基準値の策定に資する食品汚染カビ毒の実態調査と生体影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
201426022A
報告書区分
総括
研究課題名
基準値の策定に資する食品汚染カビ毒の実態調査と生体影響評価に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
局 博一(東京大学 大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(麻布大学 生命・環境科学部)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学 大学院農学研究院  )
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,334,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内流通食品におけるフザリウム属カビ毒およびフザリウム属菌の汚染状況の実態調査と日本人の上記カビ毒への曝露量評価を行うこと、また一部のカビ毒の毒性評価を行うことを目的とした。
研究方法
1.カビ毒の食品汚染実態調査と生態調査、曝露量評価
1)食品汚染カビ毒の実態調査
13食品目231検体について、T-2トキシン(以下、T-2)、HT-2トキシン(以下、HT-2)、ゼアラレノン(以下、ZEN)の下限平均濃度および上限平均濃度を調べた。
2)曝露量評価
平成22年度から平成24年度の3年間で行った実態調査結果と一部平成26年度に行った実態調査結果を用いて、上記3種類のカビ毒曝露量評価を年齢層毎に行った。曝露量評価は、小麦、大麦、小豆、雑穀米、ビールの5種類について行った。
3)国内流通食品におけるFusarium属菌の分布状況
輸入小麦および国産小豆について、フザリウムトキシン汚染の原因菌の特定を試みた。
フザリウムトキシンおよびFusarium属菌の汚染状況、分離株のフザリウムシン産生性
を同時に検討した。
2.毒性評価
1)カビ毒の発達期毒性評価
T-2(0、1、3、9 ppm)の発達期曝露影響評価を行った。妊娠6日目から分娩後21日目まで混餌投与した。また、アフラトキシン(AF)M1のラットにおける発達神経毒性を調べた。AFB1を母動物に対して混餌投与(0.1、0.3、1.0 ppm)することにより、経胎盤・経乳的にAFM1を児動物に曝露し、離乳時と生後77日目における影響について解析した。
2)T-2トキシンの経口摂取による心拍・体温・活動量への影響
平成25年度はT-2の経口摂取が全身機能(心拍数、活動量、体温)に及ぼす影響を自由行動下のラットのテレメトリー観察によって行った
結果と考察
1.カビ毒の食品汚染実態調査と生態調査、曝露量評価
1)食品汚染カビ毒の実態調査
ZENは、主にコーンフレーク、ソバ、ゴマ及び小豆で、T-2とHT-2はライ麦粉、ハト麦加工品、ソバ及び小豆から検出された。汚染濃度については、ハト麦粉と小豆のZENの平均濃度(LB)が10 μg/kgを超えていた。T-2については、ハト麦加工品、小豆及び雑穀米で平均濃度(LB)が1 μg/kg以上で、HT-2については、ライ麦粉及び小豆において下限平均濃度が2 μg/kgを超えており、小豆においてT-2とHT-2の合算値が最も高い検体が認められ、その濃度は147 μg/kgであった。
2)曝露量評価
ZENは健康被害のリスクは極めて低いと思われた。HT-2は、95%タイル(20人のうち19人)は健康被害のリスクは小さいと考えられた。T-2とHT-2の合計量については低年齢層でリスクが高いことがわかった(1~6歳では97.5%タイルでPMTDIを超え、7~14歳では99%タイルでPMTDIを超えた。)実態調査の検体数が少ないため、今後標本数を増やして詳細な解析を行う必要がある。
3)国内流通食品におけるFusarium属菌の分布状況
特にアメリカ・カナダ産DURAM小麦および国産白小豆は他品種と比較してFusarium属菌に汚染されやすい傾向がみられた。また、T-2汚染状況と分離された。F. sporotrichioidesのT-2産生性が一致したことから、輸入小麦および国産白小豆のT-2トキシンの汚染原因菌種は本菌であることが示唆された。
2.毒性評価
1)カビ毒の発達期毒性評価
T-2では、母動物で、3 ppm以上で前胃の病理組織学的変化、9 ppmでは脾臓、胸腺の変化が認められた。児動物では出生後21日目の雄で3 ppmより胸腺のリンパ球アポトーシスの増加が認められた。また離乳時の児動物では海馬顆粒細胞層下帯においてアポトーシスの増加が3 ppmより認められた。AFB1では、母動物では肝重量の増加、児動物(雄)では体重の低値などが1 ppmで観察された。また、離乳時の児動物(雄)の脳顆粒細胞層下帯においてtype-3前駆細胞が0.3 ppmから減少し、1.0 ppmでは細胞増殖活性の低下がみられた。
2)T-2トキシンの経口摂取による心拍・体温・活動量への影響
3 ppmのT-2トキシンを含む粉餌を自由経口摂取したラットにおいて、摂取期間中に心拍数、活動量および体温レベルおよびそれらの日周リズムに明瞭な変化が生じないことが明らかになった。
結論
汚染実態調査および曝露量評価結果では、T-2およびHT-2でJECFAの暫定基準値を上回る部分があり、今後の注意深い監視が必要である。また、本研究における毒性試験ではT-2およびHT-2は毒性が認められるものの、ADIはJECFAの暫定基準値に比べて高かった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201426022Z