文献情報
文献番号
201426011A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
- 續 輝久(九州大学大学院 医学研究院生体制御学講座)
- 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 山田雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 増村健一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 鈴木孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝毒性物質の作用には一般に閾値がないとされており、どのように微量であってもヒトに対してリスクを示すと考えられている。このため遺伝毒性を示す発がん物質にはADI が設定されず、行政上の規制が困難となる。本研究では、遺伝毒性陽性と判定された化学物質の発がんリスクを適切に評価することを目的とし、陽性反応を定量的に評価するための手法の開発と、陽性反応における閾値の発生機序の解明を目指す。
研究方法
4種類の代表的な肝発がん遺伝毒性物質について、トランスジェニック突然変異(TG)試験を実施した。XPA欠損細胞を作成し、酸化的損傷に対する修復機構と、閾値の有無を検討した。動物実験での低用量における閾値に関しては、低用量臭素酸カリウムを経口投与して、発がん実験を行った。食品添加物のうち指定添加物に関して実施された遺伝毒性試験データデータベースを作成した。また、TG試験と発がん性のデータベースも作成した。低用量の遺伝毒性物質の曝露評価のためにLC-MSを用いた網羅的タンパクアダクトーム解析を試みた。
結果と考察
4種類の代表的な肝発がん遺伝毒性物質について、トランスジェニック突然変異(TG)試験を実施し、試験結果から遺伝毒性ベンチマークドーズ(TG-BMDL10)を算出し、発がんのベンチマークドーズ(CARCBMDL10)と比較したところ、量的相関性が高いことから、発がん性データが十分でない場合でも、TG試験結果から発がんリスクを評価できる可能性が示唆された。DNA酸化損傷である8-oxodGは1分子では塩基除去修復が働くが、複数クラスタリングしている場合はヌクレオチド除去修復が関与することがXPA欠損細胞を用いた研究で明らかになった。低用量臭素酸カリウムを経口投与して、発がん実験を行った。Mutyh遺伝子が欠損した個体でも臭素酸カリウムの突然変異誘発に関しても「閾値」が存在することを示唆された。全ての化学物質に対するTG試験データベースを作成し、TG試験結果と発がん性の相関について検討した。発がん性との相関性は高く、TG試験は発がんのリスク評価に有用と判断された。ヒト血清サンプル中のヒトアルブミン(HAS)システイン残基における未知の付加体を、MS/MSスペクトルの類似性から網羅的に解析したところ、ラットヘモグロビンにおける新規のグリシドールアダクトとして、125番目のシステイン残基のアダクトを検出した。
結論
本研究では遺伝毒性試験データをヒト発がんリスク評価に利用するために、遺伝毒性の量的反応性を考慮した手法の開発を目指す。TG試験を実施し、その試験結果から遺伝毒性ベンチマークドーズ(TG-BMDL10) を算出し、発がんのベンチマークドーズ (CARC-BMDL10) と比較したところ、発がん性データが十分でない場合でも、TG試験結果から発がんリスクを評価できる可能が示唆された。DNA酸化損傷である8-oxodGは1分子では塩基除去修復が働くが、複数クラスタリングしている場合はヌクレオチド除去修復が関与することがXPA欠損細胞を用いた研究で明らかになった。低用量における閾値に関しては、低用量臭素酸カリウムを経口投与して、発がん実験を行った。Mutyh遺伝子が欠損した個体でも酸化剤の発がん性に関して「閾値」が存在することを示唆する結果を得た。さらに臭素酸カリウムの突然変異誘発に関しても「閾値」が存在することを示唆された。食品添加物のうち指定添加物に関して実施された遺伝毒性試験データ、細菌を用いる復帰突然変異試験・哺乳類細胞を用いる染色体異常試験・齧歯類を用いる小核試験データベースを作成した。また、全ての化学物質に対するTG試験データベースを作成し、TG試験結果と発がん性の相関について検討した。TG試験は発がんのリスク評価に有用と判断された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
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