職場の受動喫煙防止対策と事業場の生産、収益並びに労働者の健康面及び医療費等に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
201425006A
報告書区分
総括
研究課題名
職場の受動喫煙防止対策と事業場の生産、収益並びに労働者の健康面及び医療費等に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 雅規(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 中田 光紀(産業医科大学産業保健学部 産業・地域看護学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康面以外に、喫煙が企業経営にもたらす不利益を明らかにすることで、経営者が喫煙対策を積極的に推進する根拠を収集する。
研究方法
1.労災事故の発生記録を直前の健診の問診票と突合することで、喫煙者と非喫煙者の労災の発生率の差を比較した。
2.某企業の特定健診のデータを分析し、「喫煙すること」が2つめのリスクとしてカウントされることによる特定保健指導に関わる経費負担の増加を算出した。
3.某ファミリーレストランチェーン店で、全席禁煙化した店舗と喫煙・禁煙区域分けのみの店舗の営業収入を7年間にわたり比較し、全席禁煙化が営業収入に与える効果・影響を検討した。
4.淡路島の救急外来の受診者の喫煙状況を分析し、喫煙者と非喫煙者の受診状況を比較した。
5.喫煙・禁煙が免疫機能に及ぼす影響の有無に関する文献的検索を行った。
結果と考察
1.労働災害事故と本人の喫煙状況に関する振り返り調査(平成25年度:1年目)
某製鉄所の労働災害の発生率は、喫煙者が起こした率が非喫煙者よりも1.49倍(95% 信頼区間:1.02-2.19)と有意に高かったことを5年間の統合オッズ比で示した。
2.喫煙により増大する特定健診・特定保健指導の経費の分析(平成26年度:2年目)
 40歳以上の男性3,079名(喫煙率47.7%)の特定健診の分析から、動機付け支援と判定された者は237名(7.6%)、積極的支援は283名(9.1%)であった。喫煙が原因で積極的支援となった者は149名で、積極的支援の対象者の52%であった。積極的支援の対象となることによる余分な費用を3万円とすると、直接経費だけで450万円の負担が発生することを示した。
3. 某ファミリーレストランの営業収入の分析(平成26年度:2年目)
 全国に250店舗の営業を行っている某ファミリーレストランの全客席禁煙化(喫煙専用ルームあり)の改装情報と7年間の営業収入情報を、季節変動と国全体のGDPで調整して分析したところ、全席禁煙化の店舗群は、喫煙席を残している店舗よりも経済不況の影響を受けにくい(収入の減少度合いが小さい)ことが認められた。
4.喫煙の有無と救急外来の受診状況の分析
 淡路島において、平成14(2001)年度から平成24(2014)年度の11年間の救急外来の受信状況を分析したが、救急外来の受診率に関して非喫煙者と喫煙者で有意な差はみられなかった。
5.喫煙・受動喫煙対策の免疫学的評価に関する文献的検討
 禁煙によって明らかに免疫機能の改善効果が認められたものが6編、効果が限定的であったものが4編、効果が認められなかったものが2編であった。禁煙は免疫機能を回復させる効果がある可能性が見込まれた。
結論
喫煙によって、①労災事故のリスクが高いこと、②特定健診において余分な費用負担が発生すること、③客席を全席禁煙化した飲食店では不況の影響を受けにくいこと、④禁煙することで免疫機能が改善する可能性があることを示すことで、企業が健康問題以外の観点から積極的に喫煙対策に取り組む根拠を示すことができた。
 本研究の成果を衛生管理者・産業医講習会を通して周知することで、積極的に喫煙対策に取り組む企業が増え、健康日本21(第二次)やがん対策推進基本法で掲げられたように国民の喫煙率の数値目標が達成され、最終的には喫煙による健康障害の軽減が実現出来ると考えられる。


公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201425006Z