文献情報
文献番号
201425011A
報告書区分
総括
研究課題名
労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 荒木田 美香子(国際医療保健福祉大学 小田原保健医療学部)
- 林田 賢史(産業医科大学 産業保健学部)
- 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
- 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
労働人口の高齢化が進むわが国では、労働者の健康への投資は、企業や社会が活力を維持するために重要な取組みと考えられるが、法令を超えた積極的な産業保健活動の展開を促すためには、労働者の生産性の向上への貢献など、経営上の視点での効果が示されることが不可欠であるため、今後、我が国における労働者の健康状態や事業場等における産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響について検証することが必要である。本研究ではその第一歩として、生産性をアウトカムとした産業保健研究の方法や課題等について、一定の指針を示すことを目的としている。
研究方法
研究の2年目として、以下の検討を行った。
1)疾病による生産性低下と損失の分担構造を明らかにするため、私傷病欠勤・休職制度と企業規模との間の関連性について、文献上に記載されたデータを用いて分析した。
2)企業におけるアブセンティーズムとプレゼンティーズムによる損失の発生状況を調査した。
3)開発中の日本版presenteeism尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。
4)健康問題による生産性低下の評価指標として一般的に用いられるアブセンティーイズムとプレゼンティーイズムと産業保健活動にかかるコストの関係について、多施設共同研究のデータを用いて、検討した。
5)製造業1社および小売業1社において、経営上および産業保健上懸念される健康課題を聴取した上で、それぞれの課題を解決するための介入プログラムを策定し、有効性を検討するためにクラスターRCTのデザインによる介入を開始し、その過程を記述した。
6)生産性への貢献を目指す効果的な産業保健のあり方について、企業の統括産業医で構成する研究協力グループを構成し、フォーカスグループディスカッションを実施して、その結果をまとめて考察した。
1)疾病による生産性低下と損失の分担構造を明らかにするため、私傷病欠勤・休職制度と企業規模との間の関連性について、文献上に記載されたデータを用いて分析した。
2)企業におけるアブセンティーズムとプレゼンティーズムによる損失の発生状況を調査した。
3)開発中の日本版presenteeism尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。
4)健康問題による生産性低下の評価指標として一般的に用いられるアブセンティーイズムとプレゼンティーイズムと産業保健活動にかかるコストの関係について、多施設共同研究のデータを用いて、検討した。
5)製造業1社および小売業1社において、経営上および産業保健上懸念される健康課題を聴取した上で、それぞれの課題を解決するための介入プログラムを策定し、有効性を検討するためにクラスターRCTのデザインによる介入を開始し、その過程を記述した。
6)生産性への貢献を目指す効果的な産業保健のあり方について、企業の統括産業医で構成する研究協力グループを構成し、フォーカスグループディスカッションを実施して、その結果をまとめて考察した。
結果と考察
1)企業規模と雇用保障期間の長さの間には正の相関があること、小規模企業の73%は法定の健保給付のみであり、企業規模が大きくなるほど、上乗せの給付のある企業の割合が増加すること、企業規模と賃金保障の総額の間には正の相関が認められることが分かった。
2)アブセンティーズムは、疾病休業日数が最多であったのは「新生物」、次いで「精神および行動の障害」「循環器系の疾患」であった。年間の損失額は、22,547,075円であった。一方、プレゼンティーズムは、男女とも「腰痛または首の不調や肩こり」の訴えが多かった。
3)日本版presenteeism尺度の再現性が確認できた。また、日本版presenteeism尺度の業務の支障8項目の信頼性と一定の妥当性が確認できるとともに、一部変更が必要な項目が明らかになった。その結果をもとに修正したpresenteeism尺度(案)を提示した。
4)製造業においては、「人間工学的評価と改善」に関する全3回の介入プログラム、小売業では、「部下の成功体験を引き出すコミュニケーション技法」を習得するための介入プログラムを実施するとともに、それぞれ生産性の指標を含むベースラインデータを収集の上、定期的に効果評価を測定している。
5)プレゼンティーイズムによる損失額が大きい症状のうち、対策が行われていたものはメンタルヘルスについて、対策費用と関連する症状に起因するプレゼンティーイズムの損失額とを比較、検討した結果、対策費用と比較してプレゼンティーイズムによる損失額は5.8倍から33.9倍であった。
6)フォーカスグループディスカッションの内容を分析した結果、「生産性への貢献を目指す効果的な産業保健のあり方」について、6つのテーマが抽出された。まず労働者の健康と関係する生産性の定義を行ったうえで、生産性の代理指標を用いた評価をもとに産業保健活動が検討されることになる。その際、長期的な生産性の向上と短期的な生産性の向上の異なる視点が存在するが、短期的な生産性の向上を目指す場合には、産業保健活動のあり方に大きく影響をする可能性があるため、十分な検討が必要であると考えらえた。
2)アブセンティーズムは、疾病休業日数が最多であったのは「新生物」、次いで「精神および行動の障害」「循環器系の疾患」であった。年間の損失額は、22,547,075円であった。一方、プレゼンティーズムは、男女とも「腰痛または首の不調や肩こり」の訴えが多かった。
3)日本版presenteeism尺度の再現性が確認できた。また、日本版presenteeism尺度の業務の支障8項目の信頼性と一定の妥当性が確認できるとともに、一部変更が必要な項目が明らかになった。その結果をもとに修正したpresenteeism尺度(案)を提示した。
4)製造業においては、「人間工学的評価と改善」に関する全3回の介入プログラム、小売業では、「部下の成功体験を引き出すコミュニケーション技法」を習得するための介入プログラムを実施するとともに、それぞれ生産性の指標を含むベースラインデータを収集の上、定期的に効果評価を測定している。
5)プレゼンティーイズムによる損失額が大きい症状のうち、対策が行われていたものはメンタルヘルスについて、対策費用と関連する症状に起因するプレゼンティーイズムの損失額とを比較、検討した結果、対策費用と比較してプレゼンティーイズムによる損失額は5.8倍から33.9倍であった。
6)フォーカスグループディスカッションの内容を分析した結果、「生産性への貢献を目指す効果的な産業保健のあり方」について、6つのテーマが抽出された。まず労働者の健康と関係する生産性の定義を行ったうえで、生産性の代理指標を用いた評価をもとに産業保健活動が検討されることになる。その際、長期的な生産性の向上と短期的な生産性の向上の異なる視点が存在するが、短期的な生産性の向上を目指す場合には、産業保健活動のあり方に大きく影響をする可能性があるため、十分な検討が必要であると考えらえた。
結論
企業が労働者の健康に投資することは、労働者の健康の保持増進のみならず、活力ある企業組織や社会の実現にも効果が期待できる。しかし、様々な経営上の課題が存在し、多くの利害関係者が存在する中で投資判断がなされるためには、投資が企業活動にとってどのような価値を生み出すのか、説明できることが必要である。本研究では、最終年度において、「産業保健活動の生産性への貢献を意識したプランニングのための指針」と「生産性への貢献を目指す効果的な産業保健活動のあり方に関する提言」の作成を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-10
更新日
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