ヒト/チンパンジー・マウスハイブリッド技術を利用したB型肝炎ウイルス感染モデルマウスの開発

文献情報

文献番号
201423044A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト/チンパンジー・マウスハイブリッド技術を利用したB型肝炎ウイルス感染モデルマウスの開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山村 研一(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 喜美(山本 喜美)(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
  • 江良 択実(熊本大学 発生医学研究所)
  • 佐々木 裕(熊本大学 生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
88,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBVが感染可能で正常の免疫応答を持つマウスの作製を目的とし、基本となるヒトHLA classI遺伝子(HHD)およびマウス(HHB)の入手と繁殖、チンパンジー肝臓キメラマウスの作製、ヒト肝臓置換マウスの作製、HBV感染・肝炎モデルの確立を行う。
研究方法
基本となるヒトHLA classI遺伝子(HHD)およびマウス(HHB)の入手と繁殖については、前年度までに完了した。
1.チンパンジー肝臓キメラマウスの作製
(1)チンパンジーiPS(ciPS)細胞の樹立、HHD遺伝子導入を行う。
(2)レシピエントマウスHHB:Hhex<-/->の作製を行う。
2.ヒト肝臓置換マウスの作製
(1)ヒトiPS細胞へのHLA遺伝子導入と肝細胞への分化誘導を行う。
(2)レシピエントマウスHHB:SCCDおよびHHB:Fah<-/->の作製を行う。
(3)ヒト肝臓置換マウスの作製のため、tamoxifen投与法および胎児期のヒト肝細胞移植法を確立する。
3.HBV感染・肝炎モデルの樹立
(1)HBVのiPS細胞由来肝前駆細胞への感染を行う。
結果と考察
1.チンパンジー肝臓キメラマウスの作製
(1)新型SeVを開発し、4%という高効率でiPSを樹立した。また、80%以上の高い割合でウイルスを除去することができ、樹立したすべてのciPS細胞は、末梢血液に存在するTリンパ球由来であることがわかり、HHD遺伝子を導入したciPS細胞クローンの樹立に成功した。
(2)HHB ES細胞とCRISPR/Cas9法を用い、肝臓発生のマスター遺伝子であるHhex欠損マウスの作製に成功した。
(3)ciPSやヒトiPSは、分化状態が一歩進んで円筒胚のepiblastと同様で、primed stateにあると言われ、キメラ形成能が極めて低いため、naive stateにする必要がある。naive化は再現性が高いと考えられている高島らの方法にて行う予定である。
2.ヒト肝臓置換マウスの作製
(1)ヒトiPS細胞では、多分化能を維持するために高い濃度のmethionineとその代謝産物であるS-adenosylmethionineを必要とし、このmethionineが低下すると、分化は促進され、また、synthetic nanofiberを用いると、分化誘導を促進する事を明らかにした。HHDの検出にはAnti-HLA-A2 mAb (clone BB7.2)を使用できることがわかり、HHDをiPSにエレクトロポレーションすることにより、iPS:HHDの樹立に成功した。
(2)ES:HHBにSCCDを導入し、6系統(HHB:SCCD)の樹立を行い、うち1系統において、tamoxifen投与により劇症肝炎が生じ、マウスが全例死亡することがわかり、任意の時期にマウス肝細胞を死滅させることのできる系統樹立に成功した。ES HHBおよびCRISPR/Cas9法を用い、HHB:Fah欠損マウスの樹立に成功した。
(3)tamoxifen 0.1gを粉末餌200gに混ぜ、Y式マウス用粉末給餌器を用いて投与する経口投与法を確立した。胎児期に、ヒト肝細胞及びhiPSより分化誘導した肝細胞hHepを移植し、肝臓ヒト化マウスを作製する方法を確立した。上記の技術を用い、免疫応答正常で、ヒト肝臓置換マウスの作製に成功した。
(4)ヒト肝細胞による高置換率のヒト肝臓置換マウスを得るため、tamoxifen等の投与時期の決定を行っており、今後の課題は、HBVを感染させ、HBVの抗原を標的とした肝炎が発症するかどうかである。
3.HBV感染・肝炎モデルの樹立
(1)iPS由来肝芽様細胞においてHBVの感染に必要なtaurocholate cotrans -porting polypeptide (NTCP)が発現していること、また、HBVにluciferase遺伝子を組み込んだHBV-NL株(下遠野先生より供与)がiPS由来肝芽様細胞に感染することを確認した。
(2)HHBマウスは、もともと自然交配による繁殖があまりうまくいっていないため、精子表面よりコレステロール分子を引き抜く活性の高い精子前培養液(FIRTIUP)と卵子の透明帯を薄くする効果のある体外受精用培地(CARD medium)を用いたところ、体外受精により高い受精率を得ることができ、レシピエントマウスの供給体制についても目処が立った。
結論
チンパンジー肝臓キメラマウスの作製については、ciPSのナイーブ化とそれを用いたキメラ作製を残すのみとなり、ヒト肝臓置換マウスの作製については、ヒト肝細胞による高置換率のヒト肝臓置換マウスの作製の直前まで研究は進行し、どちらも予定どおり計画を達成した。今後、HBV感染・肝炎モデルの樹立を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423044Z