Sydney2012変異株,GII/6が多く検出されたが,ヒトからの検出が少ないものを含め多くの遺伝子型のノロウルスが検出された。サポウイルスはGI.2が多く検出された。HAVおよびE型肝炎ウイルスは不検出であったが,下水からHAVが検出されたことから汚染リスクがあることが示唆された。下水,カキ,ヒトから検出されるNoV遺伝子型は大まかには一致するものの,異なる傾向を示すことも認められた。下水からHAVが検出され,地域に感染者が存在していたことが示唆された。2013/14シーズンにおけるNoVの主な流行株はGII/4 Sydney2012変異株,次いでGII/6であった。GII/6はPol領域がGⅡ.P3のキメラウイルスであり,小児施設での集団発生が多くみられた。GII/3,GII/2等の流行も一部の地域で確認された。(3) 12機関を対象として,共通試料を配布することにより外部精度管理を行った。陽性試料については検量線作成時のcDNA溶液の種類間で低濃度試料の換算量の平均に有意差が認められた。また,配布cDNAは機関cDNAより濃度のばらつきが少ないことが確認された。
結論
ウイルス性食中毒の検査体制の強化,高度化および標準化並びにウイルス性食中毒予防に必要な疫学データ等の蓄積等が図れた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201426025Z