食品防御の具体的な対策の確立と実行検証に関する研究

文献情報

文献番号
201426001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品防御の具体的な対策の確立と実行検証に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(東海大学海洋学部 水産学科食品科学専攻)
  • 高谷 幸(公益社団法人日本食品衛生協会)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、過年度の研究成果である「食品工場における人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」や「食品防御ガイドライン」を実際の食品工場に適用することで、意図的な食品汚染の実行可能性を検証し、さらに、これらの充実・精緻化を図ること、また食品による健康被害の早期検知及び原因究明に向けた、食品の市販後調査(以下、PMM)を実現する手法の精緻化及び衛生研究所等における人体(血液・尿等)試料の検査手法の標準化に向けた基礎調査を行うことを目的とする。
研究方法
(1)米国における食品防御対策を体系的に位置づけるため、FDA、USDAなど政府機関等の公表情報から、最新情報の収集・整理を行った。(2)日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)との連携により、中・小規模食品工場及び物流施設への現地調査を実施し、既存研究で作成したチェックリストや米国のCARVER+Shock法を基にして開発した脆弱性評価手法を実際に適用した。(3)平成24年度に作成した食品防御ガイドライン案(主に大規模食品工場向け)に基づき、中小規模食品工場にも適用可能なガイドラインの作成・検討を行った。(4)人体試料を用いた理化学検査の実施状況を把握する目的で、全国の地方衛生研究所(以下、地衛研)を対象に、アンケート調査を実施した。(5)食品PMMについては、過年度に実施した夏季の結果を踏まえ、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)との連携により、再度、夏季を対象に分析を行い、この時期におけるPMMの再現性に焦点を当てて検討した。
結果と考察
(1)米国(FDA及びUSDA)において平成26年度に講じられた主な食品テロ対策の概要を整理した。(2)チェックリスト及び脆弱性評価手法の適用可能性を確認した。その結果、中・小規模食品工場や物流施設において共通的な課題がみられ、具体的な食品防御対策について、今後さらなる改善が必要であることが確認された。(3)中規模食品工場の実地調査を実施し、現行の「食品防御対策ガイドライン」における課題を確認した。その結果、特に大きな修正はないと考えられたが、近年の食品への意図的な汚染物質混入事件を受け、食品防御の重要性が再認識されており、今後、各工場等における従業員の管理方法等の表現について、今後検討する必要がある。(4)地衛研を対象としたアンケート調査の結果、食中毒事例のほとんどは微生物によるものであるため、地衛研では食中毒事例の原因究明における理化学検査の実施実績は微生物検査に圧倒的に低いこと、特に、人体試料の検査は稀であることが明らかとなった。(5)食品市販後調査について、夏季を対象期間とし、再現性の分析に焦点を当てて検討を行った結果、食中毒の可能性が疑われる食品の検出から生協連と連携しての対応までのやり取りについて、細菌性の食中毒が増加する夏季における手法と体制の実効性を、再現性をもって確認した。これにより、PMM調査の枠組みの実用性を向上することができた。
結論
中規模食品工場及び物流施設における食品防御に対する脆弱性評価及びチェックリストの適応を試み、これらの工場・施設における課題を抽出した。また、中規模食品工場に対する実地調査を行って現行のガイドラインにおける課題を確認し、特に大きな修正は必要ないことを把握した。食品工場現場の意見を多く取り入れた、実効性の高い食品防御対策ガイドライン最終案を作成した。さらに、地衛研を対象としたアンケート調査の結果、健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについての指針等が必要であることが示された。また、食品PMMについては、食中毒の可能性が疑われる食品の検出から生協連と連携しての対応までのやり取りについて、細菌性の食中毒が増加する夏季における手法と体制の実効性を、再現性をもって確認した。これにより、PMM調査の枠組みの実用性を向上することができた。今後は、過去に取得したデータを通じた分析手法の高度化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201426001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品防御の具体的な対策の確立と実行検証に関する研究
課題番号
H24-食品-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(東海大学海洋学部 水産学科食品科学専攻)
  • 高谷 幸(公益社団法人日本食品衛生協会)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進部)
  • 田村 光平(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
9.11事件等を契機に世界各国でテロの危険性の認識が高まる中、テロの中でも実行が容易な「意図的な食品汚染行為(食品テロ)」の危険性に注目が集まっている。この背景から、本研究では、過年度の既存研究をさらに発展させ、主に(1)「食品工場における意図的な食品汚染防止に関するチェックリスト」を活用して、中小規模食品工場における意図的な食品汚染の実行可能性を検証すること、(2)食品企業が食品防御を行うためのガイドラインを作成すること、また、人為的な食品汚染行為の早期察知のためのアクティブサーベイランスとしての活用可能性を検証するために、(3)食品市販後調査(以下、食品PMM)を実現する手法の開発、検証を行うこと等を目的とする。
研究方法
以下に示す6項目について、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)との連携と、検討会における生物・化学・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。(2)(3)は食品工場への現地調査、(5)は日本生協連より健康調査及び商品購入データの提供を受けた。
(1)米国における食品防御対策の体系的把握
(2)中小規模の食品工場等における脆弱性評価の実施とチェックリストの適用可能性の検討
(3)食品防御のためのガイドラインの検討
(4)衛生研究所での「人体(血液、尿等)試料の検査手法」の標準化に向けて
(5)食品テロの早期察知への食品PMMの活用可能性に関する実証実験
結果と考察
