中小規模事業場向けのリスクアセスメント手法の開発

文献情報

文献番号
201425014A
報告書区分
総括
研究課題名
中小規模事業場向けのリスクアセスメント手法の開発
課題番号
H25-労働-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
和田 有司(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門爆発利用・産業保安研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 牧野 良次(国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門爆発利用・産業保安研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働災害の多くは中小事業場で発生している.したがって,労災発生件数削減のためには中小事業場における災害を効率的に削減することが重要であり,労災削減にはリスクアセスメントの実施が効果的であると期待されている.しかしながら,現実には中小事業場でこそリスクアセスメントの普及が進んでいない.その要因の一つとしてリスクアセスメントを実施するための人員的,時間的,資金的余裕が必ずしも十分でないことが考えられる.また,リスクアセスメントの効果が「見える化」されていないために本当に効果があるかどうかを実感できず,結果としてリスクアセスメントを実施するモチベーションが上がらないという理由も考えられる.上記2点の双方向から中小事業場におけるリスクアセスメント定着を促進する手法を開発することが本研究の目的である.
研究方法
(1)保安力評価を基礎とした導入容易なリスクアセスメント手法の開発:既存の大規模事業所向け保安力評価システムを基礎として,中小事業場で容易に適用できる簡易リスクアセスメント手法を開発する.具体的には「はい・いいえによる回答」や「5段階からの選択による回答」といった簡単に回答可能な質問群を作成し,回答パターンに応じて「事業場のどこにどの程度のリスクが存在するか」が近似的に定量化される手法を開発する.
(2)労働災害が企業経営に与えるダメージの「見える化」:過去に発生した事故とその事故が企業経営に与えたダメージの関連について情報収集と整理を行う.十分な情報が得られない場合には推定により補完する.整理した情報を閲覧できるウェブサイトを構築し,経営者が求める情報に容易にアクセスできる形で情報提供する基盤を整える.
結果と考察
(1)リスクアセスメント導入阻害要因の分析:全国の中小規模事業場5,000社を対象にリスクアセスメントの普及状況を調べるためのアンケート調査を実施した.有効な回収数は440(8.8%)であった.そのうちリスクアセスメントを実施しているのは72社(16.4%)であった.データからは,リスクアセスメントを実施していない企業は実施している企業(のリスクアセスメント実施前)と比較して1年あたり1社あたりの労働災害数が少ないことが示される.このことから,自社で労働災害がそれほど発生していないことがリスクアセスメントを実施しないひとつの理由だと推察される.ただし,労働時間1時間あたりの労働災害発生数では両者の間に大きな違いはない.(2)簡易リスクアセスメント評価項目の開発:平成25年度に作成したチェック形式の簡易リスク評価項目を中小規模事業場の現場で試行した.安全に関する注意点が網羅されているとの評価を受けた.回答に要した時間は各企業おおむね1時間程度であり,短時間で実施可能という目標はクリアした.ただ,現状の評価項目はもともと大手企業向けの評価項目がベースになっているため,中小企業にそぐわない項目もあるとの指摘を受けた.今後,こられの指摘を参考に評価項目の改善を進める.(3)労働災害が企業経営に与えるダメージの見える化:上場企業を対象として,事故後の財務パフォーマンスおよび株価の変動を分析した.
結論
(1)平成27年度での課題としては,中小規模事業場現場における簡易リスク評価の試行を継続すること,チェック項目のブラッシュアップ,および詳細リスク評価結果との整合性をチェックすることがあげられる.
(2)自社で労働災害がそれほど発生していないことがリスクアセスメントを実施しないひとつの理由であると推察される.平成27年度では普及促進策について検討する.

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201425014Z