遠隔医療の更なる普及・拡大方策の研究

文献情報

文献番号
201424029A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔医療の更なる普及・拡大方策の研究
課題番号
H25-医療-指定-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
酒巻 哲夫(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 正幸(長崎大学)
  • 中島 直樹(九州大学)
  • 辻 正次(兵庫県立大学)
  • 石塚 達夫(岐阜市民病院)
  • 岡田 宏基(香川大学)
  • 森田 浩之(岐阜大学)
  • 齋藤 勇一郎(群馬大学)
  • 郡 隆之(利根中央病院)
  • 小笠原 文雄(小笠原内科)
  • 太田 隆正(太田病院)
  • 松井 英男(川崎高津診療所)
  • 大熊 由紀子(国際医療福祉大学)
  • 煎本 正博(イリモトメディカル)
  • 土橋 康成(ルイパスツール研究センター)
  • 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院)
  • 吉田 晃敏(旭川医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔医療は地域の医療提供手段の改善ツールとして重要だが、期待よりも発展が遅い。診療報酬の付与も進まない。規制緩和や技術発展が進み、従来課題は改善されたが、障壁や問題点が明らかでない。遠隔医療を普及・拡大のための課題を調査して、推進のためのロードマップを作る目的で研究を進めて、二年は対象疾病と地域調査を継続した。また本研究期間に開催された遠隔医療従事者研修事業に本研究班成果や研究班員からの講師協力を行ったので、受講者の反応から遠隔医療の現状を様々捉えた。
研究方法
・実験的モデル事例調査
睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法、テレラジオロジー等について同項目で調査した。
・外部視点による調査
従来視点の限界打破として、下記に調査を広げた。
一般市民向け普及啓発活動「遠隔医療をとことん考える会」にて講演して市民の反応を見た。また厚生労働省事業遠隔医療従事者研修の受講者の反応を見た。
・課題の分析
調査結果を整理してロードマップを作った。併せて難病遠隔医療コーディネータを検討した。
結果と考察
・事例1:睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法
遠隔医療機能を持つ機器がある。現場医療者から遠隔医療可能との提案がある。ただし、遠隔医療としてのエビデンス収集と、適用手法の明文化が必要である。聞き取り結果によればメリットは治癒率向上や重症化予防ではなく、脱落率抑制である。同症の大きな悪化要因が治療からの脱落で、期待は大きい。適用手法や対象患者条件等を明らかにする必要がある。
・事例2:テレラジオロジー
診療報酬改定で、画像管理加算1の届出施設が、外部施設に画像診断を委託すると管理加算1を請求できなくなった。遠隔医療実施者の不満は大きいが、届出施設は医学管理能力を持つべきで、外部委託は管理能力欠如と見られる。遠隔医療に管理加算を当てたのは、医学的指導・管理にも価値を置くためと考えられる。
・事例3:テレパソロジー
病理医不足は極度に深刻で、遠隔医療による効率化も、依頼施設と診断施設の一対一の関係では限界に達したとの意見があった。これを越える質と効率を目指す取り組みとして、複数病理医を一元的に調整・管理できるスキームが滋賀県成人病センターで構築された。実績情報の蓄積を期待する。またバーチャルスライドシステムの導入が進んいることもわかった。旧来のテレパソロジー装置のリプレイスが進んでいる。
・遠隔診療の価値と位置づけ
日本国内では医師不足が深刻でも、テレビ電話診療で十分満足するほど深刻な地域は希である。各領域調査でも、先方の医師(非熟練)や看護師を指導、管理する形態が欠かせないとの考え方が主流だった。臨床研究などのあり方に大きく影響する。
・遠隔医療への理解と認識
一般市民、患者への広報機会が非常に限られていた。これまで研究者は技術的システムに向いた症例しか対応せず、社会的普及面で偏っていた。一般向け説明の機会を作り、聴衆の反応を見たが、元々知られてなかったが、かなり専門的な講演でも好評で、理解度は良かった。また、難病患者向けの医師介在のためのコーディネータの必要性など、多くの情報を得た。また一般医療者への情報発信も弱く、知られていないことが明らかになった。医療者向け研修を行ったところ、医療者の受講者にはたいへん好評だったが、行政からの受講者から、地域行政の中で遠隔医療の位置づけが確定していないとの指摘を受けた。
.位置づけの検討
対面診療との症例比較では優位性は無く、診療報酬化に不利である。在宅医療では、遠隔からの診療自体より、看護師を医師が指導管理することに価値が認められてきた。これを「遠隔医療の価値」として一般化することが可能と考えられる。
・考察
従来遠隔医療モデルは社会的ニーズに合わなくなり、改善が望まれる。
①遠隔医療の価値を、限界の多い遠隔診療から脱却して、場所や時間に制約されない医学的管理による地域の医療水準向上手段に再定義すべきである。また医療提供のゴールではなく、バックアップ手段と考えるべきである。
②管理モデル(コーディネーター、評価)、救急支援・専門指導・地域ケア管理などの地域モデル、CPAP、慢性心不全等の臨床モデルを作り、エビデンスを示す必要がある。
③日常のモニタリングや介入代行、システム運用、実績データの収集と分析および改善ターゲット作りなどを、地域全体で支援できる仕掛けが欠かせない。
④財源の確保が必須であり、運営費用を賄うモデルを示す必要がある。診療報酬と地域医療介護総合確保基金の双方の道筋が求められる。
⑤これらの実施には高度な知識が必要であり、リーダーや従事者の育成が欠かせない。遠隔医療の教育プログラム開発は急務である。
結論
