National Clinical Database(NCD)を用いた医療の質向上に関する研究

文献情報

文献番号
201424023A
報告書区分
総括
研究課題名
National Clinical Database(NCD)を用いた医療の質向上に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学医学部附属病院 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 國土典宏(東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科)
  • 兼松隆之(長崎市立病院)
  • 杉原健一(東京医科歯科大学)
  • 高本眞一(三井記念病院)
  • 橋本英樹(東京大学保健社会行動学)
  • 木内貴弘(東京大学大学病院医療情報ネットワーク)
  • 宮田裕章(東京大学医療品質評価学)
  • 後藤満一(福島県立医科大学臓器再生外科)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院心臓血管外科)
  • 齊藤延人(東京大学医学部附属病院 脳神経外科 )
  • 原田 繁(筑波学園病院)
  • 大山 力(弘前大学泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の視点に基づいた良質な専門医制度を根拠に基づいて確立するため,多くの臨床学会が連携してNational Clinical Database(以下,NCD) が 2010 年 4 月に設立された.本研究の目的は専門医制度と連携したNCDを用いて,医療機関における診療体制の向上に資するデータの分析・活用に関する検討,患者にとって治療法の理解の向上や選択に資するデータの分析・活用に関する検討,データベースの対象領域を拡大するための手法に関する検討を行うことである.
研究方法
共通調査票に基づいた体系的なデータ収集を行っており,2015年2月時点では 4,500以上の施設が参加し,480万症例以上の症例情報が集積している.2014年度の分析として,2013年1月1日~12月31日に手術を受けた症例について,外科専門医制度に基づき,外科専門医制度上で認められる術式に関する全体の①手術症例数,②外科専門医制度上の7つ各領域(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,③各領域の主な術式の手術件数を分析した.また,国際的な動向を踏まえて,新規参画となる脳神経外科においても医療の質の評価枠組みの構築を検討した.更に,今後もNCDのネットワークを有益なシステムとして改善していくため,症例登録に協力いただいている施設診療科長をはじめとする利用者の意見収集および入力・診療提供体制の把握を目的としたアンケート調査を実施した.アンケート結果については,平成23年度に実施した結果との比較も行う.
結果と考察
3,449施設,4,849施設診療科において,外科専門医制度上認められる術式に該当するNCD術式が1つでも選択されていた手術症例数は1,301,372件であった.2013年は2012年と比較して参加施設数・手術件数がともに増加し,より登録率の高いデータベース事業となったことが示されている.新規参画となる脳神経外科においては,対象となる枠組みや入力システムの構築,テスト入力と関係者への周知・合意形成を行った.日本脳神経外科学会第73回学術総会で概要を会員に説明し,入力に向けたCRFの配布やID発行業務などを行い,システム修正と総合的なシステムバリデーションを完了した後2015年1月より全国の施設において入力が開始となった.今回の脳神経外科領域の参画では,術後30日以内の生存だけで無く,各種合併症や推奨される臨床プロセスの実施状況などパフォーマンス指標を総合的に把握する.これらパフォーマンス指標に基づいた評価と改善は,死亡率の低下や術後在院日数の短縮,感染性合併症発生率の低下など,医療費の抑制に有効に作用する可能性が高い.また治療法の選択についても,悉皆性の高い現実世界のデータに基づいて分析を行うことにより,治療法の選択がもたらす臨床的な効果だけでなく,費用に対する影響を客観的に評価することが可能である.診療科アンケートに関しては,平成23年度結果との比較を中心に考察する.入力に関わる職種については,医師事務作業補助者など事務専門職の関与が増加している.医師事務作業補助者の配置は,診療報酬において一定の配置人数に応じて評価されており,各施設において導入している可能性が考えられる.一方で診療科長などの医師の入力も増加している.医師が関与することで,情報の正確性が向上することが期待出来る.入力時期では,一定期間ごとにまとめて入力するという回答が減少し,可能な限り速やかに入力するよう心掛けているという回答が増加していた.入力手順では,原資料となる診療情報を参照しながら入力を行っている,ファイルメーカーやアクセスなどに一旦データを集積し入力すると回答した診療科の割合が減少していた.一方で,電子カルテ等をNCDに修正し,入力を行っている診療科が増加しており,電子カルテや院内情報を活用する事務専門職による入力体制へ変化している可能性が考えられた.
結論
本研究により,2013 年手術症例について外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,7 つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.脳神経外科領域においては,2015年1月より全国の施設が入力を開始した.実証データに基づいて,医療費と質に対して客観的な比較考量を行う脳神経外科領域では超高齢化社会に向かう日本における持続可能な良質な医療提供体制に有用な貢献が可能である.施設診療科アンケートにより現在の各診療科における入力体制および手順の把握を行うことが出来た.今後も在籍する専門医数や医師以外の医療従事者数およびNCD登録時間など,より詳細な聞き取りを行い正確性を高めるために各診療科で行っている工夫などを明らかにしていく必要がある.

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201424023Z