病院情報システムのデータを利用した薬剤市販後調査の効率化に関する研究

文献情報

文献番号
201424030A
報告書区分
総括
研究課題名
病院情報システムのデータを利用した薬剤市販後調査の効率化に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学 医学部附属病院医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(九州大学 医学部附属病院メディカル・インフォメーションセンター)
  • 村田 晃一郎(北里大学メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤市販後調査は、治験段階で検知できなかった副作用等の早期発見のために必要であるが、主に次のような問題を抱えている。1)紙ベースの記入、EDCの場合でも診療録からの転記事項が多く記載者の負担や間違いも多い。2)紙ベース運用は、全体のプロセスの迅速性に欠ける。3)記載者、対象患者選択バイアスが生じる。4)全件調査が求められても、それが実施できていないことが多い。5)同期間の該当薬処方全体の母集団を定義できていない。このような問題点の解決を目指し、本研究は次項目を目的とする。1)病院情報システムのデータを用いて薬剤市販後副作用調査の調査票記入を簡便にするシステムの構築。2)調査票記載の適切な時期を病院情報システムにより記載者に知らせる機能の開発、全件調査の可能化。3)個々の報告書と報告書作成ソフトの分離化、各施設におけるIT機器操作の極小化、副作用報告、研究者主導臨床研究の簡便な実施。
研究方法
昨年度、試作運用したSS-MIX標準化ストレージから処方、検査結果データをインポートし他の情報を入力して副作用報告書を作成するソフトウエアAEReportの他施設での稼働確認として、分担者、村田が、北里大学グループ4病院((株)NEC社製病院情報システム稼働)で動作確認した。その際、他施設での運用における問題点を洗い出した。一方、分担者、中島が、九州大学病院((株)富士通社製病院情報システム稼働)で、AEReportによる副作用報告書作成と、すべて手入力の副作用作成との所要時間の比較調査をおこなった。代表者、木村は、浜松医科大学病院において、昨年度試作した、処方を中止した際にその理由を病院情報システム画面で医師に尋ねるプログラムを実際の薬剤で実運用した。本研究は介入研究ではなく実際の患者データは扱わなかったため倫理的な配慮を特に必要としなった。
結果と考察
北里大学グループ4病院では、統合データベースを運用し、SS-MIX標準化ストレージも一つに統合化している。その結果、ストレージが存在する北里大学病院内では、AEReportは、問題なくインプリメントされ、稼働したが、グループ内別施設からの利用には、どのような業務プログラムのサーバークライアント間通信を許すか、といったセキュリティポリシー上の運用制限が判明した。九州大学病院において実施した比較調査では、サンプル患者について、AEReportによる副作用報告書作成では平均10分程度、すべて手入力による副作用報告書作成では平均15分程度の所要時間であり、この2群間には、サンプルが少ないものの有意な差があった。この差は主として当該薬処方歴、併用薬処方歴、検体検査結果の入力時間であった。浜松医科大学病院では、昨年度試作した、特定の薬剤の処方を中止した際、すぐその場で簡単な質問ウインドウを病院情報システムに提示し、診療に影響ない範囲の少ない項目の質問で、中止理由を訊く、というプログラムを4か月間、実運用できた。本年度の成果として、AEReportの移植性、省力性を示し、病院情報システムでの処方中止のタイミング、初回処方後一定期間後の評価、といった報告のオーガナイズ機能の試作を実施できた。今後、考慮すべきことは2方向であろう。一つは、検体検査コードのJLAC-10への規格標準化、もう一つは、患者プロファイル部分と副作用記述部分の、少なくとも用語の標準化である。
結論
北里大学グループ4病院での運用は、通常の病院業務とは別サービスである、副作用報告プログラムの利用という場合の問題点が明確になった。この問題は当然、臨床研究(それも割り付けなどに外部サービス必須)への発展を考えた時、避けて通れない。現時点で、副作用報告は、CRCによるEDC入力で実施されているが、今後、病院情報システムと副作用報告・登録システムがネットワークで接続される場合の切り分けの問題点が今回明確になった。九州大学病院における実測により、SS-MIX標準化ストレージを用いての副作用報告書作成の簡便性が実証された。浜松医科大学病院では、特定薬剤の処方中止の際に、すぐその場で簡単な質問ウインドウを病院情報システムに提示し、中止理由を訊く、という昨年度試作したプログラムを実運用させることができた。SS-MIX標準化ストレージ稼働病院は、昨年度の報告時の200施設から、平成26年6月時点で358施設となっている。この基盤の上で動くAEReportの移植性、省力性は、今回確認された。今後は、これらでできた報告書をいかに企業側、規制当局側がスムースに(人手を介さず)受け取ることができるようになるか、という点と、病院側では、いかに報告・評価に適切なタイミングを医師に病院情報システムが示せるか、の2点が重要となると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201424030B
