食品用器具・容器包装等に含有される化学物質の分析に関する研究

文献情報

文献番号
201426016A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等に含有される化学物質の分析に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の食品、添加物等の規格基準により担保されているが、製品の多様化、新規材質の開発、試験結果の信頼性確保など多くの課題が生じている。そこで、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上を目的として、規格試験法の性能評価に関する研究及び市販製品に残存する化学物質に関する研究を実施した。
研究方法
規格試験の性能評価に関する研究では、食品衛生法における公定法、並びにその代替試験法について、衛生研究所、登録検査機関等により試験室間共同実験を実施し、性能評価を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品に残存する化学物質の分析法の開発等を行った。
結果と考察
規格試験の性能評価に関する研究では、ポリスチレン製器具・容器包装の揮発性物質試験法、ナイロン製器具・容器包装のカプロラクタム試験法、並びに汎用性の高い代替法について、各試験法の性能を評価した。揮発性物質試験法については、GC-FID、GC/MS及びHS-GC-FIDの性能評価を行った。その結果、公定法に準拠したGC-FIDの性能パラメーターの値は目標値を十分に満たしており、規格試験法として十分な性能を有していた。食品衛生法では採用されていないGC/MSの性能パラメーターの値は目標値を満たしており、規格試験法の代替法として十分に適用可能であった。しかし、GC-FID及びGC/MSでは試料の溶解液を直接注入するため装置が汚染されやすい。そのため、注入口部分の状態に注意を払う必要がある。一方、HS-GC-FIDの性能パラメーターの値はいずれも目標値を満たしており、規格試験法の代替法として十分に適用可能であった。カプロラクタム試験法については、公定法及びGC/MSの性能を評価した。公定法の性能パラメーターの値は目標値を十分に満たしており、規格試験法として十分な性能を有していた。食品衛生法では採用されていないGC/MSについては、絶対検量線法では一部の性能パラメーターの値が目標値を満たさなかったが、内標準法は規格試験法の代替法として十分に適用可能であった。ただし、揮発性物質試験法、カプロラクタム試験法ともに、一部の試験機関ではピーク割れやキャリーオーバー等の問題が発生した。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、植物油総溶出物量試験法の改良、GCを用いる試験法におけるキャリヤーガスの変更による影響及びアンチモン(Sb)及びゲルマニウム(Ge)試験におけるICP-OESを用いた代替試験法の開発に関する検討を行った。植物油総溶出物量試験法の改良では、EN1186-2オリブ油総溶出物量試験法のうち、試料中の残存植物油の抽出法について検討を行った。その結果、内標準を加えたシクロヘキサンに浸漬し、40℃で120分間の振とう抽出を1回行うという簡便な抽出法で、試料中の残存植物油量を求められることを明らかにした。昨年度の検討結果と併せて、操作が簡便でしかも有害試薬を使用しない植物油総溶出物量試験法を確立した。本改良法により得られた植物油総溶出物量はEN法の結果とほぼ一致していた。GCを用いる試験法におけるキャリヤーガスの変更による影響では、GC-FID及びGC-NPDによる公定法について、キャリヤーガスの違いによる影響を確認した。GC-FIDによる試験では、一部でキャリヤーガスにより測定対象物のピーク形状または面積に変化が認められたが、適否判定に支障をきたすほどではなく、いずれにおいても規格試験法として十分な性能を示した。また、窒素がキャリヤーガスとして規定されていないGC-NPDを用いるアミン類試験では、代替試験法として窒素ガスが適用可能であった。しかし、トリエチルアミンの保持時間付近に複数のピークが認められたため、慎重に定性を行う必要があった。Sb及びGe溶出試験におけるICP-OESを用いた代替試験法の開発では、試験溶液を濃縮して測定する蒸発乾固法及びキレート法、試験溶液にSb及びGeを添加し定量可能な濃度として測定する標準添加法及び既知量添加法について検討し、その適用性を検証した。蒸発乾固法では、Sb及びGeの揮散を防ぐ方策を見出すことができなかった。キレート法は代替法として十分な性能を有していたが、公定法では使用しないキレート繊維や試薬・試液が必要であった。一方、標準添加法及び既知量添加法は代替法として十分な性能を有していた。これらは大部分の試験機関で実施することが可能であり、代替法として有用と考えられた。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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収支報告書

文献番号
201426016Z