遠隔医療の実態や地域の実情等を捉えて、現状の課題を明らかにした。今後の発展のためのロードマップの展望を作った。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201424029B
報告書区分
総合
研究課題名
遠隔医療の更なる普及・拡大方策の研究
課題番号
H25-医療-指定-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
酒巻 哲夫(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 正幸(長崎大学)
  • 中島 直樹(九州大学)
  • 中島 直樹(九州大学)
  • 辻 正次(兵庫県立大学)
  • 石塚 達夫(岐阜市民病院)
  • 岡田 宏基(香川大学)
  • 森田 浩之(岐阜大学)
  • 齋藤 勇一郎(群馬大学)
  • 郡 隆之(利根中央病院)
  • 小笠原 文雄(小笠原内科)
  • 松井 英男(川崎高津診療所)
  • 煎本 正博(イリモトメディカル)
  • 土橋 康成(ルイパスツール研究センター)
  • 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院)
  • 吉田 晃敏(旭川医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔医療は地域の医療提供手段の改善ツールとして重要だが、期待よりも発展が遅い。診療報酬の付与も進まない。規制緩和や技術発展が進み、従来課題は改善されたが、障壁や問題点が明らかでない。そこで遠隔医療を普及・拡大のための課題を調査して、推進のためのロードマップを作ることを目的とする。
研究方法
・対象別調査
循環器、呼吸器、糖尿病、放射線画像診断、病理画像診断、在宅医療など専門領域別に、構造化調査項目(疾病・地域等の適用対象、エビデンス、関係職種や役割など運用体制,普及方策、関連制度や財源、関係者)に沿って、調査した。。さらに各対象は、具現化済み(診療報酬化など整備)、地域展開中(臨床的に有用、実証事業中)、実験的モデル(、エビデンス収集中)に分類して全体展望を得た。
・地域別調査
同じ構造化調査項目を用いて、実施地域のて医療政策担当者や実践者にヒヤリングを行った。
・遠隔医療の価値再検討
エビデンス収集や診療報酬化の方向を探るため、遠隔医療の医学的価値や医療政策上の位置づけを調査した。識者や研究班員からヒヤリングと討論により課題を探った。
・社会的視点、外部視点の調査
患者や市民、一般医療者の視点を捉えるために、一般向け啓発や従事者研修の場で反応を調べた。
結果と考察
・具現化済み事例
テレラジオロジーは国内で最も普及しており、診療報酬ベースの大半と推測される。仕組み整備や連携した質管理、地域全体での指導管理の向上が求められる。テレパソロジーはバーチャルスライドシステムの活用が進み、術中迅速以外で利用や複数施設の共同実施などが進んでいる。背景には最も深刻な医師不足がある。モニタリングでは心臓ペースメーカが進み、重度喘息は診療報酬がありが利用は少ない。
・地域展開中
医師不足地域での在宅医療へのテレビ電話診療はトライアルが進んでいる。エビデンスとして対面診療との非劣性まで解明した。電話再診以外の報酬は無い。専門診療の支援(旭川医大眼科、岩手医大循環器と皮膚科、救急医療)等は試行が進んでいる。
・実験的モデル
今後の発展として慢性心不全、睡眠時無呼吸症候群のCPAP療法等の開発が期待される。糖尿病などは今後の具体的な取り組みが期待される。
・地域の実態
医療ICTの実態はアピールほど大きくない。地域行政から、「良いと思うが何が良いか不明」との意見もあり、地域モデルやエビデンスが不足している。各医師や施設からのボトムアップ推進は難しい。モデルや支援体制(チーム医療や技術支援)が弱く、医師負担が大きい。導入を支える仕組みもない。
・遠隔診療の価値と位置づけ
日本国内では医師不足が深刻でも、テレビ電話診療で十分満足するほど深刻な地域は希である。各領域調査でも、先方の医師(非熟練)や看護師を指導、管理する形態が欠かせないとの考え方が主流だった。臨床研究などのあり方に大きく影響する。
・遠隔医療への理解と認識
一般市民、患者への広報機会が非常に限られていた。また一般医療者への情報発信も弱く、研修機会を通じて、あまりに知られていないことが明らかになった。
・考察
これまでの遠隔医療モデルは地域の医療者や行政のニーズに合わなくなった。モデル開発とエビデンス収集、質評価と改善や医療安全の仕組み作り、従事者教育等の社会的基盤などが弱いままである。従来型の開発補助金で解消できる問題ではなく。次項の改善が望まれる。
①遠隔医療の価値を再定義して、遠隔からの機能限定された診療から脱却して、場所や時間に制約されず医学的管理や指導を提供して、地域の医療水準を向上する手段として推進すべきである。医療提供のゴールとしての手段ではなく、バックアップと考えるべきである。(医師を確保できたら、遠隔から離脱する)
②管理モデル(コーディネーター、評価)、救急支援・専門指導・地域ケア管理などの地域モデル、在宅酸素療法、慢性心不全等の臨床モデルを作り、エビデンスを明らかにすることが重要である。モデルが示されて、有効な対象と実施手法がわかれば、取り組む人を増やせる。
③医学的な指導と管理の支援システムとして、日常のモニタリングや介入代行、システム運用、実績データの収集と分析および改善ターゲット作りなどを、地域全体でカバーできる仕掛けが欠かせない。
④財源の確保が必須であり、運営費用を賄うモデルを実施者に示す必要がある。診療報酬と地域医療介護総合確保基金の双方の道筋が求められる。
⑤これらの実施には高度な知識が必要であり、リーダーや従事者の育成が欠かせない。技術開発に偏ってきた遠隔医療について実務教育プログラム開発が急務となった。
結論
技術不足の時代の延長で、産業振興的手法で推進されたが、もはや効かなくなった。臨床現場や地域医療行政の意識に即した新たな推進課題を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201424029C

収支報告書

文献番号
201424029Z