社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究

文献情報

文献番号
201424051A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究
課題番号
H26-医療-指定-038
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学理工学術院)
  • 水流 聡子(東京大学)
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター)
  • 吉田 雅博(国際医療福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本課題は近年の取り組みの到達点を踏まえ、診療ガイドラインが医療施策へ展開され、社会において適切に発展、機能することを目指して、関連諸課題の理論的・実証的研究に取り組み、日本社会において望まれる診療ガイドラインの在り方・方向性を提示することを目指す。本課題では医学研究者(疫学、ヘルスサービス研究、医療経済学)を中心に工学・法学専門家の参画を得、さらにNPO・患者団体と協働して社会的責任に応える医療の基盤となる診療ガイドラインの課題と可能性の研究に取り組む。研究成果は関連学会や成果発表事業、患者会やマスメディアとの懇談会などを通じて社会にも積極的に還元し、関心を持つ人々との継続的な対話、今後の取り組みに向けた協力関係の基盤を構築する。本課題の成果は厚生労働省が公益財団法人医療機能評価機構に委託事業としている診療ガイドラインをはじめとする医療情報サービス”Minds”にも積極的に提供し、その事業の推進を支援する。
本課題は近年の内外の取り組みの到達点を踏まえ、診療ガイドラインが医療施策へ展開され、社会的責任に応える医療の基盤として充実し、より良く機能していくことを目指し、関連諸課題の理論的・実証的研究に取り組む。
研究方法
課題に応じて文献研究、疫学研究、ワークショップ等の方法を適用する。  
・クリティカル(クリニカル)・パスとの連携
・診療ガイドラインからの診療の質指標(quality indicator)の開発と試行
・診療ガイドラインの法的位置づけ
・診療ガイドラインの作成・利用・普及における患者・一般市民参加の方向性
・コミュニケーションの基点としての診療ガイドラインの可能性
・診療ガイドラインを通した医療者の社会的責任とプロフェッショナリズムの検討
臨床家・患者の意思決定支援という診療ガイドラインの伝統的な役割に加え、医療の社会的信頼の再生に向け、診療ガイドラインの新たな可能性を探る。全体を2年計画として、診療ガイドラインに関連する横断的課題を申請者が包括的に取り扱うと共に、各分担研究者が連携して、それぞれの専門的課題に取り組む。 
各年度末に公開フォーラムを開催し、成果還元と、今後に向けた意見交換の場を設定する。
結果と考察
診療ガイドラインの臨床現場への普及と現場から作成主体フィードバック(診療ガイドライン改善プロセスモデル)を目指して、患者状態適応型パスシステム(PCAPS)との連携を進めた。PCAPS研究会において「リンパ浮腫診療ガイドライン構築過程」「乳がんガイドラインの組み込みによる推奨標準の実装状態評価」「多重ガイドラインの臨床活用に関する支援システムの必要性と患者毎疾病管理の最適化」「PCAPSサーベイに基づくガイドラインへの新たな基準の組み込み」などのテーマで実証研究に着手した。
レセプトデータベースを用いて約300万人の被保険者から中壮年期の虚血性心疾患患者1860人を抽出し、各種診療ガイドラインで実施が推奨されている心臓リハビリテーション実施は2割余りに留まる事を明らかにした。心臓リハビリテーションに関しては策定した23指標を京都大学附属病院において試行し、その成果を心臓リハビリテーション学会(2014年7月京都)のシンポジウムで報告した。診療ガイドライン作成の新たな課題として、2014年の「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立と共に希少疾患のガイドライン作成が注目され、小児科領域疾患をモデルとしてその問題に取り組んだ。米国の”Choosing Wisely”キャンペーンを診療ガイドラインとの視点から考察し、Overuse (過剰医療)とunderuse(過少医療)の両方の視点から、エビデンス診療ギャップの問題の検討を進めた。
診療ガイドラインの法的課題については平成25年の「抗生剤使用についての医師の裁量権に関する判決」(岡山地裁)、「稀に生ずるアナフィラキシーショックの説明義務の有無」(大阪地裁)など近年の事例を検討した。
日本神経学会、日本産婦人科学会、日本緩和医療学会、日本脳神経モニタリング学会、日本腎臓学会などのシンポジウム・講演、日本肝臓学会、腹部救急学会などの診療ガイドライン外部評価を通して、診療ガイドラインを起点とする専門家・学会の社会的責任について視点と課題を提示した。2015年1月10日に公開フォーラム(東京・京都大学品川オフィス)を開催し、成果報告と意見交換を行った。
結論
初年度は概ね当初計画通り研究は進捗した。診療ガイドラインが社会的責任に応える医療の基盤として成熟していくには、今何が必要とされているか、政策的な方向性の手がかりを示すことを目指して、引き続き各課題への取り組みを推進したい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201424051Z