人工キメラ遺伝子と肝臓特異的な輸送担体の開発を基盤とした肝臓内HBV DNA不活化を目指した新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201423038A
報告書区分
総括
研究課題名
人工キメラ遺伝子と肝臓特異的な輸送担体の開発を基盤とした肝臓内HBV DNA不活化を目指した新規治療法の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 一則(東京大学大学院医学研究科 臨床医工学部門)
  • 中西 真(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科 外科学講座)
  • 田中 榮司(信州大学 医学部)
  • 星野 真一(名古屋市立大学院 薬学研究科)
  • 杉山 真也(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 福原 崇介(大阪大学 微生物病研究所)
  • 安井 文彦(東京都医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
160,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、核内のHBVゲノムを不活化もしくは排除することを目的として、人工キメラ遺伝子を用いた創薬研究を進めた。研究チームとしては、1)人工キメラ遺伝子の設計と効果の確認を行うグループ(杉山真也、福原崇介、安井文彦)、2)人工キメラ遺伝子の輸送手法を開発するグループ(片岡一則)、3)人工キメラ遺伝子の発現レベルを最適化するグループ(星野真一)、4)人工キメラ遺伝子の副作用を検討するグループ(中西真、杉山真也)、5)ex vivo系の開発をするグループ(武冨紹信)、6)臨床試験に向けた臨床的評価マーカーを検討するグループ(田中榮司)で構成した。各グループが共同することで、最終的には人工キメラ遺伝子の実用化を目指して研究を進める。
研究方法
1)人工キメラ遺伝子の設計と効果の確認を行うグループ
人工キメラ遺伝子(Zinc Finger Nuclease (ZFN)、TALE Nuclease (TALEN)、CRISPR/Cas9)の最適化と切断活性の評価を実施した。
2)人工キメラ遺伝子の輸送手法を開発するグループ
RNAの安定化を目的として、5メチル(5m)C、シュード(ψ)Uといった修飾塩基を反応液に添加することで、それらの修飾塩基を含むmRNAを調製した。
3)人工キメラ遺伝子の発現レベルを最適化するグループ
T7 RNA ポリメラーゼで人工合成mRNA を合成した。EGFP-ORF の3’非翻訳領域(3’UTR) には、beta-globin mRNA の安定化シス配列を導入した。
4)人工キメラ遺伝子の副作用を検討するグループ
HBV遺伝子挿入トランスジェニックマウスのDNA損傷応答活性化について解析した。人工キメラ遺伝子がヒトゲノムを非特異的に切断するか否かを高速シーケンサーで解析した。
5)ex vivo系の開発をするグループ
ヒト切除肝からの初代培養条件の検討をした。肝断面の門脈断端から血液をwash out後に、コラゲナーゼ灌流、コラゲナーゼ・プロナーゼ消化、濾過、低速遠心を繰り返して肝細胞richな細胞懸濁液を得た。分散された懸濁液をメッシュ濾過し (大きさで選別)、遠心 (90~350 x g)を繰り返して、各フラクションを培養した。
6)臨床試験に向けた臨床的評価マーカーを検討するグループ
HBs抗原の高感度測定法の開発を進めた。今回開発中の超高感度(SHQ)法は高感度(HQ)法の改良型であり、0.001 IU/mlの感度を目標とした。HBs抗原の測定は保存血清を用いて測定し、通常法、HQ法、SHQ法の3種類の測定系を比較検討した。
結果と考察
1)人工キメラ遺伝子の設計と効果の確認を行うグループ
3種のTALENでいずれも良好な切断活性を確認できた。CRISPR系では、Cas9およびガイドRNAを発現させることで、Integrateしたゲノムを破壊することができることが明らかになった。
2)人工キメラ遺伝子の輸送手法を開発するグループ
5mC + ψU mRNAで最も効果的に炎症反応が制御されていた。
3)人工キメラ遺伝子の発現レベルを最適化するグループ
細胞内mRNA と異なり、ポリA 鎖分解が観察されず、ポリA 鎖長によって安定性が影響をうけなかった。細胞内mRNA においてはマイナーな3’-5’分解に関わるエキソソーム-Ski複合体をノックダウンすると安定化が観察された。
4)人工キメラ遺伝子の副作用を検討するグループ(中西真、杉山真也)
HBV遺伝子挿入細胞においても人工キメラ遺伝子導入によるDNA損傷応答活性化は認められなかった。全ゲノムシーケンスによって非特異的な欠損変異は見つからなかった。
5)ex vivo系の開発をするグループ
合計7例の細胞分離、培養を行い、5例で生細胞を分離、培養、維持することに成功した。
6)臨床試験に向けた臨床的評価マーカーを検討するグループ
3種類のHBs抗原測定法を行うことによって、HBs抗原消失時期別パターンが見られた。SHQ法は従来法に比較して92%の患者で長期の検出が可能であった。同様に、HQ法との比較では64%患者でより優れていた。
結論
本年度に各分担者の目標としていた進捗を得ることが出来た。来年度以降も計画した研究開発を進め、非特異的な反応を抑制し、標的切断効果を最大化した人工キメラ遺伝子の開発とデリバリーシステムの改善を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201423038Z