文献情報
文献番号
201426020A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
- 堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 片岡洋平(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
- 天倉吉章(松山大学薬学部)
- 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 松田りえ子(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
46,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、施策の検討及び効果の検証に不可欠な様々な有害物質の信頼できる摂取量を適時にまた必要に応じて継続的に推定することを目的に、有害物質の摂取量推定、摂取量の精密化、摂取量を推定すべき新規有害物質の選定の3つの研究を実施した。
研究方法
有害物質の摂取量推定では、全国7~10地域でマーケットバスケット方式により調製したトータルダイエット(TD)試料の分析を通じ、有害なCd、As、Pb、Hgを含む元素類、PCBs類、ダイオキシン類の摂取量を推定した。その他、燻製加工食品の多環芳香族炭化水素類(PAHs)濃度や魚製品の水酸化PCBs濃度の実態を調査した。摂取量の精密化では、目的に特化したTD試料の調製と分析を通じ幼児における各種有害物質の摂取量を推定し、全年齢層平均摂取量と詳細に比較した。さらに、無機ヒ素分析法を開発した。摂取量を推定すべき新規有害物質の選定では、アリル炭化水素レセプター(AhR)との結合活性を示した化学物質(ダイオキシン様活性を持つ物質)について複数のバイオアッセイ系を用いて解析するとともに、世界の食品安全担当機関に調査対象を拡大しMOEを指標とした化合物リストを拡充した。
結果と考察
一部元素類の全国平均摂取量を挙げると、Niで140、Seで91.6、Cdで19.3、Baで442、Pbで7.82 であった(何れも単位はμg/man/day)。Total AsとiAsの全国平均摂取量は、それぞれ215、19.3 ng/man/day、total HgとMeHgの全国平均摂取量は、それぞれ8.53、6.52 ng/man/dayと推定された。PCBsの全国平均摂取量は、488 ng/man/dayと推定された。対TDI比は、Niの70%を筆頭に、MeHgが57%、Se、Cd、Baが30%以上となった。さらに、一部元素及びPCBsの体重当たりの摂取量は、総じて幼児において全年齢層平均を上回ることが示された。複数地域におけるHBCDの1日摂取量は、13.9~86.9 ng/dayであった。また、Total DPの一日摂取量は29 ng/dayと推定された。ダイオキシン類の全国1日平均摂取量は0.69 pg TEQ/kg/dayと推定され、対TDI比は約17%であった。また、魚製品のダイオキシン濃度データを用いた確率論的摂取量推定を試行した結果、ダイオキシン類摂取量の平均値は、全年齢層で1.2 pg TEQ/kg/day、1-3歳で1.9、4-6歳で1.5、7-12歳で1.4、13-18歳で0.92、19-64歳で0.89、65歳以上で1.2であった(何れも単位はTEQ/kg/day)。その他、有害物質実態調査では、燻製方法がPAHs濃度に影響している可能性が示唆され、魚製品から水酸化PCBsが高頻度に検出されることが明らかとなった。精密化研究では、幼児及び全年齢層における各種有害物質の摂取量推定値及びTD試料濃度を詳細に解析した。その結果、全年齢層平均摂取量推定用TD試料の分析結果に、年齢層の食品摂取量を示す係数を乗じることにより、年齢層ごとの摂取量を概ね推定できることが示された。その他、無機ヒ素濃度を分析可能な方法が開発され、性能評価試料を用いた実験により、TD試料の無機ヒ素濃度を分析するための十分な性能を有すると評価された。新規有害物質の選定では、複数のバイオアッセイ系によりこれまでに明らかにされた化学物質のダイオキシン様活性が確認された。また、食品抽出物の分画により顕著なAhR活性を有する画分を特定した。MOEを指標に収集した情報の収集と解析結果から、無機ヒ素やアクリルアミド対策の優先度が高いことまた、ピロリジジンアルカロイドやカルバミン酸エチルへの関心が高いことが明らかとなった。
結論
カドミウム、ヒ素、鉛を含む元素類、PCBs類、ダイオキシン類の摂取量が推定され、TDIとの比較から、継続した摂取量推定が必要と考えられた。その他、HBCDとDPの摂取量が推定された。魚製品には高頻度に水酸化PCBsが含まれていることが明らかとなり、燻製方法による食品のPAHs濃度への寄与が示唆された。食品摂取重量による補正を行うことで、年齢層別の摂取量を概ね推定できることが示された。摂取量推定を目的とした無機ヒ素分析法が開発された。多数の化学物質が有するダイオキシン様活性が複数のバイオアッセイによる交差評価により確実になった。世界の食品安全担当機関の公開情報及び学術文献からMOEを指標とし収集した情報が統合され、化合物リストが拡充した。
公開日・更新日
公開日
2015-05-25
更新日
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