歯科疾患の疾病構造の変化を踏まえた歯科口腔保健の実態把握のための評価項目と必要客体数に関する研究

文献情報

文献番号
201424013A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科疾患の疾病構造の変化を踏まえた歯科口腔保健の実態把握のための評価項目と必要客体数に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 哲則(日本大学 歯学部)
  • 越野 寿(北海道医療大学 歯学部)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 )
  • 安井 利一(明海大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,563,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の歯科口腔保健状況の把握のために必須の調査である歯科疾患実態調査を継続的に実施するために、評価項目と必要客体数を確保するための調査・分析を行った。「歯科疾患実態調査の客体数の分析」「歯科疾患実態調査の問診項目の検討」「歯周病の評価指標」「咬合・口腔機能評価」の4領域について調査分析を行い、次回の歯科疾患実態調査に向けた対応を検討した。
研究方法
 歯科疾患実態調査の客体数の分析」については、調査の実施に大きく係わる自治体の歯科担当者への自記式質問紙調査と、3種の公的統計(歯科疾患実態調査、国民・健康栄養調査、国民生活基礎調査)のデータリンケージを行った。「歯科疾患実態調査の問診項目の検討」では、現在の4つの問診項目(歯ブラシの仕様状況、フッ化物の塗布経験、インプラントの状況、顎関節の異常)について、改良すべき点等について自治体専門職に対して、質問紙調査とインタビュー調査を行った。「歯周病の評価指標」については、WHOから新たに提示されたCPI-modifiedについて、従来のCPI原法と比較することによって、その利点と欠点について分析した。「咬合・口腔機能評価」については、フィールド調査を行うとともに、これまでの咀嚼機能評価法に関する知見についてシステマティック・レビューを行った。
結果と考察
 歯科疾患実態調査の客体数増加への取り組みについて、全国自治体の歯科担当者に調査を行ったところ、平成23年に厚生労働省歯科保健課が実施した説明会は、国民健康・栄養調査の担当者との協力関係の構築に寄与していたことが示唆された。また、自治体への調査から運営上の課題が明らかになるとともに、現行の6年間隔を短縮する必要性も示唆された。併せて、歯科疾患実態調査と同時期に実施される国民健康・栄養調査結果との比較検討も別途行ったところ、国民健康・栄養調査の血液検査の参加状態と、歯科疾患実態調査の参加率の間には極めて密接な関連性が認められた。
 問診項目について自治体専門職に対して調査を行ったところ、項目数の増加を求める意見が多かった。また、現行の問診項目のうち「歯ブラシの使用状況」と「フッ化物の塗布経験」については必須項目と考えている者が高率であったが、「インプラントの状況」と「顎関節の異常」については改変が必要と考えている者が多かった。
 歯周病の指標については、新たにWHOから提示されたCPI-modifiedは、これまでのCPIが有していた問題点が改善されており、歯周組織の出血所見と歯周ポケットの両者を用いる体系的評価指標であることから、次回の歯科疾患実態調査に十分活用できるものと考えられた。しかし、特定歯を調べるこれまでのCPIとは異なり、CPI-modifiedでは対象歯が全歯となる点については検討を要する点と考えられた。
 咬合・口腔機能の評価については、乳児期では歯科疾患実態調査に加える必要性は低いことが明らかになった。一方、高齢期においては咬合・口腔機能の評価は極めて必要性が高いため、平成23年度調査の際に導入した臼歯部の咬み合わせの評価を発展させて、アイヒナー分類などの咬合分類の導入や、色変わりガム等を用いた半定量の咀嚼評価法も検討すべきであると考えられた。
結論
 近年、大きく疾病構造が変化した歯科疾患について国の現状を把握するための課題を抽出し、その課題解決に向けた具体的な改善策について、本研究にて提示することができた。歯科疾患実態調査の実施に直接携わる全国自治体の歯科担当者への調査を実施することにより、調査間隔の短縮等、歯科疾患実態調査における課題を抽出できたことは、次回の第11回歯科疾患実態調査の企画・運営の際に大きく寄与する。また、客体数の動向について、二次データを用いた分析によって、歯科疾患実態調査の参加率を上げる上でも、同時に調査を行う国民健康・栄養調査での血液検査の参加率を向上させることが重要であることが明らかになったことは、各自治体における歯科専門職と栄養専門職との更なる連携体制の構築の必要性を明示した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201424013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 近年、大きく疾病構造が変化した歯科疾患について国の現状を把握するための課題を抽出し、その課題解決に向けた具体的な改善策について、本研究にて提示することができた。歯科疾患実態調査の実施に直接携わる全国自治体の歯科担当者への調査を実施することにより、調査間隔の短縮等、歯科疾患実態調査における課題を抽出できたことは、次回の第11回歯科疾患実態調査の企画・運営の際に大きく寄与するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
 歯科疾患実態調査は地域歯科保健の施策の推進に寄与するだけでなく、国民の歯科疾患の有病状況の標準的データを得ることができるため、新たな予防歯科医療技術の開発における効果判定にも大きく寄与する。
ガイドライン等の開発
 本研究で得られた知見は、次回の第11回歯科疾患実態調査の企画・運営のための基礎資料として活用された。
その他行政的観点からの成果
 中高年期の口腔機能の評価は、平成24年7月に厚生労働大臣より告示された「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」でも項目として大きく取り上げられているところであり、歯科疾患実態調査でも継続的に評価すべき項目である。本研究で示したフィールド調査結果やシステマティック・レビューの結果は、今後、歯科疾患実態調査にて咬合・口腔機能をどのように調べるかについて指針を提示した。また、得られた知見をもとに、平成28年歯科疾患実態調査の実施にあたって改善を図った。
その他のインパクト
 これまで十分に調査されていなかった自治体の歯科担当者に対しての自記式質問紙による調査は本研究事業において重要な意義を有していたため、研究協力者として自治体で勤務する歯科専門職を加えて、質問項目の調整等に時間をかけた。その結果として、回収率は85.8%に達し、確度の高い全国データを得ることができた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
安藤雄一、青山旬、三浦宏子他
歯科疾患実態調査の協力率に関する検討:平成23年歯科疾患実態調査の協力者は大半が国民健康・栄養調査における血液検査の協力者であった
日本公衆衛生学会雑誌 , 63 (6) , 319-324  (2016)
https://doi.org/10.11236/jph.63.6_319
原著論文2
三浦宏子、大澤絵里、野村真利香、玉置洋
オーラル・フレイルと今後の高齢者歯科保健施策
保健医療科学 , 65 (4) , 394-400  (2016)
https://doi.org/10.20683/jniph.65.4_394
原著論文3
Miura H, Tano R
Recent measures in geriatric oral health care in Japan
Journal of the National Institute of Public Health , 68 (1) , 8-16  (2019)
https://doi.org/10.20683/jniph.68.1_8

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2021-10-28

収支報告書

文献番号
201424013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,563,000円
(2)補助金確定額
1,563,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 74,734円
人件費・謝金 515,091円
旅費 461,828円
その他 511,379円
間接経費 0円
合計 1,563,032円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
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