首都直下地震に対応したDMATの戦略的医療活動に必要な医療支援の定量的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201424036A
報告書区分
総括
研究課題名
首都直下地震に対応したDMATの戦略的医療活動に必要な医療支援の定量的評価に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-023
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
定光 大海(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 大友 康裕(東京医科歯科大学大学院)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院救命救急センター)
  • 直江 康孝(川口市立医療センター救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院)
  • 高山 隼人(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 布施 明(日本医科大学付属病院)
  • 岡垣 篤彦(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター医療情報部)
  • 梶野 健太郎(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年12月に内閣府中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが公表した「首都直下地震の想定被害と対策について」の報告書のなかで想定された最大の人的被害は、建物倒壊による死者が11,000人、揺れによる建物倒壊による要救助者が72,000人、火災による死者が16,000人、火災と建物倒壊による死者が23,000人、負傷者数が123,000人(最大被害が予想される冬・夕の風速8m/sという条件下)という甚大なものであった。一方、報告された被害想定には医療機関の実態が明らかにされていない。大災害時の初期医療支援にDMATのはたす役割は大きく、災害拠点病院での診療支援や広域医療搬送が重要な任務になる。そこで、内閣府中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループによる被害想定に基づいて医療機関被害の定量的評価を行い、さらに東京都および近隣県の防災計画を調査することでDMATの必要数を策定する根拠とし、実効的医療支援戦略を検討することを目的とした。
研究方法
公表された被害想定に基づき、都県の医療機関や災害拠点病院の位置情報を地図上に可視化し、震度分布や火災状況、道路閉塞率等をそれに重層化させることでより正確な災害時情報を得る。それにより、被災する医療機関とその病床数、稼働可能な医療機関数とその病床数、災害拠点病院として対応可能な病院数と病床数等の試算を行う。同時に東京都および近隣県の防災計画について調査することで首都直下地震における医療ニーズ及び医療支援の全体像を把握し、遠隔地からの支援の方法論も検討する。今年度に検討した結果は最終目的である必要DMAT数および戦略的DMAT活動の策定につなげる。
結果と考察
首都直下型地震で被災が予測されるのは、東京都、神奈川県、千葉県 埼玉県の1都3県である。この地域の災害拠点病院数は141(2014年4月現在)、1床以上の保険医療機関数は3,086(2014年8月現在)であった。250m四方で焼失家屋が10棟以上に及ぶ医療機関は444(28,337床)、道路リンク閉塞率10%以上の位置にある医療機関は510(43,643床)、さらに上記二つが重なる場所に位置し、地震被害あるいは火災被害が予想される医療機関数は638(21%)で、病床数は48,938(13%)となり、東京都内でも被災医療機関数378(33%)、機能を失う病床数30,711(23%)と試算された。地震被害もしくは火災被害が予想される災害拠点病院数は8(病床数3706床)で、133医療機関(73,669床)は病院として稼働できると推定された。道路閉塞率を考慮すると傷病者搬送が可能な災害拠点病院は122で、病床数は56,913、ICU病床数は約1,200と計算された。一方、入院治療が必要な重傷者は東京都の想定(東京湾北部地震)では21,900名と試算された。東京都の首都直下地震対応計画におけるDMAT受援計画では、参集する日本DMATは、主に、本部活動支援、地域医療搬送、病院支援などを行い、SCU設置候補地(東京国際空港、有明の丘広域防災拠点及び立川駐屯地の3か所)での本部活動や広域医療搬送、SCU内の医療活動等を都が指定する統括DMAT有資格者の指示のもとに行うという方針を示している。一方、神奈川県では3,630人のICU管理が必要な重傷者を県外へ搬送する必要が生じると試算された。千葉県、埼玉県の被害想定は今回、十分な調査ができなかったが、傷病者の避難や広域医療搬送の拠点とするとDMATの参集とその活動の重要な拠点になると予測できた。
平成25年度厚生労働科学特別研究事業「南海トラフ巨大地震の被害想定に対するDMATによる急性期医療対応に関する研究」で用いた積算法に準じて試算した初動に必要なDMAT数は464となったが、都県の計画との整合性に加えてDMATの参集や広域医療搬送の方法論も検討する余地があり、首都直下地震特有の被害想定にも対応した緻密な検討を次年度の目標としたい。
結論
地震被害あるいは火災被害が予想される医療機関数は629(21%)、喪失病床数49,191(13%)と試算された。地震被害もしくは火災被害が予想される災害拠点病院数は8(喪失ベッド数3706床)で、122医療機関(56,913床)は災害拠点病院として稼働可能と考えられた。かかるデータはDMATの戦略的医療活動の指標となる。さらに被災する都県の災害対策や遠隔地からの支援方法を定量化することがDMATの戦略的医療活動とそれに必要なDMAT数の試算につながる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201424036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 221,457円
人件費・謝金 742,140円
旅費 822,438円
その他 1,713,965円
間接経費 0円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-01
更新日
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