B型肝炎ウイルス構造解析による薬剤応答性の評価と新規治療薬開発に関する研究

文献情報

文献番号
201423045A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルス構造解析による薬剤応答性の評価と新規治療薬開発に関する研究
課題番号
H25-B創-肝炎-一般-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村上 善基(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 梅山秀明(北里大学 薬学部)
  • 熊田卓(大垣市民病院 消化器内科)
  • 河田則文(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
  • 田口善弘(中央大学 理工学部)
  • 田守昭博(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
  • 棚橋俊仁(神戸薬科大学医療薬学)
  • 豊田秀徳(大垣市民病院 消化器内科)
  • 榎本大(大阪市立大学 大学院医学研究科肝胆膵病態内科学)
  • 本多隆(名古屋大学医学部附属病院消化器内科)
  • 矢野嘉彦(神戸大学微生物感染症講座)
  • 岩舘満雄(中央大学生命科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
36,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦におけるHBV感染者は150万人程度と推定される。治療はインターフェロンは奏功率が悪いが再発率は少ないのに対し核酸アナログは抗ウイルスの増殖抑制効果はあるが再発率が高い、そのためウイルスの排除を目的とした安全な薬剤の開発は急務とされている。
ヒト感染性ウイルスは宿主の免疫応答から回避し持続感染するために遺伝子変異を高頻度に起こす。このことは抗ウイルス剤への耐性獲得を容易にしていると考えられている。今回の研究では、核酸アナログによる治療前後に、慢性B型肝炎患者からHBV遺伝子を抽出し、次世代シークエンサー(NGS)によりウイルスゲノムのウルトラディープシークエンスを行い、HBVの株ごとの薬剤応答を幅広く臨床の場で利用できるようにデータベース化し公表する。
HBVはpreS/S、preC/C、X、DNA polymeraseと4種のORFを持っている。それぞれのタンパクの機能を阻害する低分子化合物の探査に我々の開発したin silico screening用いて行う。この方法は新規で低分子化合物を作成するのではなく既存の薬剤バンクや、低分子バンクと関心タンパクの阻害作用を検討するもので、新規で薬剤を作成することがなく短時間に候補薬剤の探索が期待される。この方法を用いウイルスの生活環に関係する複数のポイントを阻害する薬剤の開発を試み、2年以内に臨床第一相試験に移行を目指している。

研究方法
ウイルスの持続感染系の樹立
初代培養のPXB細胞を用いてHBVの安定感染系の樹立を行ない、低分子化合物の抗ウイルス活性をモニターした。また国立感染症研究所より分与された、Hep38.7-Tet、HepG2.2.15.7を用いてHBV実験感染系を行った。
抗ウイルス薬候補の検索
HBV ゲノムにコードされている4種のORFに対しに対してin silico screeningを用いて抗ウイルス活性を持つ低分子化合物の検索を行った。宿主の持つウイルスの複製に関与する因子に対する阻害剤を探索している。
(2)ウイルス変異解析
全ウイルスゲノムにつきPCRを用いてライブラリー作成した場合(Inuzuka T et al. 2014)と用いないで作成した場合で(Sasaki M et al. J Gen Virol 2014)NGS解析を行った。
(倫理面への配慮)
既にこの解析に関する臨床研究[大阪市立大学大学院医学研究科倫理委員会より次世代シークエンサーを用いた抗ウイルス薬によるHBV株出現の予測]について検体採取機関と当施設の倫理申請を行い、承認を受けている(平成26)。
結果と考察
(1)直接ウイルス作用型抗ウイルス剤と宿主因子阻害型抗ウイルス剤の探索
ヒト肝細胞由来のPXB細胞を用いてHBVの安定感染系を樹立した。この方法を用いて新規核酸アナログ候補としてピリミジン型100種、プリン型100種をAKos libraryよりin silico screeningにて選別した。そのうち細胞毒性がなく上清中ウイルスDNAを有意に減少させたものはピリミジン型2種、プリン型2種あった。
さらにcapsid合成阻害候補を同様に100種選別した。そのうち16種の抗ウイルス効果を確認した所、細胞毒性がなく抗ウイルス効果があったものは4種選択できた。
また宿主側のウイルス複製に必要な分子(1)α-glucosidase inhibitors、(2) LTβR 、(3)TLR7の3種においてin silico screeningを用いて機能を阻害する低分子化合物を探索している。

(2)ウイルス変異解析
B型肝炎感染患者114検体にエンテカビル治療前後におけるアミノ酸の変異をmajor/minor clone別に解析した所、治療経過中にmajor cloneで遺伝子発現変異は同定できなかったが、minor cloneには既報でエンテカビル耐性に関与する変異を同定することができた。さらにPCRを用いずに行なったNGS解析でも同様にエンテカビル耐性変異がminor cloneで同定された。

新規核酸アナログ4種とcapsid合成阻害剤4種を新規同定した。今後薬効を高めるため構造変換を行う事と複数の薬剤と組み合わせで薬効を向上する事を検討している。
ウイルス変異解析はHBVのクローンをカタログ化し、ウイルス変異株の出現時期、薬剤応答との関連を明らかにする。
結論
タンパク構造解析より新規抗ウイルス薬候補を選別し、in vitroで薬効と細胞毒性を確認し、in vivo実験に進む薬剤を選択する。また次世代シークエンサーにて薬剤耐性株の出現を予測し、構造解析を用いて薬剤耐性獲得メカニズムを明らかにし、治療前に治療方法の選択可能なアルゴリズムを作成する。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
47,500,000円
(2)補助金確定額
47,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,198,472円
人件費・謝金 11,423,960円
旅費 1,732,030円
その他 4,184,538円
間接経費 10,961,000円
合計 47,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
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