文献情報
文献番号
201424010A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期医療と他領域との効果的な協働体制に関する研究
課題番号
H26-医療-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 金山 尚裕(浜松医科大学 産婦人科学)
- 有賀 徹(昭和大学医学部付属病院)
- 宮本 享(京都大学医学研究科脳神経外科学)
- 丹羽 公一郎(聖路加国際病院心血管センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、母体安全に関する問題点は2つある。一つは産科出血死亡が未だ、約30%を占める死亡原因の第一位であること、二つ目は、脳出血と心臓病による死亡、すなわち間接産科的死亡が全体の40%と徐々に増加していることである。以上から、さらなる死亡減少を目指すためには、産婦人科以外の診療科と協同して診療にあたる必要性がある。これまで産婦人科医療は自己完結的に過ぎる傾向があった。本研究の目的は母体安全のために、救急救命、内科系、外科系診療科とより良い協力体制を確立することである。
研究方法
1. 妊産婦死亡時の剖検と病理検査の指針作成に関する研究:日本病理学会は年次総会時に、「妊産婦死亡症例病理カンファレンス」をサテライト会議として開催し、剖検率の向上とともに、法医解剖との連携を目指す。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:2013年(平成25年)に救急医療体制等のあり方に関する検討会が開催され、周産期医療との連携も模索されている。これを受けて、当研究班では、施設内連携を深める方策、両医療の交流の促進、症例検討の実施する。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究:死亡検討のみでは不可能な指標に関するデータベースが必要であるため、「脳血管障害」、「心臓血管疾患」の前向き登録制度を確立する。日本脳神経外科学会や日本循環器病学会などの学会とともに、本研究を進め、間接産科的妊産婦死亡の原因疾患に対する母体搬送基準の策定や施設基準の考案など目指す。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:2013年(平成25年)に救急医療体制等のあり方に関する検討会が開催され、周産期医療との連携も模索されている。これを受けて、当研究班では、施設内連携を深める方策、両医療の交流の促進、症例検討の実施する。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究:死亡検討のみでは不可能な指標に関するデータベースが必要であるため、「脳血管障害」、「心臓血管疾患」の前向き登録制度を確立する。日本脳神経外科学会や日本循環器病学会などの学会とともに、本研究を進め、間接産科的妊産婦死亡の原因疾患に対する母体搬送基準の策定や施設基準の考案など目指す。
結果と考察
1. 妊産婦死亡時の剖検と病理検査の指針作成に関する研究:妊産婦死亡の剖検例について 病理医師間で共通の知識、認識を持つ目的で、全国から病理医を招聘し病理カンファランスを開催し、妊産婦死亡でもっとも頻度の高い疾患である羊水塞栓症につい昨年病理診断指針を作成し、それを実際の臨床例で検証した。同時に妊産婦死亡の剖検マニュアルの改訂版の素案を作成した。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:救命救急に従事する専門医を含む分担研究班において、妊産婦の急変例に対応するための施設内連携を深める方策、両医療の交流の促進、症例検討の実施などを行った。現在の問題点の抽出に連動して、その解決法策としての症例シナリオを用いた教育コースの開発を始めた。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究
:脳卒中学会認定研修教育病院において急性期脳卒中診療に関わる全ての診療科で2年間に診療された妊産婦脳卒中を対象に悉皆調査を行った。一次調査(回収率82.3%)と二次調査(回収率85.7%)を経て, 最終的に151例の妊産婦脳卒中を解析した. 出血型脳卒中は72.9%を占め, 主たる原因は脳動脈瘤, AVM, PIH, HELLP症候群であった. 出血型脳卒中の半数は予後不良であり, 特にHELLP症候群の1/3は死亡例であった。 約3割を占める虚血性脳卒中の原因疾患ではRCVSが最も多く、出産前後に発症が集中していた。妊産婦悉皆調査によって妊産婦脳卒中の実態が明らかとなった。