(1)米国(FDA及びUSDA)の食品テロ対策に関する最新情報を整理し、体系的に位置づけた。(2)中小規模食品工場及び物流施設について現地調査を実施し、わが国に適合した脆弱性評価手法を当該製造工程に適用し、脆弱箇所を把握するなど、その実行可能性を検証した。また、同時に人為的な食品汚染対策チェックリストを適用し、対策の実行可能性やチェック可能性を検討し、その実行可能性を検証した。(3)平成23度に作成した「食品防御対策ガイドライン(案)」を、中小規模食品工場に適用することで、これらの規模の工場にも適用可能なガイドラインへの改訂作業を実施した。さらに、これらの実地調査の結果を踏まえて、ガイドラインの項目及び文言を再検討した。(4)地衛研を対象としたアンケート調査の結果、食中毒事例のほとんどは微生物によるものであるため、地衛研では食中毒事例の原因究明における理化学検査の実施実績は微生物検査に圧倒的に低いこと、特に、人体試料の検査は稀であることが明らかとなった。(5)食品市販後調査について、分析サイクルを短くしてよりリアルタイム性を高めた検証、細菌性食中毒が増加する夏季を対象にした検証、健康被害疑いの食品が検出された際の追跡調査に関わる体制の検証、およびこれらの再現性の検証を行い、その活用可能性を確認した。これにより、PMM手法の実用性を向上することができた。
結論
計9か所の中小規模食品工場及び物流施設における食品防御に対する脆弱性評価及びチェックリストの適応を試み、これらの工場・施設における課題を抽出した。また、中小規模食品工場・物流施設に対する実地調査を行い、過年度研究で作成したチェックリストにおける課題を確認し、特に大きな修正は必要ないことを把握した。食品工場の規模に関わらず適用可能となるように、平成23年度に作成した「食品防御対策ガイドライン(案)」を修正し、さらに解説と一体化した改訂版を作成した。さらに、地衛研を対象としたアンケート調査の結果、健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研の理化学検査担当における人体試料の取扱いについての指針等が必要であることが示された。また、食品PMMについては、細菌性の食中毒が増加する夏季においても、2週間サイクルで実行することができ、かつアラートが提示された際の追跡調査に関しても、これに対応する体制が構築できることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201426001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により開発した脆弱性評価手法・チェックリストの適用により、中小規模食品工場・物流施設における食品防御対策上の問題点を整理したとともに、「食品防御対策ガイドライン」の修正を行った。また、健康危機管理事例への早期対応及び安全な試験実施のため、地衛研における人体試料の取扱いに関する指針等が必要であることが示された。さらに、PMMについては、細菌性の食中毒が増加する夏季においても、2週間サイクルで実行することができ、かつアラートが提示された際の追跡調査に対応可能な体制が構築できることが確認された。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
『食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)』(平成25年度改訂版)を作成し公開した。
平成26年度食品安全行政講習会 平成26年8月29日(厚生労働省医薬食品局食品安全部)において上記ガイドラインの説明を行った。
その他行政的観点からの成果
本研究成果である食品防御対策ガイドラインやチェックリストを研究代表者の所属機関や日本食品衛生協会のホームページ上に公開し活用されている。
都道府県の研修会資料として用いられている。
平成26年度 第4回食品技術講習会 平成27年3月5日(東京都福祉保健局健康安全部食品監視課)、平成26年度HACCP研修会 平成27年1月28日(三重県健康福祉部)
その他のインパクト
食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会(農林水産省)座長を務めた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Harumi Bando, Hiroaki Sugiura, Tomoaki Imamura, et al
Association between first airborne cedar pollen level peak and pollinosis symptom onset: a web-based survey.
International Journal Of En-vironmental Health Research. , 25 (1) , 104-113  (2014)
原著論文2
Yoshiyuki Kanagawa, Manabu Akabane, Atsushi Hasegawa, et al
Developing a national food defense guideline based on a vulnerability assessment of intention-al food contamination in Japanese food factories using the CARVER+Shock Vul-nerability Assessment Tool.
Foodborne Pathogens and Disease. , 11 (12) , 953-959  (2014)
原著論文3
神奈川芳行、赤羽学、今村知明、他
食品汚染防止に関するチェックリストを基礎とした食品防御対策のためのガイドラインの検討.
日本公衆衛生雑誌 , 61 (2) , 100-109  (2014)
原著論文4
Tomomi Sano, Manabu Akahane, Hiroaki Sugiura, et al
Internet survey of the influence of environ-mental factors on human health: environmental epidemiologic investiga-tion using the Web-based Daily Ques-tionnaire for Health.
International Journal Of En-vironmental Health Research , 23 (3) , 247-257  (2013)
原著論文5
Hiroaki Sugiura, Manabu Akahane, Yasushi Ohkusa, et al
Prevalence of Insomnia Among Residents of To-kyo and Osaka After the Great East Japan Earthquake: A Prospec-tive Study.
Interactive Journal of Med-ical Research. , 2 (1) , e2-  (2013)
原著論文6
前屋敷明江、赤羽学、杉浦弘明、他
食品市販後調査の実行可能性の検証とシグナル検出方法の検討
医療情報学 , 31 (1) , 13-24  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
2020-10-02

収支報告書

文献番号
201426001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,900,000円
(2)補助金確定額
9,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 960,745円
人件費・謝金 2,076,438円
旅費 433,626円
その他 6,429,200円
間接経費 0円
合計 9,900,009円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
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