歯科技工物の多国間流通の現状把握に関する調査研究

文献情報

文献番号
201424014A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科技工物の多国間流通の現状把握に関する調査研究
課題番号
H26-医療-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 博信(福岡歯科大学 歯学部)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯学部)
  • 阿部  智(帝京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成20年度「歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究」では海外に歯科補綴物製作を発注する割合は7.4%であった。その後6年を経過し,その間に海外に委託せざるを得なかったノンクラスプ義歯の薬事認可や,「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」(平成22年3月31日付け医政歯発0331第1号医政局歯科保健課長通知),「歯科医療における補綴物等のトレーサビリティに関する指針」(平成23 年6 月),「歯科医療の用に供する補てつ物等の安全性の確保について」(平成23 年9 月26日付け医政発0926第1号医政局長通知)など度重なる厚生労働省医政局からの通知があったことから,海外への歯科補綴装置発注状況について6年間の変化を知る目的で本調査を実施した。
研究方法
 公益社団法人日本歯科医師会に所属する一般会員の歯科医師52,841名(平成26年11月末日)から約1%無作為抽出した600歯科診療所の歯科医師を対象に,アンケート形式による往復郵送調査を行った。質問事項は基本属性,歯科補綴物の製作状況や再委託にかかわる法律の認知などに関するものであり,海外に歯科補綴物を発注したことがある人についてはさらに,海外への発注開始時期,発注国,方法,発注歯科補綴物の種類および量,発注理由・きっかけなどについてである。本調査は,新潟大学歯学部倫理委員会の承認(倫理審査付議不要)を経て実施された。
結果と考察
 アンケート回収率は70.2%と比較的高く,各県別のばらつきが比較的少ないことから全国的な傾向をみるのに適正かつ有効なデータが得られた。平成26年度の日本の実態として,常勤の歯科技工士が1名以下という歯科診療所がほとんどであり,70%の診療所が半数以上の歯科技工物製作を外注しており,平成20年度の結果からほとんど変化が認められなかった。全回答者のうち3.1%が「海外に歯科補綴物を発注した経験あり」と回答した。海外への発注開始時期別にみると平成18年以前からが23.1%,平成20年からが15.4%,平成22年からが7.7%,平成23年からが23.1%,平成25年からと平成26年からがそれぞれ15.4%となっていた。具体的な歯科補綴物の海外への発注状況をみると「ノンクラスプ義歯」が61.5%,「陶材焼付クラウン・ブリッジ」が30.8%,「オールセラミッククラウン・ブリッジ」15.4%,「金属床義歯(フレームのみも含む)」および「矯正装置」が15.4%となっていた。海外に歯科補綴物を発注している理由については,「国内で作成する技術・材料がない」と「値段が安い」が38.5%,「取引先の歯科技工所に勧められる」23.1%,「精度がよい」7.7%となっていた。初回調査(平成20年度)と比較すると,「海外に歯科補綴物製作を発注する割合」は7.4%から3.1%へと6割程度低下している。また,「海外に歯科補綴物を発注する予定はない」とするものが94.8%と平成20年度から11ポイント上昇しており,この6年間で海外への歯科補綴物発注は確実に減少していることが明らかとなった。しかしながら,どちらの年度調査とも,対象者となっていない日本歯科医師会の非会員の動向は反映されていないことは考慮しておくべきである。一方で,海外発注を開始した年度が毎年一定の割合(8~23%)存在しており,国内で製作できる歯科補綴装置へ移行した国内回帰層と積極的に海外発注を検討する一定の層との両極化してきたように思われる。海外に発注する歯科補綴装置の中でノンクラスプ義歯が減少した一方で,陶材焼付け鋳造冠,オールセラミッククラウン・ブリッジ,矯正装置が増えていた。歯科医師は,医療供給者として患者に対する安全性意識,説明責任が必須である。直接監視下にない歯科補綴装置など口腔装着物に関しては,関連法規の下に,責任ある歯科医療を提供する意識を高めなければならない。
結論
 平成20年度調査では,海外に歯科補綴装置製作を発注する割合は7.4% であったのに対し,平成26年調査では3.1% と半減(58%減)している。また,海外に歯科補綴装置を「発注する予定はない」が94.8%と平成20年度から11ポイント上昇しており,この6年間で海外への歯科補綴装置発注は確実に減少していた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201424014C

収支報告書

文献番号
201424014Z