医療機関の全職員に対応した効果的・効率的医療安全教育の研究

文献情報

文献番号
201424024A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関の全職員に対応した効果的・効率的医療安全教育の研究
課題番号
H26-医療-一般-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石川 雅彦(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所 地域医療安全推進センター)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 一人(中京大学法科大学院)
  • 越永 守道(練馬光が丘病院 )
  • 斉藤 奈緒美(公益社団法人 地域医療振興協会 地域医療安全推進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,165,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療従事者が医療安全教育を受ける時間を十分確保できない現状のなかで、全職員対応の効果的・効率的な医療安全教育の実施は医療安全管理において残された大きな課題であった。教育内容では国際的にはAustralian Patient Safety Education Framework(以下APSEF)とWHO Patient Safety Curriculum Guide 以下WHO-PSCG)があるが、本邦の現状にあわせた活用法は提示されておらず、教育実施を担う医療安全管理者と医療対話推進者の配置状況・効果、業務内容、課題等の現状評価も明らかではない。 
本研究の目的はAPSEF、WHO-PSCGと全国調査結果を勘案した全職員対応の医療安全教育内容・方法(特に情報通信機器やシミュレータ活用方法)・評価法の開発、及び医療安全管理者、医療対話推進者の課題を現状評価した効果的な医療安全教育システム構築を提言することである。
研究方法
医療機関の全職員に対応する医療安全教育に関する情報収集として、全職員対応の医療安全教育に関して国内外のレビュー(文献、HP等)を行い、さらにAPSEFの全22項目、WHO-PSCGの全11項目をレビューした。
これらの結果に基づき、医療安全管理者、医療対話推進者の配置状況と課題、及び医療安全教育の実施状況に関連する調査票作成を作成した。調査内容には教育実施主体となる医療安全管理者や医療対話推進者の配置や課題、医療安全対策加算や患者サポート体制充実加算関連の項目も追加した。調査項目の妥当性を検討する目的で、病院(約10 施設)に協力依頼し予備調査を実施し、調査結果を反映させた本調査票を作成した。
調査内容は、医療安全教育に関する情報収集、医療安全管理者、医療対話推進者の配置と課題、及び医療安全教育の実施状況に関連する調査票を作成し、本調査を実施した。対象施設は、医療安全管理体制の整備されている施設への調査が、研究目的達成に最適と判断し、医療安全対策加算1、2を取得している病院(3,479施設)を対象とした。調査票は、対象医療機関に郵送配布し、施設の管理者と医療安全管理者とで相談の上、回答していただくことを依頼した。倫理面への配慮として、本調査票の内容は、研究代表者が所属する公益社団法人地域医療振興協会の倫理審査委員会、および利益相反委員会の承認を得た。
結果と考察
医療安全対策加算1(495施設)、加算2(443施設)取得の施設で、計976施設(無回答、不明回答38)の回答あり集計を実施した(回収率28.1%)。全職員対象の医療安全教育は、99.5%が実施しており、平均参加率は61%以上の参加が38.1%、トップマネジメントの常時参加が40.5%だった。医療安全教育の課題は「職種による参加率の差がある」「全職員が関心を持てるテーマ選定が困難」が60%以上、「参加型研修の企画が困難」30.7%であった。医療安全管理者配置の効果としては、医療安全に関する情報の一元集約(90.0%)、医療安全対策の責任の明確化(83.0%)、インシデント・医療事故発生時の職員への精神的ケア(53.2%)などであった。患者サポート体制充実加算申請施設は566(58.0%)、医療対話推進者配置の効果としては、患者・家族からの相談の適切な対応(79.6%)、相談事例の収集・フィードバックなど(41.3%)、患者・家族との対話推進に関する職員の意識向上(42.8%)、などであった。 
職員への医療安全教育は大多数の施設で実施されているが、平均の参加率やトップマネジメントが常時参加する割合は低く、本研究目的の「全職員に対応した効果的・効率的医療安全教育」の必要性が再確認された。効果的な医療安全教育を実施するためには、参加率の改善や全職員が関心の持てるテーマの選定、および教材開発についても検討する必要性がある。医療安全管理者や医療対話推進者の配置は一定の効果ありと示唆される結果だが、効果が低い項目もあり、医療安全教育実施に関連する今後の課題である。
結論
全国調査結果から、全職員に対応した医療安全教育の課題が判明した。今後、効果的・効率的な医療安全教育の内容、方法、評価法の決定とその実施が必要であり、特に新たな医療安全教育方法の開発が求められる。

公開日・更新日

公開日
2016-02-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201424024Z