報告書区分
総合
研究課題名
病院情報システムのデータを利用した薬剤市販後調査の効率化に関する研究
課題番号
H25-医療-指定-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学 医学部附属病院医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(九州大学 医学部附属病院メディカル・インフォメーションセンター)
  • 村田 晃一郎(北里大学メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤市販後調査は、治験段階で検知できなかった副作用等の早期発見のために必要であるが、主に次のような問題を抱えている。1)紙ベースの記入、EDCの場合でも診療録からの転記事項が多く記載者の負担や間違いも多い。2)紙ベース運用は、全体のプロセスの迅速性に欠ける。3)記載者、対象患者選択バイアスが生じる。4)全件調査が求められても、それが実施できていないことが多い。5)同期間の該当薬処方全体の母集団を定義できていない。このような問題点の解決を目指し、本研究は次項目を目的とする。1)病院情報システムのデータを用いて薬剤市販後副作用調査の調査票記入を簡便にするシステムの構築。2)調査票記載の適切な時期を病院情報システムにより記載者に知らせる機能の開発、全件調査の可能化。3)個々の報告書と報告書作成ソフトの分離化、各施設におけるIT機器操作の極小化、副作用報告、研究者主導臨床研究の簡便な実施。
研究方法
平成25年度は、SS-MIX標準化ストレージ内の処方・検査結果・患者基本情報を用いて副作用報告書を簡便に作成するソフトウエアAEReportを試作、運用し、報告書を書くべきタイミング(処方中止、退院、定時一斉等)を医師に知らせる仕組みも試作、運用した。平成26年度は、AEReportの他施設での稼働確認として北里大学グループ4病院((株)NEC社製病院情報システム稼働)で動作確認した。その際、他施設での運用における問題点を洗い出した。九州大学病院((株)富士通社製病院情報システム稼働)で、AEReportによる副作用報告書作成と、すべて手入力の副作用作成との所要時間比較調査を行った。浜松医科大学病院においては、処方を中止した際にその理由を病院情報システム画面で医師に尋ねるプログラムを実際の薬剤で実運用した。本研究は介入研究ではなく実際の患者データは扱わなかったため倫理的な配慮を特に必要としなった。
結果と考察
北里大学グループ4病院では統合データベースを運用、SS-MIX標準化ストレージも一つに統合化している。ストレージが存在する北里大学病院内ではAEReportは問題なくインプリメント、稼働したが、グループ内別施設からの利用にはセキュリティポリシー上の運用制限が判明した。九州大学病院における比較調査では、AEReportによる場合、平均10分程度、すべて手入力による場合、平均15分程度の所要時間であり、この2群間にはサンプルが少ないものの有意な差があった。この差は、主に当該薬処方歴、併用薬処方歴、検体検査結果の入力時間であった。浜松医科大学病院では、処方薬中止理由を訊くプログラムを4か月間実運用できた。結果、AEReportの移植性、省力性を示し、報告のオーガナイズ機能の試作を実施できた。考察・提言として、①全数調査可能な急性期病院では初回処方される薬剤について発売当初、全数調査を義務付け、全数調査が可能な施設のみ処方可能とする。②臨床検査コードは、副作用対策、病診連携を目的に厚生労働省標準コード(JLAC10)とする。③患者背景情報について「患者デモグラフィックスミニマムセット」を産官学共同で制定。④医療機関からの報告のデータ形式は、CDISC CDASHとする。⑤日本では診療情報の集中DB化が困難な中、中~長期的患者データの報告施設での把握のため医療ID(マイ・ナンバーそのものでない)の施行推進、診療報酬で紹介時電子的標準的情報提供にインセンティブ付与。⑥医療機関からの電子データ受け手側の体制整備。⑦電子カルテの技術・運用利用の報告データの真正性検証の仕組みを義務付ける。
結論
北里大学グループ4病院での運用で通常の病院業務とは別サービスの副作用報告プログラム利用時の問題点が明確になった。この問題は、臨床研究(割り付け等に外部サービス必須)への発展を考えた時、避けて通れない。副作用報告は、CRCによるEDC入力で実施されているが、今後、病院情報システムと副作用報告・登録システムがネットワークで接続される場合の切り分けの問題点が今回明確になった。九州大学病院での実測によりSS-MIX標準化ストレージ利用の副作用報告書作成の簡便性が実証された。浜松医科大学病院では、特定薬剤の処方中止時に中止理由を訊くプログラムを実運用できた。SS-MIX標準化ストレージ稼働病院は、昨年度報告時の200施設から平成26年6月時点で358施設となっている。この基盤上で動くAEReportの移植性、省力性は、今回確認された。今後は、これらでできた報告書をいかに企業側、規制当局側がスムースに(人手を介さず)受け取ることができるようになるか、及び、病院側では、いかに報告・評価に適切なタイミングを医師に病院情報システムが示せるか、の2点が重要となると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201424030C

収支報告書

文献番号
201424030Z