免疫系を保持した次世代型B型肝炎ウイルス感染小動物モデルの開発とその応用

文献情報

文献番号
201423042A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫系を保持した次世代型B型肝炎ウイルス感染小動物モデルの開発とその応用
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 徹郎(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 巽 智秀(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学)
  • 疋田 隼人(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学)
  • 上田 啓次(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 ウイルス学)
  • 水口 裕之(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科 分子生物学分野)
  • 北島 健二(公益財団法人東京都医学総合研究所 生体分子先端研究分野)
  • 末水 洋志(公益財団法人実験動物中央研究所 バイオメディカル研究部)
  • 高橋 武司(公益財団法人実験動物中央研究所 実験動物研究部免疫研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
110,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎の病態を解明し、画期的な創薬研究を推進するためには、動物モデルの開発が必要である。そこで本研究課題では、1)免疫系を保持したB型肝炎モデルを作成し、B型肝炎に対する免疫応答を解析すること、2)長期生存可能な安定した肝細胞キメラマウスを作成すること、3)iPS細胞からマウスの肝臓および免疫系をヒト化するドナー細胞を誘導する技術を開発し、同系のヒト肝細胞・免疫細胞とHBVがマウス個体内で相互作用し病態形成をする新規B型肝炎動物モデルを作出すること、を目的に研究を行った。
研究方法
以下のアプローチを行った。1)ハイドロダイナミック法を用いたHBV増殖に対する免疫応答の解析 2)マウス免疫系のヒト細胞による再構成とHBV増殖に対するヒト免疫応答の解析 3)マウス免疫機能を保持したヒト肝細胞置換マウスの作成とその解析4)ヒト肝細胞置換マウスの作成と免疫系のヒト細胞による再構成 5)iPS細胞を用いた肝臓と免疫系のヒト細胞再構成 
遺伝子組み換えウイルス作成実験は文部科学大臣の拡散防止措置の確認の受け、その他の遺伝子組換え実験も、各研究実施機関遺伝子組換え安全委員会の承認のもと行っている。臨床検体を用いた研究は、各研究実施機関において倫理委員会の承認もと、インフォームドコンセントを得た上で行っている。動物実験は、各研究実施機関の動物実験委員会承認のもとで愛護的に行っている。
結果と考察
1)Genotype AおよびCのHBV遺伝子をそれぞれ1.2-merタンデムに繋いだ発現プラスミドを作成した。NODマウス、NOGマウス(T、B、NK細胞欠損)にハイドロダイナミック法にて投与したところ、HBs抗原血症およびウイルス血症が成立した。NODマウスではウイルス血症は一過性であったがNOGマウスでは遷延化した。Genotype AのHBVを発現させたNOGマウスは5か月以上にわたり高いウイルス血症を示したのに対して、Genotype CのHBVを発現させたNOGマウスでは血中ウイルス量は低く、約3か月で検出感度以下となった。HBVゲノタイプの違いによる免疫担当細胞非依存的なHBV排除機構が存在することが示唆された。

2)NOG-MHC class I/class II KOマウスにヒトPBMCを静注すると、肝臓より分離される単核球は経時的に増加し、移植後28日で約90%がヒト細胞に置換した。NOGマウスへの移植で認められるGVH応答は著明に抑制され、マウス免疫系ヒト化の有望なツールになることが示された。このマウスにHBsワクチンを投与したところ、50%のマウスでHBs抗体価の上昇がみられた。また、ハイドロダイナミック法によるHBVの発現により、HBcペプチドに対するT細胞応答が誘導されたことから、移植されたヒト免疫細胞がマウス個体内でHBVに対して機能的に応答し得ることが明らかとなった。

3)Mcl-1 KOマウスおよび野生型マウスのED16.5の胎児の卵黄嚢静脈よりGFP-Tgマウス由来の初代培養肝細胞もしくはヒト初代培養肝細胞を投与した。生下時において、いずれのマウスでも投与肝細胞がマウス肝臓内に生着していることを確認した。Mcl-1 KOマウスでは生後6週の時点においても投与細胞の生着を確認した。Mcl-1 KO (C57BL系統) マウスを免疫不全化するため、スピードコンジェニック法によるNOGマウスへの戻し交配を行った。

4)ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスにGenotype A、Genotype Cの患者血清を投与することにより、1~2週間でウイルス血症が出現し、高効率な持続感染が成立することを明らかにした。感染が成立したマウスに、ヒトPBMCを投与することにより、肝障害が誘導され、血中ウイルス量が低下した。NTCP siRNAを投与すると、ヒト肝細胞のNTCP発現が低下した。このようなマウスではHBV接種後のウイルス量が低下することが示された。

5)ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞をTK-NOGマウスへ経脾臓的に肝臓に移植した。アルブミン濃度は2-4 mg/mlに達し、良好な生着を確認した。HBVを投与すると血中HBV-DNA及び肝組織中cccDNAを検出し、感染が成立したと考えられた。
マウスES/iPS細胞に対して、転写因子Lhx2をオン⁻オフ発現することにより、造血幹細胞を誘導し、さらに造血細胞、免疫細胞への分化が誘導できることを明らかにした。また、ヒトiPS細胞から血液細胞の前駆細胞であるヘマンジオブラスト細胞を効率よく分化誘導できる培養システムを開発した。
結論
5年計画の3年度において所期の計画を達成した。このような成績を踏まえて、4年度以降の研究を推進する計画である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423042Z