我が国における心臓病を持つ女性の妊娠・出産に関する一次調査にて主要な心疾患の妊娠・出産・流産の症例数を把握し、二次調査にて母体の合併症、妊娠予後、治療内容など詳細に関する情報の登録を開始した。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:救命救急に従事する専門医を含む分担研究班において、妊産婦の急変例に対応するための施設内連携を深める方策、両医療の交流の促進、症例検討の実施などを行った。現在の問題点の抽出に連動して、その解決法策としての症例シナリオを用いた教育コースの開発を始めた。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究
:脳卒中学会認定研修教育病院において急性期脳卒中診療に関わる全ての診療科で2年間に診療された妊産婦脳卒中を対象に悉皆調査を行った。一次調査(回収率82.3%)と二次調査(回収率85.7%)を経て, 最終的に151例の妊産婦脳卒中を解析した. 出血型脳卒中は72.9%を占め, 主たる原因は脳動脈瘤, AVM, PIH, HELLP症候群であった. 出血型脳卒中の半数は予後不良であり, 特にHELLP症候群の1/3は死亡例であった。 約3割を占める虚血性脳卒中の原因疾患ではRCVSが最も多く、出産前後に発症が集中していた。妊産婦悉皆調査によって妊産婦脳卒中の実態が明らかとなった。
我が国における心臓病を持つ女性の妊娠・出産に関する一次調査にて主要な心疾患の妊娠・出産・流産の症例数を把握し、二次調査にて母体の合併症、妊娠予後、治療内容など詳細に関する情報の登録を開始した。
結論
1. 妊産婦死亡時の剖検と病理検査の指針作成に関する研究:作成された妊産婦死亡剖検マニュアルに沿って解剖すれば、重要なポイントをしっかり押さえつつ、漏れなく剖検が可能となることが実証された。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:救命救急スタッフ、産科スタッフ、麻酔科スタッフ、救急隊を含む総合的な妊産婦急変初期診療コース(プログラム)の構築を開始した。これらの構築によって、妊産婦救急症例における救命救急スタッフ、産科スタッフ、麻酔科スタッフ、救急隊に、共通の治療方針が普及し、相互理解と協力関係が進むことが予測される。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究:治療成績向上に向けて産科医と脳神経外科医の妊産婦脳卒中に関する知識共有と密接な診療連携が求められ、本研究の成果を元に、妊産婦脳卒中医療における提言を作成し、同疾患における診療ガイドライン作成が必要である。
心疾患患者の妊娠出産,特に、成人先天性心疾患患者の妊娠出産数は、継続的に増加しており、実態調査により、研究成果を元に日本の先天性心疾患出産の実態が解明される。実態解明により、経験的な治療が中心となっている同疾患の出産に大きな診療根拠を提供することができる。
2. 周産期医療体制と救急医療体制の整備に関する研究:救命救急スタッフ、産科スタッフ、麻酔科スタッフ、救急隊を含む総合的な妊産婦急変初期診療コース(プログラム)の構築を開始した。これらの構築によって、妊産婦救急症例における救命救急スタッフ、産科スタッフ、麻酔科スタッフ、救急隊に、共通の治療方針が普及し、相互理解と協力関係が進むことが予測される。
3. 妊産婦死亡原因の主要疾患に関する実態と防止策に関する研究:治療成績向上に向けて産科医と脳神経外科医の妊産婦脳卒中に関する知識共有と密接な診療連携が求められ、本研究の成果を元に、妊産婦脳卒中医療における提言を作成し、同疾患における診療ガイドライン作成が必要である。
心疾患患者の妊娠出産,特に、成人先天性心疾患患者の妊娠出産数は、継続的に増加しており、実態調査により、研究成果を元に日本の先天性心疾患出産の実態が解明される。実態解明により、経験的な治療が中心となっている同疾患の出産に大きな診療根拠を提供することができる。
公開日・更新日
公開日
2015-05-21
更新日
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