文献情報
文献番号
201426017A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の複数の化学物質による健康影響に関する調査研究
課題番号
H25-食品-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
- 西川秋佳(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
- 原田孝則(財団法人残留農薬研究所)
- 出川雅邦(静岡県立大学薬学部)
- 福原 潔(昭和大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1.細胞内微小環境の変化を引き起こす化学物質が低用量の遺伝毒性物質に及ぼす影響並びに複数の酸化的DNA損傷誘発物質による複合影響を検討する2. 実際の日常生活のなかで起こり得る栄養素の過剰摂取状態を想定した食品中発がん物質の生体影響を評価する3. メタミドホスと他の有機リン剤の母動物及び若齢期、成熟期の雌ラットに対する複合影響並びに有機塩素系農薬を対象に、様々なライフステージに投与した際の吸入アレルギー疾患に及ぼす影響を検討する4. 複数のリガンド型および非リガンド型AhR活性化物質の複合影響並びに合成着色料によるAhR活性化とその種差の解析を検討する5. フェノール性抗酸化物質の薬物代謝酵素、生体環境、化学物質等との複合影響を予測し、毒性発現を事前に予測・予防するための情報を提供する。
研究方法
1. gpt deltaマウスにフルメキン(FL)を4週間自由に摂取させ、エストラゴール(ES)を強制経口投与した。また、gpt deltaラットに臭素酸カリウム(KBrO3)あるいはニトロフラントイン(NFT)を13週間、自由に摂取させ、アリザリン(Alz)を併用投与した。2. gpt deltaラットに高脂肪食を与え、同時に2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinolone (IQ)あるいは2-amino-3,8- dimethylimadazo[4,5-f]quinoxaline (MeIQx)を併用投与した。3. 有機リン剤のパラチオン及びメタミドホスを用いてラットの若齢期及び成熟期、妊娠及び偽妊娠動物に投与した。また、農薬暴露が吸入アレルギーに及ぼす影響について実験を行った。4. 加熱食品成分中の9種の癌原性ヘテロサイクリックアミンによるAhR活性化やCYP1As誘導能をHepG2細胞、HepG2-A10を用いて検討し、改良型AhR-based reporter gene assay用細胞株を用いて6種のベンズイミダゾール化合物のAhR活性化能を調べた。5. pBR322を用いたDNA切断反応では、フェノール性抗酸化物質のアセトン溶液と2,2- diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)の溶液を混合後、電気泳動を行った。カテキンとDPPH(2,4, 8, 16倍量)の溶液についてNMRを測定し、キノン酸化体のみが生成する条件を検討して決定した。
結果と考察
1. ESの遺伝毒性にFLの併用投与は細胞増殖活性を介した複合影響を引き起こすことが示唆された。また、KBrO3に対してAlzの併用投与は酸化的DNA損傷並びに遺伝子突然変異頻度を加算的に増加させた。2. 4週間の高脂肪食の摂取はヘテロサイクリックアミンのラット肝臓および大腸におけるin vivo変異原性に明らかな影響を与えなかった。3. 妊娠期のラットでは薬物代謝酵素のCYP1A、CYP3A及びPON1が低下し、薬物感受性が増強された。また、TMAを感作及び惹起した群で血中、肺胞洗浄液中、肺門リンパ節中に誘導されるIgE、サイトカイン、ケモカイン及び免疫担当細胞数が有意に増加し、吸入アレルギーが適切に誘導された。4. 6種のHCAsにはヒトAhR活性化能およびCYP1As誘導能があることを明らかにし、Glu-P-1、Glu-P-2、PhIPはCYP1As誘導性に種差がある可能性を示した。また、ベンゾイミダゾール類と3-methylcholanthreneの複合曝露による複合影響の種差を明らかにした。5. カテキンは塩基性条件下では酸化の過程で酸素をスーパーオキシドアニオンに還元することができた。酸化代謝を亢進する因子による複合影響として、キノン酸化体を経由する毒性を発症する可能性が考えられた。
結論
1. ESとFLの併用投与は、マウス肝臓における細胞増殖活性を加算的に上昇させた。酸化的DNA損傷は加算的に蓄積し、欠失サイズの増加を伴う遺伝子突然変異が誘発される可能性が示された。2. 4週間の高脂肪食摂取はIQおよびMeIQxのラット肝臓および大腸におけるin vivo変異原性に明らかな影響を与えなかった。3.パラチオンとメタミドホスの複合暴露では、妊娠期で最も毒性は強く、成熟期、若齢期の順に毒性は軽減した。ベンゾ[a]ピレン、メトキシクロル及びデキサメタゾンの妊娠期における反復投与は、呼吸器アレルギー反応に対して増強効果を示した。4. 相乗的なAhR活性化はリガンド型化合物と非リガンド型AhR活性化物質の組合せで起こる場合があり、合成着色料のAhR活性化能を有する化合物の活性化には動物種差を示すものがあった。5. フェノール性抗酸化物質はヒトではキノン酸化体を経由する発現機構で毒性を発現している可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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